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その八

ばばあは、俺たちを眼で追いかける。視覚に特化した固有魔法の持ち主だからだ。

ならば、先代竜卿はなにで俺達を見つけ出したかと言うと、


「お祖父様は、音で全てを識別するのよ」

「へー、もっと早くに教えて欲しかったな」


屋根をぶち抜かれた。少し会話している間に、天井からミシミシと言う音がして、隙間から覗き込んだ刃先をみてアイシアが特定したのだ。


「聞かれなかったし」

「そりゃまあ、関わってくると思ってなかったからな!」


悠長な会話ができたのは、そこまでだった。二人して、間一髪のところで屋根を貫く凶器の群れから何とか逃げ出す。


「先代の固有魔法って確か」

「そうそう、無限増殖よ」

「ずるくね?」

「まあその代わり、魔法を使う最中は目を開けられないんだけど」


その分耳で補えるなら、なんのデメリットになってねえだろ。

家主には先代が弁償してくれる、多分。


「取りあえず、外に出るぞ!」

「それしかないわね」


そして、外に出た瞬間ゴオッと音を立てて、とんでもない質量の凶器の群れが空から襲いかかってくる。


「伏せて!」


塊になって降ってきていたのが幸いした。アイシアが、一発でその塊を散らす。安堵も束の間、アイシアの隙を狙った矢が線を引くように飛んでくる。俺は、造り出した棒でそれを弾く。


「知ってた」

「ありがとう」


あのばばあなら、その隙をつかないわけがないと分かっていた。

しかし、それはそれとして流石にムカついてきたな。せっかく、久々の休暇で王都に来たって言うのに、俺はまだ飯すらくってねえんだぞ。アイシアも、同様の思いを抱いているようだった。ひとつうなずき合う。


「もうさ」

「おう」

「二人で突っ込んじゃおっか」

「それが早いな」


不意打ちとか、色々考えるのを俺達はやめた。


「「師匠どもをぶん殴る!」」


カチコミじゃあ!

そんな師匠と俺達は、仲良しです。


そうと決まれば、速かった。アイシアは俺を担いで、全力で走る。アイシアは一歩ごとにどんどん加速する。文字通り爆発的な踏み込みだ。


「これ修復にいくらくらいかかるんだ」

「舌噛むわよ」


代償は、舗装された道がボロボロになることだ。まあ、足元を爆破して発生した推進力を利用している訳だからな。

しかし、いくらアイシアの移動速度が凄まじいといっても、高所は向こうに押さえられている。必然的に、時折凶器たちが降ってくるのだが、


「ケイト!」

「あいよ」


アイシアが俺を斜め前に()()()。空中で、俺は矢を放つ。我ながら頭がおかしい迎撃手段だな。


「ほい」

「どうも」


そして、全てを撃ち落とした時には、もうアイシアが真下に居て俺を回収する。相手が、アイシアの動きを先読みするからなんとかなっているな。

さて、ほとんどタイムロスなく駆けたことで、間もなく俺達は、塔に辿り着く。


「さて、どうしてくれようかしら」

「そりゃ初手最高火力だろ」

「そうね」


まあ、この時の俺達は本気でキレていたのだ。

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