死に戻り二周目! 最速攻略を目指そう!
エントランスホールにゾンビが現れる。
最初と同じだ。
攻略は振り出しに戻った。
俺にとっては二回目の冷蔵庫ダンジョンの攻略がはじまる。
トウコにとっては何度目になるんだろう……。
だが、前回とは違う。
俺はここのルールをいくらか学んだ。
トウコのやる気も持ち直した。
俺の手にはキッチンで手に入れた包丁がある。
武器があるのは大きな違いだ。
「今回の作戦はどうするっスか?」
トウコが銃を出しながら言う。
さて、どうしようか。
「そうだな……。今回は俺がメインで戦う。トウコはまず弾丸を稼げ。銃弾を使わずに撃破するんだ」
「リョーカイっス!」
俺は敵を瀕死まで削る。
撃破はトウコの役割だ。
通路からゾンビがでてくる。
一体だ。たしかこのあと、さらに二体来る。
「こいつらは俺にまかせておけ。トドメ用に花台を持て」
「りょ!」
俺は包丁を手に、ゾンビへと向かう。
ゾンビはよたよたとエントランスを向かってくる。
その歩みは遅い。
一ウェーブのウォーカーはこんなもの。
養分だ。経験値や弾丸に見えるぜ!
ずっとこうならいいんだけどな。
「ウ……アア……」
「おらっ」
俺はすれ違うようにゾンビの首を切り裂く。
倒さないように切るのは、逆に難しいな。
前のめりに倒れるゾンビを残して、さらにエントランスを進む。
通路から出てきたゾンビの腕をつかみ、エントランスの中央へスイングする。
よたよたと数歩歩いて、ゾンビが倒れる。
次のゾンビが俺に腕を伸ばす。
その腕をナイフで切りつける。
ひじのあたりを深く切り裂き、手がぶらりとたれさがる。
そのまま後ろに回り、背中を蹴りつける。
吹き飛んだゾンビが、さっきスイングしたゾンビの上に重なる。
「手際いいっスねー! ていっ!」
トウコが花台を振り下ろし、トドメを刺していく。
これで弾丸は九発。一発も撃たなかったので大幅増だ!
「次は二階で靴と服をゲットするぞ!」
「リョーカイっス! 前回と同じルートっスね!」
俺は階段を駆け上がる。
二階からゾンビが来るはずだ。
こいつは勝手に階段を落ちるはずだが、待っている暇はない。
どんどん倒して、物資と経験を得る。
二階をふらふらと歩いているゾンビの背後に忍び寄る。
蹴りが膝を砕く。
俺はそのまま先へ進む。トウコがトドメを刺す。
ドアを抜け、廊下へ。
廊下に敵はいない。
「ランナーが出ないな?」
「二ウェーブから出るから、まだっスね」
前回は二階からランナーが現れたが、今はいない。
まだ一ウェーブだ。
前回は情報収集のための会話で時間を食っていた。
今回は最速で鏡部屋、衣裳部屋までいく。
「よし、ここにも敵はいない」
「後ろもクリアっス」
俺は前回と同じ装備に着替える。
手早く、ブーツを上着を身に着ける。
トウコは衣装を前に、迷う様子を見せている。
「うーん。今度はこっちの赤がいいっスかねえ」
「はよせい」
急かすとトウコも前回と同じ装備に身を包んだ。
「店長、オシャレタイムもとってほしいっス!」
「んな時間あるか!」
いかに早く装備を整えるかが攻略の成否を分ける。
「前回は店長の質問攻めが長かったんじゃないっスか」
「たしかにそうだが、必要なことだ!」
前回は、俺が初挑戦だった。
今回はおしゃべりは少なく済む。
前回の四ウェーブは、かなりギリギリだった。
次は余裕で越えるようにしたい。
そうでなければその先、五ウェーブが突破できない。
「そういえば店長のレベルって今いくつっスか? あたしは2レベル上がって1下がったんで、今5っス!」
「え? お前レベル5!? 低すぎない? そんなレベルでこの激戦を戦ってんのか!?」
トウコのレベルは想定よりもずっと低い。
なんとなく俺と同等だと思っていた。
銃の扱いは熟練して見えるし、戦闘で臆することもない。
「えっ? 低すぎるっスかね? 死ぬと下がるからなかなか上がらないんスよねー。調子いいときでも8までしか上がったことないっス!」
前回はレベル4から始まって、寝室の四ウェーブではレベル5だったんだろう。
その後、もう一つレベルを上げてから死んだ。
かなり、デスペナルティの蓄積が進んでいるな。
低レベルだとレベルは上がりやすい。
ということは、死んだ場合の下げ幅も大きくなるのか……?
逆にレベルが高ければ、レベルアップに必要な経験値は高くなる。
死んだ場合のレベル低下も小さくなる、のか?
デスペナルティで失う経験値……レベルの低下はどの程度なんだろう。
死んで蘇るとき、なにかを失う実感があった。
あれが、デスペナルティだろう。
ただゲーム的な経験値を失うだけではない。
あれはもっと、嫌なものだ。
自分の一部をもぎ取られるような感覚。
なんとも言えない感覚だ。歯が抜けたような喪失感とでもいうか。
自分がすり減るような、心がささくれ立つような感じがする。
「ちなみに俺のレベルは13だった。今は……。あれ? 死んだけど下がってない?」
ステータスウィンドウで確認する。
ダンジョンに入ってすぐ確認すべきだったな。
レベルが下がるという経験がないので、クセがついていない。
今のレベルは13だ。未使用のスキルポイントも6ある。
これは今日の朝練後と同じだ。
……朝の出来事が遠く感じられるな。
「13! さすがっスね! 朝からダンジョンに潜る変態なだけあるっス! レベルが下がってないなら、たぶん死ぬ前にレベル上がってたんスよ」
「ヘンタイじゃねーわ! そうか。レベルが上がって下がったのか……。まあ、悪くないな」
俺はヘンタイではない。
――この誤解は、解かずにおこう。
トウコは俺を頼りにしている。
死に慣れている熟練のダンジョン探索者だと思っている。
それでいい。そう思ってくれていい。
トウコは俺のダンジョンも同様のルールか、似たものだと勘違いしている。
俺のダンジョンは、こんなにハードではない。
俺は死んだりケガをしないように、安全第一をモットーとする攻略をしてきた。
俺は、朝からダンジョンに入って毎朝死んでいるヘンタイではない。
死をいとわずにダンジョンに潜る迷宮ジャンキーではないのだ。
まさか俺が死亡処女だったとは思うまい。
これでいい。勘違いのままでいい。
トウコが俺を頼りにしてくれなくては困る。
諦めさせてはいけないのだ。
死んで衝撃を受けた姿……吐きそうになったり逃げようとした姿は、見せていない。
弱気は見せない。
強がって、突っ張って、頼りがいのある俺を演じる。
「よし、次は寝室へ行くぞ!」
「リョーカイっス!」
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