いつもあなたのことを考えています……そういう意味で!?
サバンナエリアに到着した。
じりじりと日差しが肌を焼く。
「あそこ、ツノウサギさんがいます!」
リンの指さした先で角ウサギが草を食んでいる。
耳をピクリと動かして警戒している。
こちらの存在には気づいているが、まだ逃げない。
このあたりは背の低い草ばかりで隠れる場所がない。
俺一人なら【隠密】するんだけどね。
どうせトウコが騒ぐので、隠れても無駄だ。
角ウサギを指さしながらトウコがはしゃぐ。
手の中に銃を生み出してくるくると回し、ぴたりと照準する。
「おぉー! デカいウサギっス! 撃っていいっスか?」
そこはカワイイ! とか言うところだろ?
いきなり射殺許可を求めるなよ!
「やっちゃいましょう!」
ええっ!? 即決でリンから許可が出た!
お肉としか見ていませんね!?
カワイイよりオイシイを優先している!
二人の女子力は大丈夫だろうか。
まあ、カワイイから倒せないとか言われても困る。
モンスターはモンスターだ。ゴブリンと変わらない。
倒すべき敵である!
「うらっ!」
トウコが引き金を引く。
風に揺れる草の葉を散らし、弾丸が飛ぶ。
「ウッ!」
素早い角ウサギだが、弾丸を避けることなど不可能だ。
一撃で塵となって消える。
「やったっス!」
「トウコちゃんすごーい! 私のファイアボールはなかなか当たらないの!」
ガッツポーズを決めるトウコにリンが称賛を送る。
ドヤ顔で俺のほうを見るトウコ。
「どうスか! 店長!」
「ドヤ顔はむかつくが……よくやったぞ」
「ははっ! ここは最高っスね! 気に入ったっス!」
広い草原と高速で飛来する弾丸。
耐久力の低いウサギは一発で仕留められる。
角ウサギと銃の相性は抜群だ。
……ゾンビと銃は相性が悪かったな。
相性よさそうなのに、罠だなコレは。
「さて、ドロップは……」
俺は分身を出して草むらから小さな宝箱を拾い上げる。
迂闊に踏み込むと巣穴からウサギが飛び出すかもしれないからな。
安全第一!
「前も見たけど、宝箱なんスねー。ファンタジーっス!」
「あー、残念。お肉じゃないですね……これは鉄砲の弾ですかー」
宝箱をのぞき込んだリンは残念そうな顔をする。
オイシクないけど、ゴミじゃないからね!
「そうだな。ここでもトウコの【弾薬調達】は有効だってことだな」
「三発っスね。ゾンビと同じっス。一発で倒せるから弾は増える一方っス!」
トウコは手の中で弾丸をもてあそびながらウハウハだ。
倒した敵のドロップはスキルの効果で弾丸になる。
弾丸不足で悩む心配なし、と。
「でも、肉が手に入らないんじゃね?」
「それは……困りますね?」
晩飯の材料を狩りに来たんだ。
全部が弾丸になっては目的が果たせない。
「うぇっ!? 評価されたと思ったら使えない奴になりそうっス!」
トウコが肩を落とす。
「いや、トウコのレベル上げも大事だからな。デスペナで減った分取り戻さなきゃいけないからさ」
「そうですよね。お肉はそのあとでも……」
でもリンは物足りなげな表情だ。
食欲が顔に出ちゃってる!
トウコがリンにすがりつく。
「チャンスを! あたしにチャンスを! ホントはあたし、できる子なんスよぉ!」
「よーし、残念な子にチャンスをやろう。【弾薬調達】を切れ! スキルはオンオフできるぞ」
【隠密】や【暗視】はいわゆる常時発動スキルだ。
これは自発的にオンオフできる。
草原は明るいので、【暗視】はオフにしている。
トウコの【弾薬調達】も同様のはずだ。
「ええっ!? そうなんスか? いつも弾が足りなかったから考えたこともなかったっス!」
「いつも何も考えてなさそうだけどな!」
アホなだけでバカじゃない。
即断即決が悪い方向に転がることが多いだけ。
状況が違うから、俺みたいにスキルの使い方なんて考える時間がなかっただけだろう。
「そんなことないっス! いつも店長のこと考えてるっスよ!」
「……そーか」
おおう。
油断してたらカワイイこと言いよる!
「わ、私も……」
リンがごにょごにょと何かを言いかけてうつむいた。
うむ。奥ゆかしい。
恥じらう姿は尊いね!
「あたしはいつもやらしいこと考えてるっス!」
「いらんこと言うな! 台無しだ!」
奥ゆかしさのかけらもないね!
リンが赤面して小さく手を上げた。
リンもなの!?
いや、発表しなくていいです!
俺は発表しないよ!?
エロに利用できそうな術ばっかり取ろうだなんて考えてもいない!




