王都編:家庭訪問
荷台がガタガタと揺れることも少なくなってきた。別に、荷車を乗り換えた訳ではなく、単純に道がきれいになってきたからだ。
「貴族街に近づくと、あからさまに道がよくなってくるな」
「一応王族連中が、その辺ふらふら歩き回ることもあるから、そいつらが下手に躓いて怪我なんてしようものなら何人かの首が飛んじゃうからね」
「おう……」
そういうのもあるのか。というか、王族連中はその辺ふらふらすんなよ。
よく知らねえけど、城に住んでるんじゃねえのかよ。
「王族って言っても、実態は知の貴族山籠りしたがる型々だから」
「……まさかとは思うけど、研究所の面々みたいなのが今の王だったりすんのか?」
「ケイトよ。 アイシア嬢はともかく、君は不敬でしょっぴかれるから口を慎め。 研究所は禁句なんだ」
場所の名前が、不敬にあたるってそんなことあるか?
一応あそこって、王立だろ。公的なやつなんじゃねえの?
「三代程前に、研究所に逃げ込んだ王族がいたんだ」
「その王族、超優秀で、一番わかりやすいのは符関連のもろもろを発展させたのはその王族よ」
「ええ……」
「だが、どれほど優秀だろうがサハイテにずっといられるとたまったもんじゃないし、さらに言えば何をしでかすかわからない。 王城を爆破されるくらいの方がまだマシだからな、目を離すよりもずっと」
「で、当時の竜卿が出動するはめになったの」
普通に大ごとじゃねえか。
というか、王城を爆破ってなんだよ。それが許されるというか、まだマシってどんなやべえ奴だったんだ。マッドの方が、かなり慎ましいぞ。
「そりゃそうよ。 マッドはあれでも、研究所には送られてないんだもの」
「研究所が、お前らから見て相当ヤバい所って思われてることが実感できたわ」
研究所送りて。
そんなこんなで、すいすいと俺達を乗せた荷車は進んでいき、そしてかなりでかい家の前で止まった。
今更なんだが。
「なんで、俺らここに乗せられて運ばれてたんだ?」
「それはですね、アイシアさん、ケイト君」
「君達がほっとくと逃げ回るからだ」
厳重体制なのか、アイシアはなんかメイドさんたち、俺はかなり筋骨粒々な男の人達に囲まれていた。実力的には俺よりもアイシアの方を取り囲む方が良いと思うんだけど。決して、メイドさんに囲まれたいとかそういう願望はない。本当にない。
女貴族(最近婚約した)は家を背景に一礼した。
「ようこそ我が家へ。 この家の主たる私──ユリア・ド・クランチが、直々に歓待してやる。 どうか、楽しんでくれたまえ」




