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第九話

みなさん、メリークリスマス! いかがですか、プレゼントもらいましたか?


作者はサンタさんから早めのプレゼントを昨晩いただきました。(イエ~イ)

……何か気になりますか?


それはね……『痔』でした!!(号泣)


みんな、冷えると痔になるからな、気をつけるんだぞ!!!(戒め)

19

バイロンはマーベリックのいる隠れ家から宮に戻るとリンジーのところに向かった。それはマーベリックの気になっている点を明らかにするためである。


「ねぇ、リンジー、ちょっと聞きたいんだけど?」


リンジーは書き物をしながらバイロンに答えた、


「どうぞ」


「あのさぁ、近衛隊と枢密院ってどんな関係になるの?」


言われたリンジーは変わらずの状態で答えた、


「帝位に就く方々の警護が近衛隊、枢密院は貴族に関わる事案を精査するところ──まあ、司法機関よね。両者の関係性は……そうね、それぞれ別ね。宮中にある機関だけどそれぞれ独立してるって感じ。」


それに対してバイロンが答えた、


「それぞれが独立っていうことは、関係性はないってこと?」


言われたリンジーが首を横に振った、


「建前はそうだけど、近衛隊で問題が生じたときは枢密院が精査するの。今回みたいにね。だから独立してるけどトラブったときは別って感じかな。でも不正がないように互いに監視しあう関係になってる。」


バイロンは無い知恵を絞った、


「じゃあ、枢密院と近衛隊は緊張関係なの?」


「そうね、いい意味で」


リンジーはそう言うと手をたたいた、


「そうだ、給料は違うのよ……」


「えっ?」


バイロンが首をかしげた、


「私たちの給料も近衛隊も会計院から出てるんだけど枢密院だけは別、あそこの職員は会計が別なのよ」


「じゃあ、どこから出てるの?」


「特別予算」


リンジーが続けた、


「私たちにアナザーウォレットがあるように枢密院には特別予算って言うのがあるのよ、職員はそこから給料をもらってる」


バイロンがリンジーの見識に唸る、


「でもあそこの予算って誰が精査しているのかは謎なんだよね……たぶんえらい人なんだろうけど……帝位の方々もそこには触れられないみたいだし」


リンジーが不思議そうに言うとバイロンの脳裏にマーベリックの発言が浮かんだ、



《枢密院に関する情報を集めてほしい、特に金の流れ》



 バイロンは特別予算という誰が管理しているかわからない枠があることを知ると、その秘匿性になんともいえないものを感じた。



『これ、調べてみるか……』



 そう思ったパイロン脳裏に浮かんだのは週例会議である。各宮の長たちが集まって懸案を議論するところだ。


『そうだ、この後にある会議でマイラさんにぶつけてみよう、執事長なら何か知っているかも!』


そう思ったバイロンは、会議に向けての準備をいそいそと始めた。



20

宮長と副宮長はほかの宮、すなわち一ノ宮、二ノ宮、三ノ宮の幹部と週に一度の会合に出席する役割がある。バイロンとリンジーは当然この会議に参加することになる。


 そして、この会議では忌憚なく意見の交換が行われ、行事に関する予算の配分が議論される。喧々諤々とした雰囲気になることもしばしばである……


 だが、その一方で休憩時間には菓子を食べながらそれぞれの問題について率直な意見交換が成される。温和な雰囲気で個人の見解なども述べられるのだがこの和やかな時間こそが重要で、ティータイムこそが行事予算の調整弁となっているのである。


 バイロンは休憩時間になると早速マイラのところに向かった、枢密院の特別予算に関する情報をそれとなく聞き出すためである。


                               *


 バイロンがマイラのところに向かおうと会議室を出て角を曲がろうとするとマイラの前には先客がいた、バイロンはチラリと客を見たが明らかにその容姿は微妙である、


「あの法衣……あれ枢密院の職員……」


 バイロンは小声で独りごちたが、マイラの様子はなんともいえないものがある、そこには突然に悩みの種が降ってきたかのような困惑が滲んでいた、


『そういえば、マイラさん……なんとなくだけど不安を抱えているような感じだったわ……』


バイロンはマイラが毒を盛られた後、無理に気丈に振る舞っているような印象を受けていた。


『何かあるのかしら……』


そう思った、バイロンは柱の陰からマイラと枢密院の職員の話を聞こうとした、


『よかった、これ持ってて』


バイロンはマーベリックから預かっている貝殻のようになっている集音器をポケットから出した。


『この位置でいいわ』


 バイロンはマイラと枢密院の職員の死角になる場所にさっと移動すると二人の会話を盗み聞こうとした。


                                  *


「執事長、そちらの持つ資金を使用するのも悪くないとおもいますが」


枢密院の職員に言われたマイラは逡巡した、


「確かに私の裁量で出せる金銭はありますが……」


言われたマイラを説得するかのようにして枢密院の職員が言った、


「今がチャンスです、ある程度の金額をまとめて用いれば勝負に負けることはありません」


マイラは困った顔をしている、


「ホームズさん、申し出はありがたいのだけれど……アナザーウォレットの資金流用については……やはり……」


枢密院の職員ホームズは力説した、


「我々の特別予算もアナザーウォレットも年々その額は目減りしています。ですがここである程度、増やすことができれば安泰、執事長の権限で使える金額も増えます。」


 ホームズはそう言うと数式を用いた資金流用に関するスキームを説明した。いくつかの投資案件をリスクに分けて元本が保証されることを蕩々と述べた。


「大丈夫です、任せてください!」


 言われたマイラは困った表情を崩さない……だが、その一方で興味も示している。執事長の自由裁量の金額が増えるという枢密院の職員の言葉には魅力があるようだ……


「明後日、もう一度伺います。そのときに!」


ホームズはそう言うとその場を颯爽と去った。


                                 *


集音器で二人の会話を聞いていたバイロンは額にしわを寄せた。


『……ホームズ……たしか金貨強奪事件の審問を担当している枢密院の職員よね……』


マーベリックとの会話で飛び交った名前を思いだしたバイロンはさらに深いしわを額に造った。


『何……資金流用って……』


バイロンは無い知恵を回した、


『アナザーウォレットから流用……自由裁量の金……』


 バイロンは正直に言うと数字に強いわけではない、ホームズの示した数式や投資のスキームはほとんど理解できなかった。


『なんかよくわかんないけど、運用って……』


ホームズの発言に知的な緻密さを感じたが、それと同時に女の直感がもたげてくる、



『……元本保証……そんなのあるの……』



怪しいと踏んだバイロンは早速マーベリックに報告するべく動いた。



マーベリックの頼みによりバイロンはマイラから情報収集しようとしますが……なんとそのマイラは枢密院のホームズと何やら投資事案について話していました……


さて、この後どうなるのでしょうか?

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