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【進め!異世界!!戦車人間(タンクマン)!!】~元ドイツ陸軍戦車兵の転生先はひよっ子ビーストテイマーの使役獣?~  作者: 稲村某(@inamurabow)
第二章・イワノフ

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④イワノフとエレナ



 「……ここからじゃ、良く見えねぇなぁ……」


 ハンスが最初の建物の中に入った時、イワノフは焦れたように呟くと狙撃場所を変える為、櫓の上を這って移動する。


 「……イワノフ君、どんな感じですか?」

 「……さぁな、静かなもんだが……クラウツが何してるか見えねぇから、判らねぇ」


 彼の後ろで四つん這いのままエレナが尋ねるが、イワノフは素っ気なく答えながら再びライフルを構え直す。


 有り難い事に偶然登った火の見櫓は、ケーズの町全体を眺めるのに丁度良い場所だった。意図して中心に建てられたのだろうが、狙撃銃を抱えて走らなくて良いのは好都合である。


 (……それにしても、コイツは何も気にしねぇのか? くっつき過ぎなんだよ……)


 しかし、イワノフはエレナが常に身体の何処かを彼と接触させているせいで、射撃に集中出来なかった。


 今も同じ視線でハンスを見ようとして、伸ばした彼の足を挟み込むように両膝を突いているせいで、彼女の素肌が服越しに触れて温もりを感じる程である。


 (くそぉ……絶対意識してねぇな!? じゃなかったらやらないぞ、こんな事……!!)


 だが、中身は彼女より遥かに年上の筈のイワノフは、鼓動の高まりが抑えられないまま、何も言えなかった。


 彼は気付いていなかったが、少年の身体に変わった時に精神構造もかなり変容した為、彼女が近付いただけでも意識してしまうのだ。しかし、思考を司る根底は以前のイワノフと全く変わっていない。今はまだ、そのギャップを十分に受け止めきれていないせいで、エレナの存在が彼の心を揺らしてしまうのだ。


 しかし、やはり彼には年上としてのプライドがある。何とかして自分から離れるよう言わねばと思い、絞り出すように声を出した。


 「あ、あのよ……この銃を撃つとデカい音が出るから、少し離れてくれねぇか?」

 「……? あ、判りました! ここなら平気ですか?」


 と、エレナはあろうことか彼のふくらはぎの上まで下がると、そのまま腰を降ろしてしまったのだ。


 (いやいやいや! そうじゃねぇ!! 直に尻を載せるんじゃねぇよ!?)


 まさか自分の上に座られると思っていなかったイワノフは、身体中が火照る(特にふくらはぎ周辺)のを悟られまいと身体を捻ったが、


 「……っ? イワノフ君……どうしたの?」


 逆に彼の足の上に身体を押し付けたまま、すり寄るようにイワノフの頭の傍まで顔を近付けてきたのである。先程より肌に当たる圧力が上がり、更にエレナの気配と匂いが彼の知覚を隈無く刺激するせいで、ライフルを構えられなくなりそうである。


 「そそそそのよぉ!! ああああんまりくっつかないでくれねぇかなぁあ!!?」


 軽くパニックになったイワノフが訴えると、漸くエレナも理解してくれたらしく、


 「ごめんね、イワノフ君! ……ところで、そのジュウって、どうして大きな音が出るの?」


 と、大人しく下がりながら疑問をぶつけてくる。


 「ああ? あ、えっと……弾倉に詰めてある弾丸がな……」

 「ダンガンって、何?」

 「ああぁ!? 弾丸も知らねぇのかよ……」


 そこから説明しなきゃならんのか……と溜め息が漏れそうになったその時、彼の視野の隅で何かが動いた。


 「ちょっと待て! ……なんだ、クラウツかよ」


 どうやら噴水広場に居たハンスが、住居の一軒から飛び出してきた住人と言葉を交わしていたようだ。しかし、相手の様子がおかしい。そのまま直ぐに倒れると、やがて動かなくなってしまった。


 「……何だかキナ臭ぇな。動き始めたのか?」


 不穏な気配を察し、イワノフは銃を握り直す。照準の中にハンスを入れながら距離を計り、何時でも彼の周りに何か出てきたら撃てるように準備する。そうして暫く息を詰めながら待つ間、エレナもイワノフに倣い無言で見守る。


 そうして時間が過ぎ、イワノフが銃底を肩に付けた姿勢を少しずらそうとした瞬間、住居の扉が開き、再びハンスが姿を見せた。


 「……はあぁ、心配させんなよ……いや、まぁ、別にくたばっても知らねぇが……」


 つい口からそんな言葉が零れ、バツの悪さを感じたイワノフが呟くが、ハンスがこちらに向かって手を振る姿につい答えて手を振り返し、


 「何してんだかな、俺って奴は……」


 そう言って背後の気配を探ると、エレナが可笑しそうに小さな声で、


 「イワノフ君も、ハンスさんを心配しているんですね!」


 と明るく言い、違げぇから……と軽く言い返す。そんなやり取りに飽きかけながらライフルの引き金から指を離そうと力を緩めた刹那、ハンスの向こう側から誰かが彼の方へと走って来た。


 「……っ!? いや、敵じゃねぇな……」


 近付く人影に気付いたハンスも反応はしているようだが、何か言いながらこちらを指差し、その集団を櫓の方に向かわせて、自分はその場に残る姿勢を見せる。


 「……何だか判らねぇが、嬢ちゃん、下に行って連中と話してきてくれ。俺はここで見張ってるからよ」

 「……判りました、ハンスさんを頼みます」


 そう言うとエレナは彼の後ろから離れ、梯子を伝い櫓の下へと降りていった。


 「さあ、どうなる……っ!!」


 言葉と共に照準を睨んだイワノフは、ハンスの近くに黒く大きな何かが飛び出すのを発見し、引き金に力を籠め掛けたが……


 「……くそっ!! クラウツが邪魔で狙えねぇ!!」


 狙撃の射線にハンスが重なり、狙いが定められない。歯噛みしながら思考を巡らせたその時、一体目より小柄な何かがハンスを囲むように姿を現した瞬間、反射的に照準を合わせて引き金を引いた。





 

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