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【四周年】社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
三章 冷蔵庫は無理ゲーで!

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VSボス戦! 肉屋あるいは料理人!?

 食堂に突入した俺たちを見て、奴が()える。


「グォォオオォ!」


 その大音声(だいおんじょう)にびりびりと部屋が震える。


 巨大な体はぶくぶくと()え太っている。

 顔の肉は垂れ下がり、ぶるぶると震えている。


 その醜悪(しゅうあく)な顔のなかで、目だけが赤く爛々(らんらん)(かがや)く。


 巨大な肉切り包丁を掲げ上げ、俺たちをにらみつける。



 最初に動いたのはトウコだ。


「うららららっ!」


 腰だめに構えたリボルバー拳銃を六連発する。

 銃声が響き、弾丸が連続して放たれる。

 鉛の弾が料理人の巨体にめり込み、肉を震わせる。


「くらえ!」


 俺は釘をつかみ出し、まとめて投擲する。

 釘が束となって飛び、料理人の顔面に命中した。

 だが、ほとんどは突き刺さらずに弾かれてしまう。


「グォォォォァ!」


 銃弾と釘をものともせず、料理人が巨体を震わせながら突進する。

 狙いは前に出ている俺だ。


 ――そうだ。俺を狙え!


 俺はさらに前に。奴に向かって走る。


 間近に迫る巨体の迫力は、実際以上に奴を大きく見せる。

 視界いっぱいに広がるプレッシャーをはねのける。


 ギリギリのところで、突進の軌道から逃れるように横へ跳ぶ。


 すれ違う瞬間、奴が肉切り包丁を振る。

 身を(かわ)した俺を追うような斬撃。


 ぶうんと大きな風切り音を立てて俺に迫る。

 胴体を両断しかねないそれを、のけぞり、ひざを折ってその下を滑って(かわ)す。


 目の前を大質量の鉄塊が通り過ぎる。

 包丁にこびりついた肉片やサビすらも見えるほどの距離。


 (ほこり)の積もった床を滑った俺は反転して立ち上がる。


 俺を見失ってきょろきょろと探す背中へと呼びかける。


「おい、こっちだ! ノロマめ!」

「グァ?」


 間抜けな顔をさらして、奴が振り向く。

 そこへ走り寄り、力いっぱい鉈鎌を振り下ろす。


 狙いはその顔面。

 (したた)かに打ち付ける――


「なにっ!?」


 ――だが、手ごたえがおかしい。


 顔面を砕くはずの一撃は、弾かれたような手ごたえを受けて()らされる。


 まるで空気の(まく)(はば)まれたかのようだ。

 これは――。


「グォアッ!」

「ッ――!」


 振り向きざまに振るわれた一撃を、背後に飛んで(かわ)す。

 振り下ろされた肉包丁が床をえぐり、砂埃(すなぼこり)が舞う。

 俺は着地してさらに距離を取る。


 これは――この感触はストーカーと戦った時と同じだ。


 ダメージはないのか!?

 攻撃は通らない……?


 (ほこり)の向こうでは料理人が揺らぎもせず立っている。

 まさか、無傷か!?


「――効かない、だと?」

「店長! 効いてるっスよ!」


 トウコが二丁の拳銃を抜いて銃撃する。

 巨体の背に命中した弾丸によって、血しぶきが舞う。


 効いている。

 少なくとも血は流れる。


 よく見れば、俺の一撃も頭部に傷を残している。


「――トウコ! こいつには防御力がある! それとたぶん、()()()()()()()()!」

「ただ頑丈なだけじゃないっスよねえ、やっぱり!」


 ステータスによるものか、スキルによる防御性能を持っている。

 おそらくはヒットポイントのような耐久力もある。

 空気の膜のように感じられるものがそれだ。


 確かに命中したはずの攻撃が、()らされるような感覚。

 切ったはずが切れていないと感じる。


 ただのゾンビとは違う。切っただけでは死なない。

 銃弾を撃ち込んだだけでは塵にならない。


 だが、傷は与えられる。

 不死身の怪物というわけではない!


頑丈(がんじょう)だが、倒せるぞ!」

「そうっスよね! 死ね死ねッ! 死んじまえっ!」


 さらに放たれた弾丸が料理人の背中に着弾する。

 奴が振り返り、トウコへ向けて走り出す。


「グォォォォ!」

「――やばっ!」


 料理人が突進する。

 トウコが(あわ)てた様子で飛び込むように横跳びする。


 トウコが立っていたその場所を、料理人が通り過ぎていく。


 トウコは前回りするように着地しながら、両手の銃の引き金を引く。

 オートマチック拳銃が火を噴く。

 排出された空薬莢(やっきょう)がくるくると宙を舞う。


 弾丸が命中し、小さな血の花が咲く。

 だが、料理人はひるまない。

 床を蹴って反転し、トウコへと突進する。


 トウコは着地したばかりだ。

 驚きの表情を浮かべるが、動けない。


「しまっ――!」

「――入れ替えの術!」


 術を発動し、トウコと俺の位置を入れ替える。

 視界が切り替わり、俺のすぐ近くに突進する料理人が迫っている。


 術後のわずかな硬直……位置が変わったことによるわずかな感覚のズレ。

 ごく短いその時間すらも致命的だ。


「店長!」

「うおおっ!」


 足に力を込めてその場を跳びのく。


 【歩法】が俺の体に尋常(じんじょう)ならざる推進力を与える。

 【回避】が示す安全圏へと押し上げる。


 それでも、突進の軌道から完全には逃れることができない。

 料理人の巨体が俺をかすめる。


「ぐあっ!」


 強い衝撃。

 俺は大きく弾き飛ばされ、宙を舞っている。

 脳が揺らされ、視界がぶれる。


 どちらが床でどちらが天井だ……?


 俺はきりもみ回転しながら床に叩きつけられる。

 叩きつけられながらも受け身を取って、転がって奴から距離を取る。


 俺は頭を振って立ち上がる。


「――っつう!」


 視界が揺れる。体がふらつく。

 全身から鋭い痛みがする。

 にじんだ涙が視界をぼやけさせている。


 だが、骨は折れていない。

 まだ立てる。まだ戦える。


 ――だから動け! 俺の体!


 それでも頭はぼんやりとして、足には力が入らない。



「こっちっスよ! 化け物め!」


 トウコが声をあげ、銃弾を浴びせかける。

 料理人は肉切り包丁を体の前に盾のように構えて、それを防ぐ。

 金属がぶつかり合う耳障りな音をたてる。


 両手の銃のスライドが後退して、ガチャッと音をたてる。

 トウコが両手の銃を投げ捨てながら叫ぶ。


「弾切れっス!」

「――こっちだ、化け物!」


 俺は武器を構えて叫ぶ。


 意識はもうハッキリしている。

 トウコが稼いでくれた時間で体勢を立て直すことができた。


 まだまだ戦える!

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― 新着の感想 ―
[一言] 心不全で死にかけてたぜ…
[一言] ボスモンスター特有のヒットポイントをゲージ表記したライフバータイプってことなのかな? 他のザコは特定箇所に命中で死亡判定するのに対して どこにあたってもすぐには死なないし欠損して動きが鈍るこ…
感想一覧
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