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第十二話

少し長くなりましたので、二回に分けたいとおもいます。次回がこの章の最終話となります。


28

三人の淑女レディーは審問会場に颯爽と現れた──マイラ、リンジー、バイロンは実に厳しい表情を見せる。


執事長であるマイラはホームズの前にツカツカと歩み寄ると、その頬をいきなりひっぱたいた。


「よくも、だまそうと!」


 マイラはバイロンを通して金貨強奪事件の顛末をすでに理解していた、すなわち金貨強奪事件が狂言であり、それは投資失敗をカモフラージュするためであったということを……


さらにはその穴埋めするためにホームズがマイラに接触してきたということを……


「アナザーウォレットの資金はあなたたちの失敗を補うためにあるわけではないのよ!」


殴られたホームズはその眼を点にした、思わぬ事態の発生に反駁することさえできない。


脇に控えていたリンジーがスッと前に出る、懐から便せんを出すとこれみよがしに提示した。


「此度の金貨強奪事件における審問は枢密院の判断だけでは結審いたしません。」


リンジーはそう述べると便せんの最後に記されている文言とその署名をみせた。



それを見たホームズは言葉を無くした



『一ノ妃……様の……サイン』



ホームズが顔面を蒼白にすると副宮長であるバイロンがホームズの胸ぐらをつかんだ



「本当のことを話したらいかがですか?」



エレガントな言い方であるがいつでも頭突きをかませるように肩と首をウォームアップしている。



 ホームズは息をのんだ。そしてその場の全員の顔を見渡した。その表情は先ほどとは一転して蒼白である。



「……こんな……はずじゃ……」



一ノ妃のサインを見たホームズがポロリとこぼすとマーベリックが詰問した、


「あなたの一存でこれだけ大きな事案が決定できるとは思えない、あなたの上には誰がいるんですか?」


マーベリックに詰められたホームズは言葉を失った。



「沈黙したところであなたの状況がよくなるとはおもえませんが……」



 マーベリックは人とは思えぬ眼をみせた、蛇ともワニとも見える……近衛隊の隊員達さえも息を呑んだ……



「…………」



だが、それでもホームズは首を横に振った、



「……いえない、いえないよ……」



 痴呆の老人のごとくホームズはそう言うとバイロンの手を振り切った。その力は頭突き女子さえも凌駕する勢いがある



「おまえらに……いえるものか」



ホームズが震える声を絞り出す。



そして、誰しもが想定しないことがおこった――ホームズが窓にむかって疾走したのだ、



マーベリックがホームズに手を伸ばそうとする──だが届かない……



……転瞬……



嫌な音がした、それは明らかに死の匂いをはらんでいた。


                                *


 マーベリックは三階にある審問会場の窓から下を覗いたが、そこには首をあらぬ方向に向けて地面に伏したホームズの姿があった、血反吐を地面にまき散らして小刻みに痙攣している……



『ホームズ、お前にはまだ聞きたいことがあった……』



 マーベリックはそう思ったが事案の本質を知る枢密院の責任者、ホームズは何も語ることはなかった。



すべてはグレーの結末へと帰着していた。




ホームズ、死んだ!!!(以上)


読者の皆様、寒いので体調管理にはお気をつけください。(寒いと切れ痔になりやすいから気をつけるんだ!!)(作者の経験より)

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