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その七

薬には二種類の使い方がある。水に溶かして液体として魔獣にぶっかけるか、火を起こしそこに薬包を放り込んで煙として散布するかだ。今回の場合は、薬を使うのならば水に溶かした方が良いだろう。


「煙の方が、広い範囲に届くと思うのですが……」

「お嬢、そんなことしたらここらの村の畑に影響が出てしまうことになっちゃいますよ」

「ああ、なるほどですね」


そうなのだ。ぶっちゃけると煙の方が楽だ。火さえ起こす手段があれば、そこに放り込めば良い。水だと、大量の水が必要だったり、そもそもその大量の水を入れるための容器が必要だったりと、意外と準備物が多い。だから、薬も煙と液体と状況によって使い分けられるのが一番良いんだが、そうも言えない状態の方が多く基本は煙で使うことの方が多い。

ただ、今回はまた別。


「押し潰されたくなかったら、そこを退きなさい」


あわてて退避。アイシアが肩からでっかい容器を下ろしたことで、ちょっと地響きがする。


「確かに、なにか容器を借りてくるとは言ってたけど、樽を担いでくるか普通?」

「一番大きいのが、これだったからしょうがないじゃない」


それもそうか。

今回は依頼主である村から、容器は借りられるし。


「さっさと薬溶かしなさいよ」

「機嫌悪いなお前」

「なんで、いつも薬なんて要らねえって顔してるあなたが、今回に限って持ってるのよ」

「そこかよ」


ぶすー、と頬を膨らせていたので、指で突っついて空気をはかせる。

薬はカイから借りた、ということは内緒にしておこう……。


「大体、なんで私だけがこれを運ぶことになったのよ」

「罰」


そもそも、お前が連絡さえ途絶えさせてなけりゃこんなに大事になってねえんだよ。


「あと、効率」

「私よりもカイの方が力持ちじゃない」

「ここに急行するために、かなり無理させたから、ここで酷使させると、シノアから刺される可能性あるぞ」

「ああ……報復はされそうね…………」


刺される方がましかも、とのアイシアの言は怖いのでなかったことにした。何されるんだろうか…………。


液体の薬の使い方は超シンプルだ。


「それじゃあ、ぶっかけるわよ!」

「うぇい」

「はい」

「はーい」


アイシアの案内によりたどり着いた、クモの群生地。クモにもいろんなタイプが居るが、こいつらエンプレス種は地面に巣を作るタイプだ。なので、取りあえずは穴に流し込めば良い。


『Syoaaasaassa!?』

「ごめんね」


しばらく、バタバタバタバタ!ともがいていたが、やがて静かになる。

そして、今回の本題はこっちだ。


「アイシア様、お腹割れました!」

「ケイト」

「あいさー」


わらわらと逃げていく幼体たち。七、八、九、十。


「おっけ、流してくれ」


数匹は逃がしたので、残りは薬をぶっかけるだけだ。

幼体たちは、親グモよりも早くに動かなくなる。


「やっと帰れる……………」

「俺の台詞だアホ」


その前に剥ぎ取りは忘れずに。


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