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その先へ

この話で、第3章の終わりとするか、第4章の始まりとするか、少し悩みましたが、第4章の始まりといたします。

 お店の中での性行為。なんて、迷惑極まりないトラブルが起きたあの日から、1週間ほど経ったある日。

俺は、本部長から本社に呼び出されていた。


 『それでね、お客さんの方は素直に損害賠償の示談に応じて、納得してくれたんだけど、ユカちゃんは両親がね……どう説明しても理解を示してくれないから、仕方ないから警察に通報して、逮捕して貰って、まぁこれから裁判だろうね……』


 本部長は、あのトラブルのその後を、語ってくれた。

ユカは、間違いなく、学校にも行けなくなり、両親にも怒られ、散々な目に合うのだろう……


 風俗業界は、女の子が働いてくれて初めて成り立つ。その事は、俺達が一番理解している。だから、女の子が憂いなくはたらける為なら、何でもする。風俗で働いてると言う事を隠したいなら、協力も惜しまないし、アリバイ工作だってする。


 でも、それはあくまでも、お店にとって、働いてくれる風俗嬢に限っての話だ。お店の損害や、お店の不利益になるような事をされたら、黙ってはいない。それは、お店で働く他の風俗嬢を守る為にも必要な事なのだから。


 『まぁ……今日呼んだのは、顛末を聞かせたかったってだけじゃ無いんだよ、木村店長に前に話した事覚えてるかな?』


 俺がキャバクラからセクキャバに変わり、その後、新しい店舗を任せたい。と言う話の事だろう。


 「はい、もちろん覚えています」


 『来月から、新しいお店を始めようと思ってね、と言っても開店って意味じゃ無く、細々とした準備を始めようって事なんだ』


 すっかり、来月からお店をオープンさせるものだと思い込んでいた俺は、本部長の言い分に、少し困惑を覚えた。


 『新しいお店って言うのは【デリヘル】なんだよ、デリバリーヘルス、知ってるよね?』


 「はい、もちろん知ってます」


 デリヘルだったのかぁ、なるほど。


 『それで、ほら、知ってる通り、店舗って言う箱は必要ないんだよね、それで、女の子達の待機も出来て、なんて事を考慮して、マンションの部屋を借りたんだ、その部屋が来月から入局可能な契約だったんだ』


 『部屋には、会社の方で用意した、電話の回線が1本引いてあるだけで、後は、な~んにも無いの、それで、デリヘルを営業するのに、必要な物全てを、木村店長の思った物を揃えて欲しいんだ』


 何やら、少し事が聞いてた物より大きくなってないか? 何もかも揃った店舗で、店長として働くつもりだったんだが、何も無いのか? 俺は本部長の言葉に驚いた。


 『これ、一応は会社の名義で借りた物ね』


 そう言って応接テーブルの上に、本部長がいくつかの書類を並べていく。書類に目を落とすと。


 賃貸契約書。電話回線契約書。額縁に納められた、無店舗型性風俗特殊営業許可証。が並んでいた。


 『後は、これね、一応は5台用意したから』


 そう言って、本部長はテーブルに5台の携帯電話を置いた。


 俺は、テーブルに並べられた物を全て、俺の近くへと引き寄せて、本部長に【確かに受領しました】と言う意思を見せた。


 『それで、まだ1週間あるけど、もうセクキャバに行かなくていいから、デリヘルの開店準備を始めちゃってよ、木村店長に任せるからさ、それで1日でも早く、オープン出来るように頑張ってね』


 俺は、本部長の言い様に、どこか違和感を感じていて、本部長に正直に訪ねてみる事にした。


 「本部長、信頼してくれて、とっても嬉しいのですが、何でこんな丸投げみたいな感じなんですかね?」


 そう言うと、本部長は、視線を辺りに漂わせ始め、落ち着きが無くなっていく。


 「本部長、すみません、俺の目を見て答えて貰えますか?」


 『いや……あのね、最初は全部揃えて、明日からオープンって状態で木村店長に引き継ぐ予定だったんだよね、それでね……』


 「それで、何ですか?」


 『色々と会議もしたんだけど、ほら、会社としても初めてだから、よく分からなくてね……』


 もう、ここまで聞いて、嫌な予感しか俺はしなくなってきていた。


 『社長が面倒くさくなっちゃって拗ね出したから、俺がついね……木村店長に丸投げしちゃえば? って言ったんだよ、いや! ほら! もちろん冗談のつもりだったんだよ、そしたらさ……俺と同じぐらい木村店長の事を買ってる、専務がさ……【それでいこう!】なんてノリ気になっちゃって、投げやり気味の社長も賛成しちゃってね……ハハッ』


 俺は、自分の頭を鷲掴みにして、指でこめかみを揉んだ。

この会社……割りと悪乗りする会社だと前々から思ってた。

まぁ風俗業界の会社だ、そう言う面もある。

しかし……入社して1年も経ってないヤツに丸投げしてくるとは……


 『俺も専務もそれだけ、木村店長に期待してるんだから、やってくれるよね?』


 この人……卑怯だ……そんな事言われて断れる訳無い……


 「はぁ……分かりました、どこまでやれるか不明ですが、専務や本部長の期待を裏切らないように、頑張ります」


 そう答えると、本部長が本当に良い笑顔を浮かべていた。


 『それじゃ、決まりって事で、これ渡しておくね』


 そう言って新たにテーブルに置いたものは、1冊の銀行の通帳と1枚のキャッシュカードだった。

中を確認してもいいか? と本部長に顔の表情だけで訪ねると、無言で頷いた本部長を見てから、通帳を開いた。


 一……十……百……千……万……と心の中で声を出して、通帳に記載されている入金金額のゼロの数を数えていく。


 「ちょ! 本部長! な……何ですか? この500万って!」


 『うん? 開店資金と、当座の運転資金だよ? 会社が出すのが当たり前でしょ? あっ足らない? 足らなかったら言ってね、申請通ったら追加で資金出せるから』


 俺は、忘れていた……この会社……風俗業界では県内1位の会社であると言う事実を。

ポンと500万の資金を出し、追加もOKだと言えるぐらいの会社である事を。


 その後、色々と本部長と話し合いをした。その話し合いの内容とは、主に【俺が俺を納得と色々諦めさせる】為必要な話し合いであった。


 本部長を問い詰め、答えを聞き、何とか自分の中で無理やり納得させる。と言う作業を2時間ほど続けた後に、本部長が借りたマンションを見に行こう。と言い出した。


 俺と本部長は連なって、本社が借りている駐車場に向かった。

俺は、借りている社用車の軽に向かったのだが、本部長に呼び止められた。


 『あっそうそう、忘れてた、木村店長、貸してる社用車、今日返却してね、新しい社用車を貸し出すからさ』


 車検はまだだったと思ったが、まぁ交換したいと言われたら、俺に依存は無い、元々が会社の車を借りてる身分なのだから。


 『これ、木村店長の新しい社用車ね、あ~木村店長のって言うか、新しく木村店長がオープンさせるお店の車って感じかな』


 そこには、真っ黒のまだピカピカの高級ワゴン車が停まっていた……。


 『ほら、デリヘルなんだから、女の子乗せてお客さんのところに行くでしょ? 軽に乗せてって訳にはいかないでしょ? 女の子にお金無いお店なの? なんて思われちゃったら、女の子も集まらないし、すぐ辞められちゃうしね、見栄も大事って事で』


 本部長の言ってる事は、理解できる。確かに見栄も大事だ。だが……こんな高級車必要なのか? これ……絶対に新車だよな?


 その後また、少しピカピカの高級ワゴン車の前で、本部長と話をして、無理やり納得した俺は、本部長を助手席に乗せ、今日から使えと言われたワゴン車を運転して、会社が借りたマンションの1室へと向かった。


 マンションは、繁華街から車で5分程度の場所にあり、15階建てのマンションだった。ここの4階に部屋を借りたらしい。


 オートロックのマンションのエントランスを抜けて、エレベーターに乗り込み、4階に着いた。部屋はエレベーターから一番近い角の部屋だった。


 本部長がポケットから鍵を取り出して、ドアのロックを開け中に入って行く。俺は本部長に続いて中に入って行った。

部屋の間取りは、4LDK。


 「広いですね……」


 『うん、まぁほら、リビングを仕事場にして、他の部屋に男性スタッフや、女の子が寝泊まり出来る【寮】としても使えた方が便利かな? って会議で決まったから』


 なるほど。確かに、男性スタッフや待機してくれる女の子が、寝泊まり出来る部屋はあった方が、何かと便利だろう。


 悪乗りする会社のくせに、こう言うところは、ちゃんとしてるんだよな、この会社。

社長と専務は、元ホストで、売れに売れて会社を興しただけは、あるって事か……


 『それじゃ、これカギね、まだ住んじゃダメだけど、荷物なんかの搬入は許可取ってるからね』


 そう言って、本部長は俺に、スペアを含むカギを3本渡してきた。


 俺は何も無いマンションの室内を見ながら、頭の中で、オープンして実際に営業している、新しいお店の姿を頭の中に思い描きながら、何だかんだあったが、必ず成功させてやる! そう心に誓った。

 


 

 

 

全てが事実と言う訳ではありませんが。

ほぼ、事実を元にしております。

私は、この一連の騒動のおかげで、この後、胃潰瘍(いかいよう)を患う事になって行くのでした……(笑)

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【風俗嬢と呼ばれて……】堕ちたJDの末路
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