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【進め!異世界!!戦車人間(タンクマン)!!】~元ドイツ陸軍戦車兵の転生先はひよっ子ビーストテイマーの使役獣?~  作者: 稲村某(@inamurabow)
第二章・イワノフ

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⑩討伐査問



 「あっ! ……あの、査問担当官の……アミンと申します……それで、その……」


 ソフィナと名乗った騎士が告げた後、暫く間を置いてから、気弱な騎士の方が思い出したように自己紹介すると、肩に提げたカバンの中から紙を取り出して読み上げ始める。


 「……えと、け、ケーズの町の住人……いや、元住人の……その、亡き骸が……四十、五で……」

 「……その多くが」

 「あ! そ、その多くが……頭部を……鉄の矢じりで射貫かれていました。これは魔導に()るものですか?」


 最初はたどたどしかった口調も、途中でソフィナが正すと次第に円滑になり、不意に滑らかさを帯びていくに従いアミンの姿勢も屹立し、俯き加減だった視線は真っ直ぐに変わっていく。その視線の先に居たイワノフは、自分が答えなければならない気配を察し、


 「あー、そうなんだけどよ……ま、マドーって奴なんかじゃない。只の火薬を燃やして鉄の弾を弾き出すだけの仕組みなんだが……判るか?」


 彼なりの解釈を交えつつ、身振り手振りも合わせながらアミンに説明する。するとアミンは小さく頷いてから口を開いた。


 「……判ります。いえ、やっぱり貴方達も【星降る荒野】の者なんだと理解出来ました。査問は以上で終了です」


 そう手短に告げると、掛けていた椅子から腰を浮かせて席を立つ。


 「……獣従士(ビースト・テイマー)に【銀獅子】が割り当てられたと聞いて、さぞ無骨で強面な使役獣だろうと思っていましたが……まさか()()()()()()()()()でしたか。世界は広いですが、案外狭いもんですね……あ、そ、それでは私達はおいとま致しますぅ……」


 そう呟くと再び態度を変えて、暫く前まで装っていた気弱な騎士に戻り、背中を丸めて去っていく。


 「……アミン様も【星降る荒野】のご出身ですので、少し変わっていますが御心配無く。ああ見えて有能な方ですよ」


 ソフィナも立ち上がりながら三人にそう告げて、去り際に小さく会釈してから踵を返し立ち去って行った。



 「……何なんだよ、()()()()だとか()()()()()だとか……クラウツ、お前は意味判るか?」

 「……さぁなぁ、符丁か何かじゃないみたいだが、とにかく無罪放免だって事なんだろう」


 イワノフとハンスがそう言い交わす中、エレナは思考を巡らせていた。


 (……討伐は幾つかの斡旋所に出ていたと思ってましたが、どうも違ったみたいですね。もしかしたら私達とエドさん達だけ向かわせて、結果がどうなるか調べていたのかも……?)


 ハンスやイワノフから流れ込む老練な思考の影響を反映し、若さに似合わぬ洞察力を得始めているエレナは、状況を分析しながら様々な可能性を視野に入れつつ、今回の討伐依頼に含まれる意図を掴もうとした。しかし、現状の情報量だけでは足りない。そう判断した彼女は一つの結論を導き出した。



 (……一度、中央都市の王様に会ってみるべきでしょう)







 一夜明けたケーズの町は、様々な感情を孕み混沌とした状況と化していた。


 「……隣の一家、全員亡くなったそうだ」

 「うちは誰も死ななかったが……」


 無事だった人々は、隣人や知らぬ住人の変わり果てた姿に目を向けつつ、自分が犠牲者側に回らなかった事に安堵する。しかし、町の住人が死んでいるのは動かぬ事実だ。


 町の自警団や近衛兵所属の騎士達、そして幾人かの斡旋者が亡き骸の処置に当たり、残された者が家族との離別で悲嘆に暮れる姿に、視線を逸らす事も散見された。


 件の化け物が住人の変わり果てた姿だと判り、その原因が判らぬまま恐る恐る亡き骸を荼毘に付す騎士達だったが、ハンスが打ち倒した筈の巨人の死体はいつの間にか消え失せて、彼等が見つける事は無かった。



 「……マディーネ様、あの二人の能力って何なんです?」


 ケーズの町を見下ろす丘の上。マディーネの傍らでティゾンが質問する。二人は半ば師弟の間柄だが、ティゾンは魔導を扱えぬ性別ゆえ、彼女の召し使いに近い存在である。


 「……この世界に存在しない道具や武器を扱い、そして使いこなすのが彼等の能力……なんだけど」


 そう言いながらマディーネは髪を掻き上げ、形の整った眉を寄せながらティゾンの顔を眺め、小さく溜め息を吐いてから言葉を繋ぐ。


 「あのイワノフって方は良く判らないのよ。槍みたいな棒から矢じりを飛ばすのは理解出来たけど、矢じりは何処から持って来るの? そして他の者はアレを扱えるのか判らないし……」

 「ふぅーん、マディーネ様にも判らない事は有るんですねぇ」

 「当たり前でしょ、私だって全知全能じゃないんだから……」


 でも、と前置きしながらマディーネは再び町の事後処理に目を向け、ティゾンの頭を撫でてから小さく呟いた。



 「……あのエレナって子、ビーストテイマーとして決定的に悪運しか持って無い事に、何時になったら気付くのかしらね……」


 そんなマディーネの傍らにティゾンは大人しく立っていたが、辺りの気配に変化が起きた事を察したのか、表情を険しくしながら彼女の袖を引いて何かを訴え、マディーネも頷くとティゾンの手を掴み、滑るように斜面を降りてケーズの町から離れていった。





 

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