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第十七話

暑くなって参りました、アイスがおいしい季節の到来です。ちなみに作者は鬼滅の刃のシール入りウエハース(20個入り)の3箱めを買ってしまいました……(ウエハース、どうしよう……)

サングースにあるレオナルド家に向かったベアー達はあの惨劇で亡くなった人たちに花を手向けた後、当主であるレオナルド13世と面会した


 貴族らしく着飾ったレオナルド13世は凜々しい表情を見せていた。その表情はすでに貴族のそれで、かつて売れない旅芸人として暮らしていた面影は微塵もない。


「おお、ふたりとも」


レオナルド13世はそう言うと、その表情を変えて口を開いた、



「お久しブリーフ!」



ベアーとルナはあまりに面白くないギャグに真顔になると、そのまま無視して本題に入った。



「正式にレオナルド家の当主として認められたと聞き及びました。おめでとうございます」



 タイミングよくベアーにいなされたレオナルド13世は眼を点にしたが、それにかまわずルナが挨拶を続けた、



「おめでとうございます」



二人に何事もなかったかのように振る舞われたレオナルド13世はコホンと咳払いした、



「あ、う、うん、ありがとう」



 自虐系の芸人として生計を立てていたがあまりに食えない現実に打ちひしがれていた過去はレオナルド13世にとっても忘れ得ぬ思い出である。


 ベアー達がその点を考慮して全力でレオナルド13世の一発ギャグをスルーすると、レオナルド13世は再び咳払いしてから二人に声を掛けた、


「せっかくだからランチでもどうかね?」


言われた二人は快く受け入れると一つの提案をみせた。


「ザックのいる肉屋はダイナーが併設されているんですけど、あそこでたべませんか?」


レオナルド13世は手をたたいた、


「それはいい、あのザックというやつにも世話になったからな、あの不細工な顔ぐらいは見てやろう」



三人は意気投合すると早速ザックの務めているダイナーに向かった。


                                *


 レオナルド13世は平民の姿に扮装するとベアー達とともにダイナーに出発した。その道すがら、芸人として腕を試すべくベアー達に意気揚々として渾身のギャグを披露した。


 だが、不幸なことにキレのあるものはなかった──センスのなさと間の悪さがあいまって負の相乗効果を醸している。


「やっぱり、自虐系でいくしかないんじゃないですかね……」


ネタを披露されたベアーがそう言うとルナが別の可能性に触れた、


「滑り芸はどう、全部外していくスタイル!」


言われたレオナルド13世は『さすがにそれは嫌だ』という姿勢をみせた、


「人を嗤わせるのが芸人だからね、滑ったら駄目だよ!」


一応、芸人としてのプライドがあるらしくルナに対して反論した、


「じゃあ、なんか面白いヤツをみせてほしいんだけど」


 ルナに言われたレオナルド13世は懐からメモ帳のような物を取り出すとコホンと咳払いしてから渾身のギャグを披露した。



「箱が8こ、ある」



 耳にしたベアーとルナが仏頂面をみせる、レオナルド13世は咳払いすると二発目をみせた──たたみかけていくスタイルである。



「景気が悪くてケーキが買えない」


「スマッシュ、しまっしゅ!」


「転んでしまう虫は何だ?───答えは テントウムシ!」



 ネタを3連発したレオナルド13世は自信のある表情で二人を見たがベアーもルナも気の毒な病人を診るような眼をみせた。


さすがにばつの悪くなったレオナルド13世はため息をつくとしょんぼりとした。


 ベアーは外して落ち込む貴族の様子を見ると若干ながらかわいそうだと感じた。だが、その様は滑稽でユーモラスであった。



『……これ、おもしろいな……』



 ベアーは思わず吹いた、ネタを外した芸人の不幸を嗤うようでなんともいえない気分であったが、その不幸こそが喜劇になっているのである。


 隣で見ていたルナも『プー、クスクス』状態だ、ベアーが嗤ったことで悲壮感のある雰囲気が一変し、小さな明るさがもたらされている。



『笑いとは一体何なのか……』



 レオナルド13世は必死に考えたネタが不発に終わった事実とその状況が巻き起こした新たな笑いになんともいえない思いを持った。



さて、そんな思いを持ちながら三人が肉屋に併設されたダイナーについたのだが、そこでは思わぬ事態が生じていた、


「あれ、休み……」


平日のこの時間帯は休みのはずがない──だが店舗には『CLOSE』と札が下げられている。


「……ちょっと私のショルダーベーコン……」


ルナが困った声を上げるとレオナルド13世がにやりと笑った、


「君たちが僕の崇高なギャグを嗤わなかった報いのようだな」


貴族らしい嫌らしい皮肉であったが、店舗の方も『CLOSE』と札が掲げられている。


「店もダイナーも休み……なんでだ……」


ベアーがそう思ったときである、裏口から肉屋のオヤジが出てきた、その表情は沈痛である。


不思議に思ったベアーが店主のオヤジに声を掛けるとオヤジがそれに応えた。


「今日は休みだよ、仕込みが追いつかないんだ……」


「何かあったんですか?」


オヤジがそれに応えた、


「ザックがいないんだ……だから仕込みができない」


ルナが不思議そうな顔を見せた、


「えっ、なんでいないの?」


オヤジが困った表情を見せた。


「実はおとといから行方不明なんだ……配達の途中でいなくなったみたいなんだ……」


まさかの事実にベアー達は驚いた、思わぬ事態の発生に面食らっている、


「ちょっとまて、治安維持官には相談したのか?」


レオナルド13世がそう言うとオヤジが答えた、


「ああ……だけど人捜しなんかしてくれねぇよ……治安維持と人捜しは別だって」


オヤジは自分でもザックを探したことを述べた、


「配達先は全部見てまわったし、あいつのいきそうな所は行ったんだ……だけど形跡もないんだ……」


オヤジは困った様子を見せた、


「あいつトロイだろ、だから途中でけんかにでも巻き込まれて……」


 オヤジがそう言うといつの間にか現れたロバが『さもありなん』という頷きをみせた。トロイという単語に同意している。


「……川に落ちたかも……」


 あばたの多くある小太りの少年は頭がいいわけではないし、スポーツ万能でもない……因数分解どころか連立方程式も解くことができない……


オヤジは心配した様子を見せた、弟子を失った師匠のようである……


「ショルダーベーコンどころじゃないわね……」


ルナがそう言うとレオナルド13世が口を開いた、


「手分けをして探してみるか、土地の民が行方不明というのも領主としては気が引ける」


ベアー達はレオナルド13世の意見に同意するとザック捜索を開始することを決めた。




つまらないギャグを連発したレオナルド13世とともにザックのいる肉屋を訪れたベアー達でしたが、なんとザックがいなくなったというではないですか……


ザックはどうしたんでしょうかね……一体……(次回に続く)

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