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羽集め その一

「うーむ」


ケイトこと俺は、会館の食堂で朝飯を食いつつ、会館職員から無理やり押し付けられた依頼書を見ている。

おっと、こんなもんばっかり見てる場合じゃない。麺が伸びてしまう。

ズズズと温かいスープに浸かった麺をすすりつつ、改めて書面に目をやった。


「ビミョーな依頼というか……なんでまたというか……」


魔狩りの依頼には二種類ある。

一つはギルドから発行される依頼、もう一つは会館に発行される依頼だ。

前者の依頼は、例えば水産ギルドから発行される護衛任務だったり、畜産ギルドから発行される魔獣の定期的な討伐任務だったりのことだ。基本的にこの依頼は、そのギルド専属の魔狩りが引き受けるので、会館付き──基本は駆け出しの魔狩り、ごく稀に俺のような魔狩りもいるが──にはあまり回ってこない。

んで、後者の方は、有力な貴族によるものだったり、誰も引き受けないが誰かがやらなきゃならないような奴を、会館より上の機関が振り分けてくるものだ。基本的にアイシアだったり、駆け出しじゃない会館付きはこれを引き受ける。竜種の調査なんて、それなりの実力がある奴じゃなきゃ護衛にならないし。

因みに、環境種だったり大氾濫とかは、また別枠だ。あれは、王以下の貴族の連名で依頼が出される。滅多に無いんだけどね。

そして、今俺を悩ませている依頼なんだが。


「食べるか読むかどっちにかにしなさいよ……隙あり!」

「ねえよ」


伸ばされた手をはたきおとした。

朝飯、山盛りにしてんのにその上で俺のおかずとろうとするんじゃねえよ。

つーか。


「お前久しぶりなんだから挨拶くらいさせろや」

「苦しゅうないわ、挨拶する権利を与えてやるわよ」

「どういう立場なんだよお前は。んで、おはよう」

「うん、おかえり、おはよう、ただいま」


そーなるわな。お互いに4日ぶりの対面だった。



「それで、なんでそんな微妙な顔しながら、それ見てたの?」

「あー、うん。依頼書なんだけど……」


こいつならまあいいや。ひょっとすると、こいつも引き受ける可能性がある依頼なわけだし。

左手でそれをアイシアに渡した。


「えーと、ふかふかの布団で眠りたい……?」

「そう、まあ羽集めだろうな」

「あー、依頼人の名前的に北の方ね」


そうなのね。名前の特徴とかは流石に知らんかった。


「え、でも最高級の羽毛ってちゃんと牧場で育てられたやつでしょ?」

「そうなんだよ。だから、よく分からないんだよ」


よりによって、ヨルネズクの羽毛だし。

金持ちの考えることはよく分からん。

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