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第六話

寒くなって参りました、作者はワークマンで防寒着を買おうとしたところ……なんと売り切れ……

ネットでも買えませんでした。


ワークマン……大人気みたいっすね。

13

マーベリックは毒の特定のために二つの方針をとった。


一つは被害に遭った隊員たちに対する聞き取りである。どのようなしびれがあったか、部位、しびれが始まった時間、そしてその持続期間、ほかに吐き気や頭痛はないかなど、隊員たちの様態から毒を特定しようと試みた。


そしてもう一つは毒の盛られた場所と時間の特定である。


 隊員達の聞き取りからあまり芳しい成果を得られなかったマーベリックは隊員達が襲われる前日の行動を調べると、その夕刻に彼らが夕食をとった『憩い』という飲食店が怪しいと踏んだ、


『夜からは酒も出す店のようだな……隊員達も多少は呑んだと言質が取れている。まず酒場からだ』


そう思ったマーベリックは早速行動に出た。


                                 *


 『憩い』は大衆店とも高級店とも言いがたい店であった。価格帯という点では大衆点ほど安くなく、かといって高級店のような敷居の高さはない。近衛隊の隊員の給料でも十分に酒を飲むことはできる。


 平民に扮したマーベリックは席に着くと店内を見回した。陳列されたオブジェはそれなりだが高級店のような豪奢なものはない。


『形だけの偽物だな』


マーベリックは丁寧に作られたメニューをとると早速注文した、


「麦芽酒と何かつまみを」


給使に現れた若い娘は一番人気の鳥の串焼きを勧めた。


「塩と自家製のタレがありますが、どちらがいいですか?」


若い娘はテキパキと応対する、マーベリックがタレに関して質問すると即座に答えた。


「さっぱりとした甘辛になってます。」


マーベリックはそれを注文すると、さらに塩味の串焼きも注文した。


 若い娘が厨房に向かうとマーベリックは厠に行くふりをして店の中をつぶさに調べだした。テーブルに置かれた調味料、座席の位置、従業員の数、裏口の位置など瞬時にして間取りを頭に入れた。


『二階もあるな』


マーベリックは注文された品が届くと若い娘に質問した、


「二階は団体客用なのか?」


娘が答えた、


「ええ、そうです。個室になっていて四人以上なら誰でも使用できます。週末は予約が必要すけど」


気になったマーベリックは予約するふりをすると二階を見せるようにいった。


「ええ、どうぞ」


マーベリックはもう一杯、麦芽酒を追加すると二階にトントンと上がった。


                                  *


『なるほど、こんな感じか……』


四つの個室がありすべての部屋が独立している……マーベリックは部屋の構造を眺めた。


『毒を盛るには簡単だな。部屋にいる客は何一つ見えない。階段でしびれ薬を混入させられたらひとたまりも無いな。』


マーベリックはそう判断すると席に戻って串焼きを頬張りながら厨房に目をやった。


『店主は亜人か……経営者と調理人を兼ねている。女将は亜人の女房だな、一般の女だ』


マーベリックは調理している様を観察した、


『腕は悪くない、味も悪くない……飲み屋としては上出来だ』


だが、マーベリックの眼はとある部分に注目していた。


『なるほどな』


 マーベリックは亜人の足首にある入れ墨を見逃してはいなかった。しゃがんだときに一瞬見えたふくらはぎには、あきらかにカタギではない印があった。


『飲み屋の店主が本当の姿なのか……それとも玄人か……』


 マーベリックは店主が犯罪組織に従事しているのではないかと疑うと、それを悟られぬようにして勘定を払って店を出た。



14

店を出たマーベリックは頭の中で金貨強奪事件のあらまし描いてみた。


『隊員たちが毒を盛られた場所、それがここだという証拠はないが、疑わしいのは間違いない。隊員たちが酒を飲んでいたのは平日の夜だ。客も多くはなく、おまけに個室も使える。近衛隊の奴らに一服盛るのは簡単だ。』


マーベリックの推理が続く、


『店の店主はすねに傷がある……場合によっては依頼をうけて毒を混入した可能性もある。』


 柔和な笑顔の裏でカタギではない賊面を見せた『酒場 憩い』の店主は調理人も兼ねている。毒を盛ることは簡単であろう。


だが、その一方でマーベリックの推理には一つの問題もあった。


『しびれ薬を用いたとして、翌日の任務中にちょうど体に支障をきたすように毒の量を調整できるのだろうか?』


 薬物の扱いの簡単なものではない。その毒の特性もあるが、適切な量を用いてターゲットを処理するには綿密な計算がいる。毒の量が多ければターゲットは死に至るであろうし、少なければ意味が無い。適切という意味合いにおいて甚だ難しい……


『毒を盛るとしてもかなりの知識があることになる……さらには毒を盛るタイミングを計る必要もあるし、隊員が毒を確実に摂取するかどうかという問題もある』


マーベリックは厳しい表情を浮かべた、


『なんともいえん……』


 そんなときである、マーベリックは後方にいやな気配を感じた、闇に潜むエージェントの勘が訴える、


 マーベリックは直ぐさまに左に身をかわす、自分のいたところにはガツンと言う音がこだました。地面を何かが叩いた音がする。


マーベリックはその身を翻すと相手を見た、


その目には頭の悪そうな男が映っている、その手には角材が握られているではないか……


マーベリックはにやりと笑った、


『食後の運動にはちょうどいい』


そう思ったマーベリックは宙を舞っていた。


                                 *


勝負は一瞬、否、刹那であった。マーベリックを襲った襲撃者は石畳にその体を横たえていた。


『………………』


 無残、悲惨、陰惨――マーベリックを襲った男は右手を折られた状態で突っ伏していた。マーベリックは鳴きそうになった男を路地に裏に引きずった、


「なぜ狙った?」


 尋ねられた男は想定外の展開に言葉を失っている……返り討ちにされるとは考えていなかったようだ、


マーベリックの眼が三白眼になる、は虫類を思わせるその眼に人倫の光はない


知性の低い男でさえも死への恐怖感がにじみ出した、


『こいつ……やべぇよ……』


マーベリックは泳ぐ男の目を無視すると、その腹に一撃を加えた。手加減した膝蹴りである。


男の口から胃液があふれる……


「誰に雇われた?」


尋ねられた男は泣きそうになっている、だが、男の本能は真実の吐露を拒絶した、


「言えねぇ、いえねぇ、借金があるんだよ……100ギルダー今日中に返さなきゃいけねぇんだよ……」


マーベリックは男の面をはたいた。


「お前が八文だからといって手心は加えぬ」


 マーベリックは襲撃者である男が脳の発達において遅滞があることを見抜いていた。だがそれでもマーベリックは容赦しなかった。



「人は等しく平等であるならば、間違いを犯した人間に対する対処も同じにせねばならない。それが人道というものだ」



襲撃者の男は小便を漏らした、殺されると思ったからだ……



「あいつだ、あいつだよ……烏帽子をかぶったやつだ。名前も知らねぇし、見たこともない顔だ!」



マーベリックは襲撃した男が指示役の人間の風貌を述べるとダメ押しの一撃を加えた。



「次は無いと思え」



 マーベリックがそう言うと路地裏に崩れ落ちた男は嗚咽を漏らした、実に悲惨な光景である……マーベリックはそれを無視してきびすを返すと去り際に何かを落とした。


襲撃者の男はそれを見て、手に取るとさらに泣いた、



「ありがてぇ、ありがてぇ」



縛られた革の小袋には銀貨が10枚ほど入っていた、金額にして100ギルダーはくだらない。



「飲み代が払えるよ~、ありがてぇ」



知恵の足りぬ男は腕を骨折させられてなお、マーベリックに感謝の言葉を述べていた。



近衛隊を昏倒させた毒の出所を探すべく、マーベリックは飲み屋に赴きます。

ですが、その帰り……襲われます。

余裕で撃退したマーベリックでしたが雇い主はわかりませんでした……


さて、この後どうなるのでしょうか?

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