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二章 第一話

二章を始めることにしました。


よろしければまたお付き合いください。


なお毎日うpはできないので少し気長にまってくれるとうれしいです。



 無事、僧侶をやめて無職になったベアーは旅の準備を終えると老婆に挨拶を済ませた。色々あったドリトスでの生活もこれで終わりになる。多少、感傷的な気分にもなったが老婆やルナと会えなくなるわけではないので元気よく一歩踏み出した。


そんな時である、ルナがベアーに声をかけた。


「おにいちゃん、私を…捨てるのね……」


ルナは実にいやらしい目つきでベアーを見た。旅に出るベアーを祝福するどころか『足の小指を骨折しろ』と言わんばかりの表情をみせた。


「お兄ちゃん、いかないで、おねがい、おにいちゃん~~」


ベアーは『お兄ちゃんプレイ』の誘惑にかられた。だがそのプレイに水を差す一言が老婆から発せられた。


「なに遊んでんのルナ、チーズの整理、手伝って!!!」


さすがのルナも老婆には頭が上がらない。


『ちっ、しょうがねぇ…』


という表情を浮かべるとあきらめた。


こうして微妙なコントを終えたベアーはバーリック牧場を後にした。


ベアーはドリトスを出ると都へ向かう街道へと足を向けた。


『どうしようかな、都で貿易商の見習いもいいけど、ちょっと羽を伸ばしたいしな…』


闇の魔道書を高値で買い取ってもらったため旅の軍資金には余裕があった。ベアーは懐が温かいので迂回するルートも悪くないと思い始めた。


『港町から都に入るのもいいな』


 ダリスの都には街道を通っていく方法と、船を使って港町経由で行く方法がある。街道を歩いて1週間もあれば都に着くが、これまで徒歩で進んできたベアーにとって船という選択肢は魅力があった。


『船賃はかかるだろうけど……船に乗ったこともないしな……よし、港町ポルカまで船で行って、それから都に入ろう!』


こうしてベアーはロバとともに船着き場まで意気揚々と向かった。


                              *


 船着き場は穀倉地帯を抜けた川のほとりにある。10年近い護岸工事が終わり複数の船の停泊が可能になっていた。かつては小さな漁船しか停泊できなかったそうだが、工事が終わった現在、船着き場は海上輸送の要所として機能していた。


『すごいな」


 近隣からの小麦を運ぶ貨物船もこの船着き場に停泊するのでその規模はベアーが想像していたよりもはるかに大きかった。


 ベアーは船着き場に着くと隣接したログハウスに向かった、チケットを買うためである。


『意外と人が多いな…』


 チケット売り場は人で混雑していた。とくに船の出発時刻を書いたタイムテーブルの所は人だかりになっている。


『これじゃ、よくわかんないな…』


ベアーはどの船に乗るか迷ったので適当な職員を捕まえて尋ねることにした。


「すいません、ポルカまで行きたいんですけど?」


「ポルカは客船に乗らないといけないから、3番の桟橋から出てるボートに乗って海の方まで出ないと無理だよ」


「海まで行くんですか?」


「1時間もあればつくよ」


そう言うと職員は出発時刻を記した印刷物をベアーに渡した。


「ポルカ行の船は今日の16時から出る、今からなら間に合うよ、どうする?」


ベアーは思案した。


「ロバもいるんですけど」


「動物か、ちょっと聞いてみよう」


職員はそう言うと奥に行った。


ベアーはその間にチケットの値段を確認した。


「意外と高いな……でも多少の軍資金もあるし」


そんなことを思っていると職員が戻ってきた。


「大丈夫だって、だけど料金が変わるんだ。動物は大型の荷物と同じ扱いだから40ギルダー、ポルカまでの船賃が110ギルダーだから合わせて150ギルダーだね」


『マジか……高いな……じいちゃんの給料の3分の1だ。』


ベアーは悩んだが『船』と『海』という響きにロマンを感じ、奮発してチケットを購入した。


だがこの行為が後に大きな事件に巻き込まれるきっかけになるとは今のベアーには知る由もなかった。



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