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【進め!異世界!!戦車人間(タンクマン)!!】~元ドイツ陸軍戦車兵の転生先はひよっ子ビーストテイマーの使役獣?~  作者: 稲村某(@inamurabow)
第一章・ハンス

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⑪そうと決まれば



 下着姿(しかも股間周りは穴空きで黒焦げ)から一転、きちんとした身なりに戻ったハンスだったが、試験の結果を通知されるまで会場から出られない為、足止めされていた。しかし、エレナは試験の結果に充分な手応えを感じていたようで、明るい表情でハンスに語りかける。


 「ハンスさん!! あんな強そうなゴーレムを簡単に倒すなんて、流石です!!」

 「いや……そうなのかなぁ……」


 エレナの情熱的な言葉とは裏腹に、ハンスの反応は今一つである。そもそも、彼にとって試験自体が良く判らない上に、その試験で一体何が変わるのか理解していないからである。


 しかし、そんな彼に使役獣試験担当官はキチンと対応するつもりらしく、ミレーシャとミリーシャ二人の女性試験官を伴いながら試験結果の告知に現れた彼は、ハンスに向かって丁寧に会釈してから話し始める。


 「……今回、非常に興味深い様々な能力を見せて頂き、中央都市の使役獣試験担当官として記録に残したい程であります。しかし……」


 一旦、区切りを付けた後、再び口を開く。


 「……規定に依り、ハンスくんの評価ランク以外は一切公表しない事にする。と……まあ、堅苦しく言えばそういう事なんだが、それにしても【重障害】に匹敵する守護ゴーレムを一撃とはなぁ……いやはや!」


 そう付け加えて広い額をぺちんと叩いてから、手に持っていたメダルをハンスとエレナに差し出した。


 「これが認定の証、【銀獅子】の(しるし)だ。二人のこれからの活躍を期待しているぞ!」


 それは手のひらに収まる位の大きさだったが、造形された獅子の横顔も迫力があり、ずっしりとした重量感があった。エレナはその重みが彼女を叱咤激励しているように感じ、知らぬ内に表情を堅くする。


 「さて、それでこれは支援金だ。どんな使い途でも構わんが、出来る限り大事に使ってくれたまえ」


 そう言いながらミレーシャを促し、進み出た彼女はエレナに小さな革袋を手渡すと、


 「エレナさん! ハンスさんお強いですね! でも、あんまり無茶はしないでください!」


 励ますようにそう言うと、エレナの小さな手をしっかりと握った。


 「はい! 頑張ります!!」


 答えるエレナに微笑んでから手を離し、ミリーシャの元にミレーシャが戻ると、認定証の授与式はつつがなく終了した。




 「さて、これからどうする?」


 試験会場から街の中に戻ったハンスがエレナに尋ねると、そうですね……と彼女も考えながら暫く歩いていたが、


 「少し遅くなりましたが、先の予定を決めるついでにお昼ご飯にしませんか?」


 そう言いながらエレナは二階建ての店舗を指差して、ハンスを(うなが)した。



 「あっ! いらっしゃーい! お二人ですか? こちらへどーぞ!」


 彼女に従い店の中に踏み入れたハンスを、店の店員が駆け寄って来て、二人を向かい合わせのテーブルへと案内した。


 どんな所か良く確認せずに入った店内は、大きな窓から明るい光が差し込み、小さいながらも繁盛しているのかほぼ満席である。ハンスは何かメニューのような物は無いかと店内を見回すと、厨房と客間を隔てる壁面に黒板のようなものが掲げられていて、そこに様々な料理の名前が並んでいた。しかし、


 「……読めるんだが、何の事かさっぱり判らん」


 流石に彼自身の知識に無い動植物の名は理解出来ず、エレナに助力を乞うしか無い。そう考えたハンスの横に先程の店員がやって来た。


 「お客さん、決まりましたかー?」


 明るく親しげに話し掛けてくる従業員だが、ハンスは何か妙な違和感を覚え、少し屈みながら尋ねるその姿を良く眺めてみる。


 「……あー、お客さん! 猫人種(ケット・シー)を見るの初めてなんでしょー? まー、それも含めて、私ってば美人サンですからね~♪」


 そう言うと彼女は、頭の上の柔らかそうな毛の生えた耳をヒコヒコと動かしながらハンスに笑いかける。


 「……あ、ああ……実はそうなんだ。この街に来て間もなくてね、判らない事が多くて参っているよ」

 「うんうん! そーゆーの良く判る! ()()もここに来て五年位だけど、まだ知らない事も沢山あるよー!!」


 気さくな店員はそう言うと、厨房の奥で調理に励む店主らしき人物に向かって、


 「ししょーっ!! このヒト、初めてだから良く判んないって! ()()()()でいーよね?」

 (……あー、そうだな。じゃあ、こっちで見繕っとくから予算だけ聞いておいてくれ……)


 そう遣り取りすると、お客さん、お任せで大丈夫? と気遣いしながら尋ねる。


 「エレナさん、そうらしいからお任せにしておくか?」

 「そうですね……そうしましょうか!」


と、確認してから店員にそうしてもらおうか、と告げた。



 (……それにしても、色々な料理があるな……)


 ハンスは店員が置いていった水の入ったコップに口を付けながら、その種類の多さに眼を奪われていた。彼の知っている料理も有り、この店のレパートリーの種類はなかなかのものだろう。


 ハンスがこの世界にやって来てから、楽しみの一つになっているのが食事である。今までの軍隊生活と違い、時間をかけて味わい、誰かと共に食事そのものと会話を楽しむ。それは実に有意義な喜びといえよう。


 だからこそ、一期一会の出会いを期待するのも良いが、馴染みの店を見つけて足繁く通い、一番のお気に入りを模索するのも悪くない、ここがそう思える料理を出す店ならば……と思いながらエレナの方を見る。


 獣従士(ビースト・テイマー)で、ハンスが仕えるべき異界の若き娘。そう言えばさぞかし能力に優れた者に聞こえはするが、今の所、彼女の持ち得る能力に秀でた物は見当たらない。単体での戦う能力は明らかにハンスの方が上であり、それ以外の身体能力も特筆すべき点は見当たらない。果たして、彼女は自分が仕えるに値する者なのか。


 そんな事を考えていたハンスの前に、店員が手にした料理を運んで来た。





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