第二十一話
今回は短めです。
関係ありませんが鬼滅の刃 シール付きウエハース4箱目を買ってしまいました(気になったシールが手に入らなかったため)冷蔵庫には30個のウエハースがすでに手つかずのままに……ウエハース食い切れるのだろうか……(絶望)
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ベアーとルナは広域捜査官の詰め所を出るとルナのバイト先である『ロゼッタ』に向かうことにした。広域捜査官の協力が空振りに終わったため、この先の戦略を立てねばならない。ロバのことは心配していなかったが、やはりザックのことは気に掛かかる……二人は足早に進んだ。
*
ランチタイムを終えた時間帯と言うこともありロゼッタは休憩ののれんが降りている。二人が中を覗くと女将が二人を快く招き入れた。
ベアーは魚介が盛りだくさんのパスタを頼み、ルナは現在制作中のサンドイッチの試作品を自分でこしらえた。テーブルには湯気を上げたトマト風味のパスタと、野菜をたっぷり挟んだサンドイッチが鎮座する。
「どうする、ザックのこと?」
ルナに尋ねられたベアーはパスタを頬張りながら渋い表情をみせた。
「広域捜査官が人捜しはやるように思えないね……カルロスさんとスターリングさんなら別かもしれないけど……」
ルナがサンドイッチを頬張った、
「ザックがマルス皇子っていう証拠はないもんね……本人がそう言っただけだし……」
ベアーが答えた、
「そうなんだよ、証明するような証拠はない……でもサングースの事件の後、別れ際にロバがザックに対して敬意を払っていただろ、アレが気にかかるんだよね……」
ルナが手にしていたサンドイッチを置いた、
「そうね、あの不細工なスケベロバの態度は……確かに気になる……」
ルナがそう言うとそれとなく二人の会話を聞いていた女将が興味ありげに話してきた、
「もしその話が本当ならとんでもないことだよね、国がひっくり返るくらいのことだよ」
ベアーが反応した、
「そうですね、女将さんがカジノで大当たりするくらいのビッグイッシューですよ」
ベアーが若干からかいぎみに言うと女将の表情が歪んだ、どうやらベアーの指摘が図星だったらしい。
女将は急に態度を変えると前回のカジノにおける敗戦の弁を述べだした。
「あれは絶対いかさまよ!」
ベアーもルナも賭博で財を失った敗軍の将の見解に対して興味を持たない姿勢をみせた。なぜならいつものことだからである──二人はシレッとした表情をみせる。
だが女将はそれにかまわず力説した、
「あのディーラー、絶対ほかの客とつるんでるはずよ!!」
その物言いはいつになく熱い、
「ルーレットで大勝ちなんてあり得ない!!」
女将は続けた、
「連続であたらないようにしてたけど、肝心の勝負は大勝ち……あんなのあるはずがない、都合がよすぎるのよ!」
女将の顔が赤くなる、
「絶対にインチキよ!!!」
女将がそうまくしたてた時である、窓がコツコツとノックされた――外からである。ベアーが外を眺めると見知った顔があった。
「今の話聞かせてくれない?」
そう言ったのはポルカの奇跡と言われた船会社ケセラセラとキャンベル海運との死闘を影から支えた人物である。瓦版の記者としてキャンベル海運の不正を暴き、ベアー達の船会社ケセラセラの株価上昇をあおる記事を書いた少年だ。
「ラッツ!!」
ベアーがそう言うとラッツはネズミのように素早い動きで店内に入ると女将にカジノでのやりとりを促した。
*
女将の話を聞いたラッツはベアーの方に体を向けた、
「なかなか、面白いね」
ラッツは女将の話にまんざらでもない表情を見せた、
「カジノのディーラーの中には地元のヤクザとつるんでる連中がいるらしいんだ……その関係かもしれない」
ラッツは瓦版の記者らしい見解をみせた、
「調べてみれば特ダネがゲットできるかもな」
ラッツが興味津々でそう言うとベアーが声を掛けた、
「あのさあ、ちょっと相談があってさあ、サングースでの行方不明になった肉屋の見習いのことなんだけど……」
ベアーがラッツに相談するとラッツが即座に答えた、
「ザックがマルス王子ってやつだろ?」
「えっ?」
ベアーが驚くとラッツが笑った、
「いや、窓が開いてたから、聞こえてさ」
それに対してルナが口をとがらせた、
「盗み聞きじゃん!」
ラッツは頭をかいた、どうやら悪いという意識があるらしい。
「まあ、俺の個人的な見解だけど、それはないと思うよ。もしそうなら、広域捜査官が本気になるだろうし……それに併せて情報が流れてくる。そんな話は聞かないからね。単なる失踪か事故に巻き込まれたとかそういうやつじゃないかな」
ラッツはそう言ったものの友人であるベアーの頼みと言うことで引き受ける姿勢もみせた。
「カジノのインチキを暴いたあとなら動いてもいい、片手間になるからうまくいくかどうかわからないけど」
ラッツはそう言うとベアーと同じパスタを頼んだ。
「ところで今は何を調べてるんだ?」
ベアーが尋ねるとラッツが即答した、
「蒸気機関だよ、ジョージズトランスポーテーション。あの発明はすごいかもしれないからね。経済面ではものすごいインパクトがあるから」
ベアーはなるほどという表情を見せた、
「許認可の件とか、デモンストレーションの件とか……バッハ卿の中型船舶に関する許認可が新しく認められれば株価が上がるだろ……だから、うちもその関係を追っかけてるんだ」
ラッツはそう言うと運ばれてきたパスタにがっついた。
「ザックの件はとりあえず引き受ける、」
ラッツがパスタを頬張りながらそう言うとベアーが答えた、
「ここの支払いはこっちってことだろ?」
ラッツはにんまりと笑った。気心のしれたやりとりには屈託がない、ベアーも心得ていた。
いなくなったザックを気に掛けたベアー達はラッツに相談することとなりましたが、ラッツはザックがマルス皇子であるとは思っていないようです。それよりもロゼッタの女将が言ったカジノのインチキの方が興味があるようで………
はたして、このあといかに?




