VSボス戦! ダンジョンボスはコウモリで! その2
巨大コウモリは宙を旋回して、こちらへ飛びかかるスキをうかがっている。
平地で戦うのは不利だ。
こんな広いところで戦う必要はない。
コウモリには【隠密】は通用しない。
だから、隠れることはできない。
エコーロケーションのせいだ。
超音波を使って、反射で俺の位置を探知する。
【隠密】も【消音】も通じない。
それはわかっている。
俺が移動するのは隠れるためじゃない!
そう――戦うために有利な場所。
俺の主力スキルが生かせる立地だ!
とうぜん、それは壁際だ。
駆け上がることのできる壁。足場だ。
コウモリの攻撃は垂直に飛んでもかわせない。
分身にリフトアップさせて上へ逃れる手も、何度も通用するとは限らない。
壁があれば、立体的な動きができる。
俺は滝の前のひらけた空間から、じりじりと移動する。
「キキッ」
コウモリが、俺の動きを警戒するような声をあげる。
体がデカくなったからって、脳までデカくなってないよな?
すこし、これまでのコウモリより賢いような気がする。
一番近い壁は、滝と滝つぼがあるために近づけない。
水しぶきで濡れた壁面は【壁走りの術】があっても戦いにくい。
もっと離れれば、登れる壁もあるが……。
コウモリがこちらを狙っている今、背を向けて移動するわけにもいかない。
俺が目指しているのは、一番近くにある巨石だ。
あの大きさなら足場としては充分に使えそうだ。
それに遮蔽物になる巨石の近くなら、翼を広げた突撃攻撃は避けやすくなる……はずだ。
コウモリは俺を中心にして周囲をぐるぐると旋回している。
俺はそれに合わせて、体の正面を向けながら移動し続ける。
コウモリの飛翔速度は速く、動きは変則的だ。
「キィィッ!」
鋭い声をあげ、飛び掛かってくる。
翼を畳んで、上から鋭角に突っ込んでくるコースだ。
コイツ……先ほどの攻防で学習したのか!?
このコースでは、的が小さくなる。
投擲では狙いにくい。
鋭角な侵入角度のせいで、手裏剣は弾かれてしまうだろう。
あるいはコースを変えて回避される。
コウモリが迫る。投擲はだめだ。
それなら――
「うらあっ!」
――懐から取り出しておいた鎖分銅を最小の予備動作で放つ。
居合だ。
手の内に隠していた分銅が、うなりをあげて飛ぶ。
直線的な軌道で勢いよく飛んだ分銅が、コウモリの頭部を撃ち抜く――
その直前、コウモリが体を回転させる。
また、アクロバット飛行か!
コウモリは分銅を素通りして、背後へ――
――だが、想定している! この動きはさっきも見た!
俺はワイヤーに指をかけ、わずかに力をかける。
それで分銅の軌道が変わる。
分銅が横に振られ――コウモリの頭部を捉える。
「ギャィィッ!」
分銅は、したたかにコウモリを強打する。
ぐらり、とコウモリの体が傾く。
コウモリがきりもみ回転しながら墜落する。
俺は衝突を避けるために身をかわす。
さっき俺が立っていた場所に、コウモリが激突する。
「ギッ!」
激しく床に叩きつけられた巨大コウモリが、バウンドして浮きあがる。
「まだだっ!」
居合は一撃必殺というが、二撃目も当然ある。
手元に引き戻した分銅を、大きく縦に振る。
地面ではねて浮き上がったコウモリは空中で身動きができない。
そこへ、大きな半円を描いて分銅がコウモリへ打ち下ろされる。
直撃だ。
「ギエッ!」
耳障りな悲鳴を上げて、コウモリが再び地に打ち付けられる。
「よしっ! 落ちた!」
飛ばないコウモリはただのコウモリだ!
地面に落ちてしまえば這いずることしかできない。
足は退化して、天井にぶら下がることしかできないんだ。
ファンタジーとはいえ、これまでの大コウモリも同じだった。
俺は分銅を回しながら、さらなる一撃を――
「って、おいおい……マジか!?」
コウモリが後ろ足と翼を使って立ち上がる。
その姿は、四つ足動物のようだ。
俺へ向かってコウモリとは思えない力強さで地上を猛進してくる。
その顔面をめがけ、分銅を放つ。
だが、強固な翼に弾かれる。
コウモリの勢いは止まらず、俺へと体当たりをかけてくる。
だが、避けられないほどじゃあない!
飛行攻撃に比べれば遅い。
「っつおぉ!」
俺は何とか、背後へ跳んで身をかわす。
手をついて連続でバク転して安全圏へと逃れる。
コウモリはそのままの勢いで走り抜けていく。
そんなバカな!
コウモリの足は構造的に弱くて、走れるはずが――
「――まさかっ!? コイツ、ステータス持ちか!」
ステータスがあるとすれば、筋力か!
B以上の筋力のステータスだ!
本来は貧弱な身体を強化しているんだ。
歩いたり走ったりできるほどに!
手裏剣をはじく強度もステータスの生命力かもしれない。
あるいはスキルか!?
【身体強化・筋力】か?
【歩行】のようなスキルがあるのか!?
ゴブリンや大コウモリはステータスもスキルも持っていなかった。
多少の苦労はしても倒すことができていた。
だが、コイツは……この巨大コウモリは――
「まちがいない! コイツはステータス持ちだ!」
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