表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔力なし悪役令嬢の"婚約破棄"後は、楽しい魔法と美味しいご飯があふれている。  作者: にのまえ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/57

44

 ――あと少しで届くのに!


 私は捕まった格子から手を伸ばして、自分のカバンを取ろうとしていた。あの中に魔法の杖と、もしものためにとワンピースを押し込んだ。


 何か、棒のようなものがない?


 早くここを抜けださないと、カロール殿下と私(私に変装したイアン)が結婚してしまう。鉄格子をガシャン、ガシャン鳴らしながら、必死に手を伸ばしていた。


(あと少しで……いま、肩掛けに手が届いた!)

 

 そのとき――部屋の扉が開き騎士が2人部屋に入って来た。しまった音を出していたから? ――私の見張りが来たのかと思ったけど。彼らは「ここなら誰もいないな」「……はいっちゃいけなぇ、部屋だけど少しくらいならいいか?」と部屋の椅子に座り、勝手に紅茶を入れ、兜を脱ぎ、くつろぎ会話を始めた。


 まるで、ここに私がいないかのような動作?

 

 騎士たちは一向にベッドの上、鉄格子の中にいる私をみない。「おーい」声をかけても、無視をしているようでもない――彼らに私の姿が見えていない?

 


 彼らは紅茶を飲み、深いため息を吐いた。


「はあ……疲れた。まったく、最近のカロール殿下は人使いが荒いねぇ」


「そうだな。私達もだが他の騎士達は休みもなく働かされている。フウッ…………それも今日で終わりになるだろう」


「あぁ、やっと終わるなぁ」


「でもさ、貴族が集まる公の舞台でいちど婚約破棄しといて、また捕まえるっておかしな話だよな」


 うんうん、ともう1人の騎士が頷く。

 私もそうだと頷いた。


「それに、さいきん殿下の付き人となったイアン様も不気味だよな――変わった術を使用される」


 イアンが変わった術を使う? さっきの話で魔女に何かされたと言っていたわ。もしかすると魔女の術を使っているのかも。


 ひとりの騎士が声を小さくして、隣の騎士に話す。


「ああ、ここだけの話だが……国王陛下と王妃様、周りの重役たちは……その、イアン様の術にかかっという話だ」

 

「はあ? なんだよそれ」


「陛下と王妃の言動がいきなり覆っただろう? あれ、イアンの術らしいぞ。魔導署のものがそう話していた……なんでも人を操る術だとか」


「こえぇ、人を操るのか…………そんなものを使っちゃ日には、この国は終わるぞ――でもさ、そういっても。下っ端の俺たちには何にもできないな」


「そうだなぁ。俺達は上の言うことに従うだけだ」


 だから、彼らは殿下の言うことを聞くしかない。

 疲れたように呟く騎士達の目の下にクマがあり、相当疲れているように見えた。


「んっ?【魔法通信】が来た。緊急招集だ! 西の砦で魔法使いが暴れているらしい――向かうぞ!」


「わかった、向かおう!」


 魔法使いが暴れている?

 もしかして、シエル先輩?


 先輩なら早く私もそこに行きたい。手を伸ばして、カバンを取ろうとしていたそこに。

 


「ぴゃあっ、人族が一杯いて怖いっス。もう俺っちは無理っス~」

 


 なさけない声を出し、騎士たちがしめ忘れた扉から飛び込むように、黒い塊が部屋の中に転がり込んできた。この子。見た目は猫だけど言葉を話す猫だ。


 この猫は頭を抱え、丸まって震えだした。


「もう、怖いっス、限界っス、あるじ、あるじ~!」


 猫はカタカタ震えて、そのまま頭を抱えていたけど。キョロキョロしたあと背伸びのポーズを取り、体を起こして2本の尻尾を膨らせたせたまま、部屋の中をそろーりそろーり、鼻をクンクン動かして見回しはじめた。


「ンン? 知っている匂いがするっス。この匂いはルーチェ姉さん? ルーチェ姉さんここにいるっスか?」


 ルーチェ姉さん? ……この猫ちゃんは私のことを知っているみたい。


「ボ、ボク、ラエル様の使い魔のガットっス。よろしくお願いします――どこにいますか?」


 ラエルさんの使い魔? ここにラエルさんがきているということは――シエル先輩もいる。


「ガット君、私はここにいるわ」


 と、鉄格子を鳴らして声をかけてみた。



「「うにゃっ?」」


 

 ガット君は急な声に驚いたのか尻尾をますます膨らませて、その場にぴょんと飛び跳ねた。周りを見るも、やはり私の姿の見えないのかぴょんぴょんと跳ねて、体も尻尾もぷっくり膨らませた。


「ごめん、ガット君……驚かせちゃったね」

 

「ん? ルーチェ姉さん、大丈夫っス。んん? この部屋――嫌な魔法がかかってるっス。だから、モヤがかかって姉さんの姿が見えないのか?」


 嫌な魔法……


「これは――ボクにはこの魔法は解けないっス。いま主人に連絡するっス……『ラエル様!』 …………あれ、おかしいな……ジージー言うだけで念話ができないっス」


 ガット君は首を傾げる。もしかして、この部屋には何かしらの魔法がかかっていると言っていたから、その魔法のせいで念話ができないとか?


「ガット君、やめた方がいい。魔法で邪魔されているのかも。私に考えがあるの――落ちでいるカバンをとってベッドまできてくれる?」


「了解っス」


 ようやく手の届くところまでカバンがくる、私は中から魔法の杖を取り出した。


「おお、それって、シエル様が作った魔法の杖! 威力は抜群……でも売れない商品っス!」


「ハハハッ、威力は抜群なのね……」


 先輩何を作って……いい、いまは考えない。威力のあるのなら、この鉄格子吹っ飛ばせるかも? 次にワンピースを取り出すとガット君が興味を持ち、クンクン匂いを嗅いた。


「すごい、このワンピース……飛行魔法、創造魔法、防御魔法のほかにも……うへぇ、魔法が何重にもかかってるっス」


「え?」


 先輩、また凄いものをくれたんだと、汚れたワンピースを脱いで着替えて、ファイアがいちど打てる杖を持った。


「ガット君はなるべく、ベッドから離れて」

「わかったっス」


 ガット君が離れたのをみて、私は杖を握りしめて。

 


「「ファイア!!」」

 


 と、杖を振った。



「「「ドゴッ!」」」

 


「え?」

「ヒエェええええ!」」


 杖から放たれたファイアは、私がゲームのなかでみてきたものよりも火の玉が大きく……鉄格子と部屋の壁に、人が通れるくらいの穴を開けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ