その六
安定の身分チェック列スルーで、王都に突入。さすが竜卿。信用度高いわ。
「さて、私達は取りあえず、どこぞのやらかし拗らせ姫様のご実家にお伺いしようと思うのですが、アイシア様達はどうなされますか?」
私″達″ってことは、モルトもそっちに行くことになるってことで。俺と同じく平民代表である魔狩りは、腹に手を添えて死んだ目をしていた。
「胃を押さえるのお前はやすぎねえか」
「普通は! 貴族の家に行くなんて! そういうもんなんだよ平民にとっては! 会館付きみたいな、アホメンタルを俺はもってねえんだよ!」
失礼な。俺だって、頭を抱えたい気持ちはあるぞ。
だって。
『あれが、アイシアちゃんのこ、ここここここ、ダメだ身体が拒絶する……』
『処す?』
『対人戦闘では、こっちに分があるだろう』
『しょすしょすしょすしょす。 ケヒャア! ケヒャア!』
どうみても偉い騎士です! って感じの連中が、俺のこと見ながら殺人計画立ててるのが聞こえてきてるんだぞ。全員アイシア程の美しさではないが、金色の髪をしてるし、多分血縁者。ナイフペロペロするのって、間違えても治安維持する側がしていいことじゃねえよな。
「お迎えが来ているから、こいつを連れて私は一旦帰宅するしかないわね」
「迎えというか、連行というか……」
あと、俺の場合そのまま監禁されそうな恐ろしさがあるんだけど大丈夫?
「じゃあ、身分的に立場あるんだからさっさとケリをつけて欲しい二人のうちの女性の方を捕まえたら連絡つける感じでよろしいですか?」
「そうね。 痴話喧嘩ひとつでめんどくせえ事態になる、力あるものは責任が伴うってことを実践してくれやがった二人のうちの男の方は、こっちで預かっておこうかしら」
「そうだな、連れていったりしたら、また拗らせきってもろもろにがんじがらめに自分でしている男の方をみて、女の方が氷の建造物を増やしかねねえしな」
「全員、ちゃんと名前で呼べや!」
ということで、謎の荷物入り袋は、アイシアが頭側を持ち、俺が足側を持って運ぶことになった。
「じゃあ、なんとか早期解決を願って」
「なんなら、私達の代わりに婚約御披露目を、あの二人にやらせられることを願って、一旦解散ということで」
そういうことになった。
「ケヒャア! ケヒャア!」
「紹介するわね、これが二番目のお兄様」
「けっひゃあ!」
「人語を解せない動物かなにか?」
「ちょっとたまに、こうなるだけで、基本は騎士の鏡らしいのよ。 たしか、王族警備の方の上の役職だったと思うわ」
「トップっひゃあ!」
アイシアへの愛が溢れてる、お前のご家族ってことですねこんなんしかいないのかよ。
「で、こっちのナイフペロペロは、前に会っていたわね。 一番上のお兄様よ」
「なんなら、俺の命の恩人ですね…………」
環境種の時に命を助けてもらったんだけど、
「ペロペロペロペロペロペロ…………毒も塗っとこうか…………ペロペロペロペロ」
「変態なのか殺意高いのか、どっちかにはっきりして欲しい」
そして、命を狙わないでもらいたい。
「因みに、毒はお義姉様……つまりこれの奥さんに当たる人のお手製だから、相当に″効く″わよ」
「その付加情報は別に要らねえよ」
あと、妻帯者なのかよ。
「かなーりの、愛妻家よ」
「嘘だろ?」
「どっちのお兄様も」
「嘘だろ!?」
ナイフペロペロとケヒャってる男が、まともな生活送れてるって信じたくねえんだけど。
「当然ながら、あなたの義理の兄になる予定だからね」
「コロスしょすしょすしょすしょ」
「ペロペロペロペロ」
「………………」
アイシア、駆け落ちしようぜ。あ、嫌ですか。そうですよね。俺もこれの親戚になるの嫌なんだけど、つーか現在進行形で殺されそうなんだけど。
うお、ナイフ飛んできた!




