表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/146

その十五

相対する襲撃者のたたずまいは、明らかに玄人のそれだ。魔狩りとは違い、意図的に削ぎ落とした細身の肉体は、素早さあるいは隠密性に特化しているのだろう。


(さて)


はっきり言うと、俺は対人戦闘が苦手だ。圧倒的に経験が不足しているからだ。なので、いつものように出たとこ勝負するわけにはいかない。いや、結局出たとこ勝負なんだけども。


「隠れていてくださいね」

「邪魔はせんから安心してくれ」


まず、優先順位の確認しよう。一番大事なのはこの人を死なせないことだ。そして、次に俺が死なないこと。最後にこの暗殺者を倒すことだ。

つーことで俺がやるべきことは、時間稼ぎに他ならない。別に俺がこいつを殺らなくて良いわけだし。

ということで、


「おらよ!」

「………………!」

「おまけにこれも!」


部屋にある家具をぶん投げる。ついでに、俺の固有魔法で作った枝も投げておいた。

ただの嫌がらせだ。

だが、この屋敷においては、それが一番効果的になる。相手も気づいたのだろう。

ぞわりと。

強大な気配が動く。多分、ジジイだ。


「卑怯ものが!」

「暗殺する気満々だった奴がなにを言ってるんだよ……おっと」


投げつけられた暗器は枝で弾いた。カランと軽い音を立てて床に落ちる。


「不意打ちする奴がなにを……ってうわ!」


今度は、お馴染みの煙石だ。俺でもそうする。すなわち、逃亡のための撹乱。ただ、あいつがアイシアを掻い潜っていると言う事実を加味するなら、もうひとつ罠を仕掛けるだろう。ということで、最重要事項の遂行にあたる。


「ちょっと失礼」

「え、あ、はっ!?」


咄嗟に押し倒した警護対象が、直前まで居た場所に何かが刺さる。舌打ちが聞こえた。

おそらく、あいつの固有魔法は透明化なのだろう。暗殺に最適というべきか。

俺は奴が投げた暗器が刺さった角度から、大体の位置を特定して枝を投げる。まあ、意味はないだろうが。案の定、壁にそのままぶつかった。


「あー、まあそろそろ終わりかな?」

「終わりと言うが、君取り逃がしただけだろう」


あ、退かないとまずいな。俺は一応安全を確認してから、高貴な方を立たせるべく手を差しのべる。俺の手は要らなかったようで、目の前の人は自力で立ち上がり服の裾をパンパンと払った。


「いや、まあ、結局この屋敷からは出られないので逃がしてはないですよ」

「それはどういう」


名前が分からないからギルマスの知り合いなので、ギルフレと便宜上呼ばして貰おう。ギルフレさんは最後まで質問ができなかった。窓の外から断末魔の叫びが聞こえてきたからだ。その声を聞きながら、


「先代が庭先に居座ってましたからね」

「気づいていたのか」

「まあ、はい」


こんだけ殺気出してたらねえ。暗殺者が気づかなかった理由は分からないけど。

結局、俺の謁見は部屋を代えて実施されることになった。

アイシア「ぶっころす」

先代爺「ぶっころす」


一般人「なんかすごい怖い気配がする」

主人公「くんくんくん。こっちがアイシアの気配……!なら庭先は爺さんだな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ