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その十四

俺とアイシアは研究所の前に再び帰ってきた。腹を無理やり満たして、研究所へとこちらも同じく装備やらもろもろを整えるために帰っていたシノアとカイを呼ぶためだ。


「ええっと、つまりですね。アイシアさん、あなた自分の家の屋根に穴が空いてことを、今の今まで忘れていた、と」


なるはやでよろ、と門番のお兄さんに伝言したところ慌てて身支度をしてきたであろう二人に、アイシアの家に向かうと告げて、今はその道中だ。

シノアは、俺達の説明を聞いてから、頭痛がやまないらしい。


「なんでそんなことを忘れているんですか!」


移動速度の都合上、カイの槍に乗っかっている女は、大きな声で叫ぶ。


「いや……だって……」

「サハイテじゃ、珍しいことじゃないからなあ……」


実のところ、家の屋根に穴が空くなんてことは、割りと起こる事故だ。俺も、長期の依頼から帰ってきたら、家の屋根に穴が空いていたことがあったし。そん時の犯人は、イシバミガラスだったっけ。

ただまあ、会館の場合はちょっと事情が違うからこんな大事になってるんだが。


「ど田舎め……これだから人類圏の端の端は……」

「その通りだからなんも言い返せんわ」

「ま、まあ、良かったじゃないですかお嬢。だって、何らかの証拠が得られる可能性が、高まったわけですし!」

「まあ、いつものカラスのせいっていう可能性もあるけどね」


アイシア、お前さあ。シノアのテンションが、めちゃくちゃ下がっちまったじゃねえか。


アイシア'sハウスは、然程でかくはない。貴族の癖に、こっちには使用人の一人も雇っていないので、でかくしすぎると管理ができなくなるかららしい。なんで、使用人を誰も雇っていないのかは知らん。

ただ、だからといって手が込んでいないかというと答えは否だ。なんでも、この家を建てるときに、アイシアがリクエストをしなさすぎて先代が勝手に一部を設計したそうだ。その最たる場所が、食糧庫だ。

中堅どころの魔狩りが購入する一軒家くらいの大きさがあるその建物の前で、シノアは腕組みをして。


「なるほど、ここが噂の食糧庫ですか」

「噂なの?」

「当時の研究所に先代が乗り込んできて、最新の技術を提供しろと、脅しにきたと」


爺さんハッスルしてたんだなあ、あの頃も。孫娘がどんだけかわいいんだ。


「相変わらず、無駄に広いなここ」

「無駄って言うのやめてくれる?今はちゃんと有効活用できてるわよ」


せやな。

あの頃はひどかったもんな。解体せずに、魔獣放り込むのは流石にあれだった。


「あの当時は、色々と興味がなかったの!」

「『私に近づかないで。無駄なことしてる暇ないの』」

「~~~~~~~っ!」

「『だって私以外、ゴミみたいに弱い奴しかいないじゃないの』」

「イヤァァァァァーーーー!!!」


アイシア黒歴史時代の物真似をしたら、背中を叩かれた。

耳まで赤く染める照るところを見ると、相当恥ずかしいらしい。


「あの、昔話に花を咲かせているところで申し訳ないのですが……」

「僕たちで、上から穴の形とか見に行くから、二人は中に入ってきてくれる?」


おっと、失礼。


「ほれ、最強の竜卿さん。切り替えていくぞ」

「誰のせいよ、まったく……」


俺のせいだね、ごめんね。

アイシアは、腰の武器をいつでも抜けるように、柄に手を添え。

俺は、小型の弓を左の手に持つ。


「何事もありませんように」

「今さら無理よ」


言うなや。

家主が、ためらいなくドアを蹴り開けたので、俺はそれに続いた。

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