その六
太陽がまぶしい。
朝がきた。結局、あのあと環境種の接近の影響でマモノ化している魔獣どもの襲撃は終わらず、一睡もできなかった。救いは、この辺りには強力な魔獣が少なかったことくらいだ。大して、救いにもならねえよ。
つーか、なんだったんだよ、あのクマとキノコども。マモノ化したからって、キノコが意思を持つとか訳分からんし、口から火を吐くクマってどうなってんだよ。しかも、そのクマの背中にキノコが寄生してしてたから、延びるキノコに身体を巻き取られてそこに火を吐かれるっていう極悪な組み合わせが成立しちゃってたんだよ。
そんで、キノコに攻撃を加えるとぼこぼこ胞子を飛ばして数を増やされるっていう訳のわからなさだよ。最悪全滅してたぞ。
結局、俺たち後衛職がクマ部分を仕留めることで、被害を減らした。え、キノコ?胞子ひとつ残らないように焼き払ったよ。火炎系の調理用魔器具最高!
許さねえ環境種。
くそが。休めるときに休んどくんだった。
「おやおや、ケイト君眠そうですね」
「それが分かってるなら、ちょっと休ませてくれよ、ギルマス」
「そんなわけには、いきませんよ。あなた達には、しっかり作戦を、理解して貰わないと、いけませんからねえ」
ねっとりと、笑顔のギルマスが言った。
砦に戻ってくるなり、捕まえられてそのままギルマスの臨時の執務室ーどっちかというと作戦司令室ーに放り込まれて、昨晩の俺たちの所業についてねちこち怒られていた。
なお、ねちねちした説教を俺のとなりで目を開けたまま眠りながら聞いていた(?)アイシアは、
「ほれ」
「ふぎゃっ!」
「だめじゃないか、アイシア嬢ぅ。失敬、竜卿さまだったねぇ」
「ふーっ!!」
同じくねっとりボイスの拗らせ女貴族、尚こちらも笑顔、になにやら小瓶を嗅がされていた。
アイシアは髪を逆立てて、あわてて俺の背中に隠れて、ユリアを威嚇している。お前、仮にも人類最強なんだからもうちょい人間性取り戻してくれない?
ちょっとアイシアさん。他人の服で鼻水をかむのは辞めときましょうよ。どうせ、このシャツは洗濯するけども。
にしても、この二人相当怒ってるな。
「当然でしょう!」
「えらい目にあったんだぞ!」
「具体的には?」
ギルマスとユリアは、同時にそっと目をそらし、
「「…………それは言えない」」
やだあ。どう思います、アイシアさん。
え、はれんちですって。やっぱりそう思いますか。
ニヤニヤしていた俺たちは、膝の上に重りをのせられて、そのまま作戦を聞くことになった。




