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第十六話

39

パトリックとフレッドがサセックス家と領民の間で生じた事案を解決した後……


午後の授業と訓練を終えて寮に戻ったパトリックとフレッドは想像以上の周りの変化に驚いていた。


「……こんなになるとはな……」


サセックス家とその領民の衝突を回避して妥結に至らしめた功績が思わぬ余波を引き起こしていた。


「知らぬ間に英雄扱いだ……」


 寮の一階、エントランス付近では候補生たちが彼らをあたたかく迎えている。なかには羨望とおもえるまなざしを向ける者もいる……


「かいかぶりすぎだ……」


 だが、鼓笛隊との間にバイプを持ったパトリックとフレッドは別の視点からも候補生たちにとって重要な人材と評されるようになっていた……



「……合コン大臣か……」



学年を問わずして候補生たちからの人気が上がっていたのである。


さらには教職員達の中にさえ二人にたいして評価するものがいた。



「シェリー酒の値段が下がることにこれだけ意味があるなんてな……」



 軍属の教員は酒豪が多いため酒税が下がることがうれしいらしく、二人の成し遂げたことを喜んでいた。顔には出さないものの二人に対してどことなく甘めの査定をしているように思えた。


教職員の一部にさえ変化が訪れていたのである。


「ちょっと評価が高すぎるような……」


フレッドがそう言うとパトリックはそれに同意した。


「ああ、たまたま結果がいい方向に転んだだけだ……あまり過大評価されてもなあ」


パトリックが気を引き締めた表情を見せるとフレッドは気になっていた質問をぶつけた。


「なあ、パトリック…なぜ俺に華を持たせたんだ……俺はあの場にいただけで何もしていない……校長の前でも俺が主体的に妥結を導いたような話を……」


フレッドがそう言うとパトリックは何食わぬ顔で答えた。



「武勲というのは各上の者が立てたほうが見栄えがいい。ローズ家の嫡子であるお前なら申し分ないだろう。男爵風情の俺がたてたところで、上位の位の貴族から嫉妬されるだけだ。軍属に爵位は関係ないとは言うが、候補生レベルではそうもいかんだろ」



パトリックは貴族の位階にたいする鋭い考察をみせるとさらに続けた、



「それに、あの修羅場にお前がいたのは間違いない。それだけで十分な功績なんじゃないか。」



パトリックがそう言うとフレッドは何とも言えない表情を見せた。



『ほんとは領民の圧力にビビッて逃げることもままならなかったんだけどな……膝なんてガクブルだったし……』



フレッドはそうおもったが、本音を隠して答えた。



「まあ、じゃあ、今回はそう言うことにしておこう……」



フレッドは気を良くすると中間試験に関してふれた。


「ところで、再来週の試験はどうするんだ?」


言われたパトリックは特にこれといった関心を示さなかった。



「出たとこ勝負だろ」



パトリックはそう言うと中間試験対策の過去問を手に取った。


「昨年と同じ問題は出ないだろうが……似たような内容のはずだ。これを押さえておけば何とかなるだろ」


パトリックはそう言うとラインハルトからの手紙を思い起こした。



『学年で5番以内か……なかなか厳しいな』



パトリックは学年で優秀な人材を思い起こしたが、彼らに勝たねば再びブーツキャンプに召喚されることになる。


『さて、どうするかな……』


パトリックは美しい表情にかげりを見せた。



40

クレイは自分が常に頂点にいなければいけないと思っていた。それがローズ家の嫡子であることの証明であると……


 そしてそのためには手段を選ばずに人を蹴落とすことも是であると考えた。むしろ競争で勝ち抜くうえで、人の頭を踏んでいくのは当たり前であり、たとえ屍が生まれようとも、それは適正な犠牲であると考えていた。


そしてクレイはそうした考えこそがローズ家の頂点に君臨するために必要な素養であるとおもっていた。


『………』


 だが、同じローズ家のウスノロと思っていたフレッドが上げた武勲は想像以上の余波を広げていた。弟をはやし立てる候補生や蔭ながら酒税の減税を喜ぶ教職員の様子はクレイにとって面白くなかった。


『フレッドの名声は邪魔になる……だが奴の能力で今回の事案が解決できたとは到底思えん。』


兄であるクレイは弟であるフレッドの能力を把握していた。



『やはり……パトリック……奴がカギだな』



状況認識において聡明さを発揮したクレイは知恵をまわした。


『さて、どう料理するかな』


クレイの脳裏にはパトリックとマルチンの顔が浮かんでいた。


                                 *


そんな時である、クレイのもとに初老の教員の一人がやってきた、


 クレイは候補生代表という立場のため職員との接触を毎日のように行っていた。当然、教員との間にコネのようなものができている。


 実のところ、クレイはロース家の威光を照らしながらそれを存分に使うとパトリックの過去について調べさせていた。


クレイは教員から資料を受け取るとすぐに目を通した。



『ポルカの上級学校をやめた後……ブーツキャンプに収監されていたのか……』



 クレイは生徒の履歴を知る教員の中でもローズ家に対して忠誠を誓う人物からパトリックの経歴を入手していた。



『前科者か……フフフ』



クレイはパトリックの履歴をほくそ笑むとさらに思考した。



『この過去をつまびらかにすることは奴にとっても芳しくないだろう……恥ずべき咎人としての過去は誰にも知られたくあるまい……』



クレイはそう思うと、一つの結論に至った。



『これは使えるな!』



クレイは迅速な行動に移ることにした。そこには軍人とは異なる策士としての表情が現れていた。





パトリックたちが気に入らないクレイでしたが……彼はパトリックの過去を把握したようです……はたしてクレイはいかなる策を弄するのでしょうか?


関係ありませんが…作者は寒さに当たり……『痔』になりますた……(号泣)

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