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その三

道中、と言っても階段を上ったくらいだが、身動きできなくなっていた魔狩り達を助けつつ、遂に元凶二人の根城へとたどり着いた。


「こんにちは~!」


アイシアが容赦なく、根城ことギルマスの執務室(兼応接室)の扉を蹴り飛ばす。


「昏倒させに来ました~!」


俺はマッドから預かった薬(粉末)を部屋へと投げ入れて。


「え?」

「は?」

「どーん!」


アイシアが、まだ残っている砂でそれを部屋いっぱいに拡げる。

ついでに、もう一発。

今度は扉の近くで爆発させて、俺達の方に粉薬入りの風がこっちにやってこないようにした。


「あとは、5分待てばどうにでもなるらしい」


うーん、お手軽。


「…………ここまでやっといてなんどけど、あなた話し合いが一番良い手っていってなかったっけ……?」

「…………あ」


忘れてた。


「………………」

「…………………………」


ここは。


「やっちまったもんはしょうがないということで、ひとつ」

「まあ、そうね。 正義は私たちにあるものね」


なんかいよいよ、俺達の方がやってること悪い気がしてきたな。


薬の効果は覿面で、元凶二人はすよすよ眠っている。折よく、廊下やら階段やらは凍っているので、襟元を掴んで滑らせながら外へとやってきた。

因みに、俺がギルマスを運び、アイシアがユリアを運んでいる。

意識のない人間は、普通は重くなるものだから、この廊下やら階段やらはだいぶありがたかった。


「取りあえず、目下の問題は」

「ああ。 マッド、これいつ目覚めるんだ?」


寝かしつけといてなんだが、全くもって意識を取り戻すことがない。

だいぶ、乱暴な扱いしてたんだけど。


「一晩は見ておきたいねえ」


なんでも、疲労具合に比例して眠りが深くなる魔術薬の試作品だったそうだ。一般人なら、瞬時に薬が効いたとしても、そこまで深い眠りにはならない、っていう実験結果があるらしい。


「つまり、はっきりしたことがあるね。 この二人は、相当な疲労をおした状態で、語彙力の死んだ喧嘩を繰り広げて、なんなら会館を壊滅寸前まで追い込んで、魔狩りやら職員まで、巻き込むレベルの固有魔法を使い続けていた、ということになるねえ。 この二人はバカなのかい!」

「マッドお前……一応上司に向かって、バカって」


気持ちはよーく分かる。


「とにかく、今から事情聴取は無理ってことよね。 じゃあ、二人をギルマスの家に放り込んで解散、ってことでいいかしら」


すっ、と職員の一人が手を上げる。


「顔に落書きは?」

「消せるなら、オッケーよ」


いいのかなあ。

でも、職員達が腹をたてる理由も分かるしなあ。

消せるなら、いっかあ。(思考放棄)


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