報告。
なし崩し的と言うか……いつものノリと言うか……
よく分からないが、デリバリーヘルスの2号店の出店と共に、俺の部長昇進が決まった後。
社長。専務。本部長の4人で会議と呼ぶと、普通に働いてるの人に怒られそうな、軽~いノリの打ち合わせが始まった。
「それじゃ、藤田を店長に、幹部候補生希望している近藤を、本社所属にして、マネージャーにして、1号店を任せるって形にします?」
俺が、2号店の出店に掛かりきりになるだろう事は、安易に予想出来るので、1号店の事を、残った男性スタッフ2人に任せるかどうかを聞いてみた。
『藤田と近藤って友達だったろ? 今は社員とバイトだから、関係も良好だけど、両方社員にして、しかも店の運営を任せる立場にしたら、意見の対立とか起きた時に、店が割れないかなぁ?』
本部長が、そんな懸念を言ってきた。そうだなぁ……そう言う事が起きないとも限らないよな。
『それじゃ、藤田は1号店の店長に。そして、マネージャーを1人他の店から回し、近藤は幹部候補生にして、木村部長と一緒に2号店の方に、でどう?』
専務からの提案が採用される事となった。哀れなり近藤……彼女にしたい女の子の為に、幹部になろうと決めたのに、幹部になると同時に、約60㎞離れた場所へと行かされるとは……
その後も、会議と言う名の打ち合わせをして、色々と決まっていく。
2号店の出店は、3ヶ月~4ヶ月後のオープンを目標に。
2号店の責任者は、店長が決まるまでの暫くの間は、俺が兼任する事に。俺としては、近藤が2号店の店長に成って欲しいと思う。
2号店に勤務するデリヘル嬢は、俺が2号店に掛かりきりになると同時にユキも一緒に行く事が、ほぼ決定なので、ユキと後は、ルイの2人を連れて行き、向こうにもある系列の店から2人ほど希望者を募ると言う事にした。
ルイは、こちらでは、やはり、顔が売れすぎという事で、向こうに連れて行き、本人次第では、顔出し等も行う事が決まった。
1号店は、藤田を店長にして、マネージャーを新たに回す事。
新たにバイトを雇う事。今使ってる部屋の隣を、借りる事、これは、本社の方で契約してくれる。
まぁ……後の細かい事は、店長になる藤田の思うようにやればいい。
その他諸々の事を大まかに決めて、打ち合わせが終わった。
事務所に戻る車中で、俺は、今日起きた事を、心の中で反芻して、事務所まで後少しと言うところに来て、ようやく実感を持てるようになっていた。
「俺が部長か……この会社で、頑張ってみると決めた日から、1年経たずに部長か……風俗業界と言えど早い出世なのだろうか? それは分からんが俺なりに必死に、やって来た結果だと受け止めるしかないな……しかし部長か……部長の給料なら、ユキに働いて貰わなくても2人ぐらいの生活費出せるが、きっとユキは嫌だって言うだろうなぁ」
事務所に着いたら、先ずは俺の部長昇進の報告と、藤田の店長昇進、近藤の幹部候補生への昇進を、俺の口から、任命する訳か……
社長も専務も本部長も、こんな事まで、俺に丸投げしやがって。
藤田と近藤を本社の方に出向かせるので。と伝えたら、社長が。
『いや、いいよ、木村部長の方でやっといて、これからは、そう言う仕事も増えるからさ』
ときたもんだ。しかも本部長は……
『ちゃんと最後に【口頭なのは、社風である!】のセリフを忘れないでね』
なんて言ってくるし、あれ、本部長の悪ノリじゃなく、本当に社風なんだろうか?
そんな事を、思いながら、気がつけば事務所のあるマンションの部屋の前まで来ていた。俺は部屋のカギを取り出して、ドアを開け、事務所の中に入って行った。
中には、藤田。近藤。ユキ。ルイがリビングに居て、何やら4人で、同時に出来るゲームをしていた。
俺が入ってきた事に最初に気付いたルイから声が掛かる。
『あっ店長おかえり~お土産は?』
ルイよ。物品のお土産は無いが、ちゃんとあるぞ。
「他の4人は?」
俺がリビングに居ない、ミキ。マリナ。サツキ。モモカ。この4人の所在を訪ねると。藤田が。
『ユキさんと、ルイちゃん居るからって言って、4人で買い物に行くって、30分ぐらい前に出掛けましたよ』
まぁ……この店にずっと居る、あの4人は、後から報告でも問題は無いか。そう判断を下した俺は、ゲームに夢中の4人に声を掛けた。
「ちょっと、ゲーム中断して、話を聞いて欲しい」
俺の喋り口調が普段と違う事を察した、4人は、ゲームをやめて、俺の方に向き直し座った。
「藤田、近藤、立て」
そう言って2人を立たせる。2人は素直に立ち上がり、俺の言葉を待っている。
「先程まで行っていた本社で、色々と決まった事がある、先ずは、sweet lineの2号店の出店が決定した」
2号店の事を告げると、全員からどよめきが起きる。
「それに伴い……藤田次郎君! 君の店長昇進が決定した、同時に1号店の店長にも任命する」
その言葉を受けて、藤田は、満面笑みを浮かべ喜んだ。
「近藤弘樹君! 君に幹部候補生として、本社勤務を命ずると共に、マネージャーとして、2号店の勤務を命ずる」
希望していた事が叶ったからか、それを知っていたユキとルイから、近藤に向け祝福の言葉が贈られる。
「2号店は、△○市に出店する事となる、近藤は俺と一緒に、あちらに行き、2号店の出店を手伝い、開店後もマネージャーとして、店の経営を手伝って欲しい、頼めるよな?」
『はい』
いいんだな? 近藤、その場のイキオイで今、確かに返事したよな? サツキとプチ遠距離になる事、全く考えてないだろ? もう決めたからな、返事しちゃったもんな、お前。
「サツキとは、少し距離が離れてしまうが、まぁ同じ県内だ、会おうと思えばすぐに会えるよな」
俺に言われて、気付いた近藤は、少しガッカリしていたが、藤田に慰められていた。
「ユキ、ユキは……付いて来るなと言っても付いて来そうなので、俺と一緒に2号店に在籍を変わって貰い、また2号店が軌道に乗るまで、デリヘル嬢として、手伝って欲しい」
『うん、任せて! 太郎ちゃん!』
「ルイ、ルイは希望を聞いてから決めようと思う、ルイ、お前はどうしたい? この店に居たいか? 俺と一緒に2号店に行くか? 2号店なら、距離も少し離れているから、今よりかは、もう少し自分の事を売り出す事も可能になるぞ?」
『店長、私が1号店に残るって言ったらどうするの?』
「そうだなぁ……ちょっと困っちゃうな、だけど、ルイの意思を尊重するな、そして、近藤が喜ぶからシャクだが、サツキに声を掛けるかな?」
『そっか~店長が困っちゃうなら、私も2号店に行くよ、それに、もう少しデリヘル嬢として、自分の売り込みもしたいしね』
ルイは、やはり、俺と一緒。と言う事を選択したようだ。
ルイの気持ちは、重々理解しているが、その気持ちに応えてやれない事がもどかしい。
「最後に、俺からみんなに報告がある……この度、我が社では、新たに【無店舗型性風俗事業部】という物が立ち上がった、それに伴い、俺は、その事業部の部長に任命された、たった今から【店長は藤田】の事を指す、俺は【部長】だから、みんなも間違えないようにな」
「それと……これ本当に必要なのか不明なんだが……本部長が絶対に言えってしつこかったから言うが……【口頭なのは、社風である!】」
その後、買い物から帰ってきた4人にも、報告をした。
そして、その日の夜。
今日は、仕事なんてやってられるかぁ! と言うノリで、全員揃って、高級焼き肉店に繰り出し、大宴会となった。




