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【進め!異世界!!戦車人間(タンクマン)!!】~元ドイツ陸軍戦車兵の転生先はひよっ子ビーストテイマーの使役獣?~  作者: 稲村某(@inamurabow)
第二章・イワノフ

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⑪チェモリの正体



 「……成る程。化け物の正体が、住人が変化させられた果ての姿だった訳とはね」


 エレナが事の顛末をアルベルナに伝えると、彼女は悲しげな表情で呟いてから、依頼書の端に伝聞した内容を書き記し、後ろの棚へと戻した。


 「ところで、君達が懇意になった四人組ってシファーの斡旋所の人達なんだろう。うちと仲違いしている訳じゃないから顔を見せに行ったらどうだい?」


 アルベルナがそう水を向けると、エレナは少しだけ考えてからハンスとイワノフの顔を交互に見て、一つの提案を示した。


 「ええ、是非そうしたいと思います。でも、どうせなら……同じ仕事に臨んだ縁も有りますから、集まってみるのはどうかと思っていますが……如何でしょう」




 アルベルナから教えて貰ったシファーの斡旋所は、今居る場所から城に近い。その中に足を踏み入れると同時に、小さな影が俊敏にハンスとエレナの間を駆け抜け、イワノフに向かって飛び付いた。


 「きゃーっ!! 会いに来てくださったのですわねーっ♪」

 「おおおおぉ!!? 何がなんなんだ!?」


 見ると案の定、チェモリが彼の首根っこに抱き付きながら頬を寄せ、情熱的なハグを繰り広げている。ただ、問題は彼女の頭から毛の生えた三角形の耳が飛び出し、もふもふとした太い尻尾を嬉しげに揺れているのだ。


 「……チェモリ、あなた化けの皮が剥がれてるわよ?」

 「……ふぇ? ……あ、ヤバいッ……」


 直ぐに二人の背後からキャロンが現れると、チェモリの尻尾をスカートの中に押し戻しながら忠告し、チェモリもイワノフから離れながらゴソゴソと耳を髪の間へと押し込んだ。


 「いや……キツネみたいに見えたが、例の人に似た種族って奴なのか」

 「そうですね、きっと彼女は【狐人種(フォックス・ロッテ)】なんでしょう」


 ハンスとエレナが他人事のように言う中、漸くチェモリから解放されたイワノフは、全身に付いた茶色い毛を叩いて取り除きながら訴えた。


 「お前らよぉ! 少しは早く助けなきゃ、とか思わねぇのか!?」

 「……そう言われても、危険なモノも見当たらんし、命に別状もなさそうだったからなぁ……なあ、エレナさん?」

 「ええ、とてもお似合いに見えましたよ?」

 「そ、そうですよねッ! ありがとう二人で幸せになります!!」

 「おおぉいっ!! それとお前も調子に乗んな!!」


 再び抱き付くチェモリを引き剥がそうと無駄な努力を繰り返すイワノフに、二人は生温かい眼差しを向ける。そんな騒ぎを尻目にエドとアーヴィンもハンス達に近付き、声を掛ける。


 「あー、うちのチェモリがお騒がせしてます……ご覧の有り様ですが、その節はありがとう御座いました」

 「こいつ、多少は世俗離れしてるが人畜無害な奴だから……ま、許してやってくれ」

 「おいコラッ!! お前ら助けろぉ!!」


 「……ところで、今日はご予定は有りますか?」

 「エーレーナーっ!! 助けろぉー!!」


 「……いや、特に予定らしい事は……」

 「お前らぁ……おぶあぁ!?」

 「イワノフさんっ!! 素直にチェモリを受け入れてください!!」

 「待て! 落ち着け!! 離れろ!!!」


 暫くイワノフとチェモリの揉み合いを間に置きながら相互に言葉を交わし、懇親会を催す事に決まった。


 「……クラウツ、お前に何か有っても、俺は絶対に助けんぞぉ……」


 必死に抵抗し続けてヘトヘトになったイワノフが恨みがましく抗議するが、ハンスは逆に不思議そうな顔で返答する。


 「いや、普通にお似合いじゃないか? それに想うより想われる方が幸せになれるって、お袋も言っていたぞ」

 「……魔女の婆さんに食われちまえっ!!」


 逆に両手を頬に宛てながら、この世の幸せが全て集まったような輝く笑顔のチェモリは、内外共に艶々としていた。


 「はぁ……今日はなんて素敵な一日なんでしょうぅ~♪」


 七人の中で見た目は一番若く見えるチェモリだったが、ハンスは彼女に妙な貫禄の気配を感じ取り、然り気無くキャロンに尋ねてみる。


 「あの、彼女とはいつ頃から一緒に居るのですか?」

 「ああ、チェモリですか? 私達は五年前から一緒でしたが、祖国を出たのは三十年前だって……ねえ、アーヴィン?」

 「……俺は知らん。ただ、アイツは由緒正しい家柄らしいからな。俺より年上だったとしても不思議はなかろう」


 強面で物言わぬ印象のアーヴィンが素っ気なく言うだけに、その説得力は圧倒的である。対するチェモリは自分の年齢が俎上に有る事も知らず、見た目通りの美少女に似つかわしい花弁のようなフリルを揺らしながら、イワノフに向かって手を振っていた。



 「……なあ、クラウツ……あの娘はどーして俺にくっついてくるんだ? 何も思い当たる節がねぇんだがなぁ……」


 シファーの斡旋所から転がり出るように逃げて来たイワノフが、ハンスとエレナに向かって疲れ切った顔で尋ねる。


 「さあ、それは判らんよ。ただ、向こうは【運命の相手に巡り逢えた】って嬉しそうだったぞ」

 「……そいつぁ、厄介だな……何となく、何となくなんだが……俺ぁ、思っちまったんだよ」


 ハンスの答えに、爪先から頭のてっぺんまで硬直させたイワノフは、何故か酷く怯えながらボソリと呟いた。



 「……こいつと、もしも夫婦になったら……途端にヒゲ生やして、俺の()()()を握って絶対に離しゃしねぇ、ってよ……」

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