第三十八話
暑い、皆様、体調にはお気をつけください!!
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作者はウマ娘ウエハースの食い過ぎで便秘(第二陣)になりました……
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さて、ベアー達がジョージとの直談判をもくろむ少し前──広域捜査官の拠点、その執務室では二人の人物が合い見舞えていた。
「何のようかね、スターリング捜査官」
そう言ったのはジェンキンスである、その表情は官僚的であり感情が薄い。
「所長、単刀直入におたずねします。捜査情報の漏洩の疑いがあるのですが?」
スターリングが切り出すとジェンキンスは嗤った、
「ジョージズトランスポーテーションとの癒着が疑われています」
ジェンキンスはスターリングをねめつけた、
「ケセラセラの連中とつるんだのか、スターリング?」
言われたスターリングは反論した、
「お言葉ですが、荷夫の水死体にかんしても帳場が立たず、捜査もしない有様。ちまたでは妙な噂もちらほらと……」
「妙な噂とは?」
スターリング淡々とした口調で言った、
「ジョージズトランスポーテーションのおこなったデモンストレーションに裏があるのではないかというものです。なにせ、それに関わる荷夫が死んだわけですから」
ジェンキンスは口ひげに手をやった、
「裏のとれていない情報に振り回されるのはどうかと思うがな?」
「もう一人いた荷夫は現在行方不明ですが、彼が見つかれば状況も変わるのでは?」
スターリングはさらに続けた、
「それともう一つ、ザック誘拐とマルス皇子の関連……そこにもジョージズトランスポーテーションの名がでています。三ノ妃様の名前も」
さらにスターリングは続けた、
「所長、まさか癒着など無いでしょうね?」
言われたジェンキンスは再び嗤った、
「あるはずなかろう、私は広域捜査官の所長だぞ。」
ジェンキンスはそう言うとスターリングをねめつけた。
「証拠無き状況で上司を弾劾するその姿勢はいかがなものか」
ジェンキンスはそう言ったが、スターリングの情報収集能力には内心舌を巻いていた。
『……マズいな……この女……核心に近づきつつある……』
ジェンキンスの脳裏に浮かんだのはスターリングを敵にすることのリスクである、
『……この女も……引き入れてしまうか……』
狡猾な知恵を回したジェンキンスは執務机に向かうと引き出しを開けてリストを取り出した。
「これを見たまえ」
その便せんには有名貴族の名が記されていた。許認可権を持つバッハ卿だけではない、ダリスにおける侯爵、伯爵連中、そして高級官僚さえもだ。
「私が調べた結果……その連中はすべてジョージズトランスポーテーションの便宜供与を受けている。もちろん合法的にだ」
リストにその名を連ねた連中を見たスターリングは息をのんだ。
「すでに情勢は変わっている。蒸気機関という新たな技術のもたらす恩恵を鑑みた連中は舵を切っている。」
スターリングはその眼をしばたくと反論した、
「たとえこのリストの貴族がジョージズトランスポーテーションと手を組もうともポルカの港でみせたデモがいかさまだとわかれば、すべてが水泡に帰すのでは!」
ジェンキンスは意味深に嗤った、
「いかさまの証拠が見つかればな、荷夫の一人は死んで、もう一人は行方不明……証言も言質もとれんぞ?」
ジェンキンスはそう言うと突如として枢密院の最高議長の名を出した。
「広域捜査官のトップは枢密院の権限において任命される。意味がわかるな、スターリング?」
スターリングはジェンキンスの野望の一端を垣間見た、すなわち広域捜査官の局長のポストをその手中に収めんとする姿勢を……
「大きな変動なの中でいかに動くか……私も考えている」
言われたスターリングは押し黙った。弱小貴族であるロイド達が真実を知らしめようとしたところで社会的な信用が得られるとは限らない、大貴族達の連合体に押しつぶされるのは目に見えている……
「時勢とはそう簡単に変えられるものではない、たとえ権限を持つ我々でもな」
ジェンキンスはジョージズトランスポーテーションの技術から生じた株価の変動に触れた、
「政治的な打算が金によって担保された現状で、ポルカの弱小貴族が声を上げたところで、その耳を貸す者はおらんだろう、それが現実というものだ。我々はその流れを読んで新しい波に乗るだけだ。」
ジェンキンスはスターリングを見た、
「もちろん、君の出世もかかっている」
ジェンキンスはスターリングの持つ功名心に訴えた──亜人、エルフそして人間の混血というスターリングは広域捜査官の世界では特異な血筋の存在である。それ故にその血が邪魔をして他の人種や種族から距離を置かれることが少なくない──人を統治する人材としては省かれているのだ。
「さあ、どうするスターリング捜査官」
そう言ったジェンキンスはスターリングに近寄った、
「私が後ろ盾になれば、未来も変わろう」
ジェンキンスはそう言うとスターリングの腰を引き寄せた。
*
さて、2日を用いて作戦を練り終えたロイド達は……
ロイドはベアーとともにジョージズトランスポーテーションの社長と直談判を行うべく馬車を走らせていた──アポなしの特攻である。不意打ちを食らわせて商談に持ち込むというゲリラ的な戦法を開始していた、
すでに、ベアー達はラッツの持つ瓦の記者のネットワークを駆使してジョージズトランスポーテーションの社長の動向をすでに確認していた──ジョージの居所はすでに特定できている。
ポルカではベアー達の行動をカモフラージュするためにウィルソンとジュリアが何食わぬ顔で通常業務を行っている……
さらには有事の際に後方部隊として機能する仲間達を計画に組み込んでいた、2段構えの作戦を貫徹するつもりである。
──準備は万端であった──
そして、ロイドとベアーは目的の場所につくと颯爽と馬車から降りた。
「いくぞ!!」
二人はジョージズトランスポーテーションの社長と面会するべく雄々しく社屋へと乗り込んだ。
広域捜査官のスターリングですがジェンキンスにつくのでしょうか、彼女は功名心の強いタイプです……
一方、ベアー達はジョージの所に乗り込みます。はたして、どうなるのでしょうか?




