新素材は夢が広がります!?
七階層を引き上げて、六階層へ戻ってきた。
「さて、帰りも気を抜かずに行こう!」
「おう!」と自律分身。
「はい!」とオトナシさん。
階段に余剰の装備を置いていく。
毎度おなじみ、補給地点の作成だ。
次回はここに七階層への対策アイテムを用意して来るつもりだ。
トゲの罠、クモの巣……。
様子はわかったので、対策を考えなきゃな。
あとは帰るだけだが……。
「お、宝箱が復活している。あ、開けないでね。罠あるから」と俺。
「基本的に俺のダンジョンは固定配置だ。宝箱も同じ位置にある。中身も固定。ということは、罠も同じはずってわけだ」と自律分身。
ダブル解説の術!
「へえ……そうなんですねー。じゃあ、この宝箱はどうするんです?」
「もちろん回収する。分身の術を出して、遠くから開ける。そうするとこの左右の部屋からゴブリンが二チーム飛び込んでくる、ハズだ」
「もうゴブリンもリポップしてるんじゃないかな。そいつらを倒して、宝箱回収だな」と自律分身。
タネが分かっている罠やしかけは対策も簡単だ。
俺は麻痺毒を塗ったマキビシをゴブリンの出てくるドア前にバラまく。
「私はどうしたらいいですか?」
「さっきみたいに、目と耳を塞いで閃光と轟音の罠をやり過ごす。そのあと、ドアの外からファイアボールをどーんとぶち込んでくれたらいい」
「わかりました!」
作戦は以上!
分身を宝箱前に配置して、全員で距離を取る。
宝箱を開けると、想像通り……罠が発動する。
離れていても激しい閃光と轟音が響く。
でも、目も耳も無事。
十分距離を取ったからな。
宝箱の罠部屋に戻ると、マキビシを踏んでゴブリン達が大騒ぎしている。
そのあとは消化試合だ。
三人がかりで麻痺しかけているゴブリンを倒すだけの簡単なお仕事だった。
「ここ、いい稼ぎ場になるな!」と俺。
「最初はひどい目に遭ったけど、逆にいい場所になりそうだ」と自律分身。
「なんか、拍子抜けしちゃいますねー」
固定配置で、敵の数も固定されているのがいい。
普通のゴブリンは部屋を移動……徘徊する。
だけど、この部屋は罠と連動しているみたいだ。
ずっと放置するとゴブリンが移動するかはわからないが……。
俺達は魔石を回収して六階層を後にした。
道中、敵を狩りながら進む。
自律分身の効果時間が消えたところで狩りは終了した。
二人で二階層のモノリスまで戻ってきた。
「さて、お楽しみの引き換えタイムだ!」
「晩ごはんを出すんですね!」
「いや、違うよ!? 七階層で手に入れたクモの魔石を引き換える!」
「あっ! そっちですか」
晩ごはんも出してもいいけども。
まずは、新階層のお宝である!
「クモの魔石を投入っ!」
俺は魔石をモノリスに投げつける。
魔石はモノリスの表面から、ゆっくりと吸い込まれる。
残ポイント
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アミグモの魔石:1(増加)
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「へえ。あのクモの名前はアミグモか」
「網のクモ、ですか。クモの巣を張るからでしょうか?」
「名前的にはそうっぽいね。クモの巣を張らないクモもいるらしいよ」
「そうなんだ……。ゼンジさん詳しいですね。私はムシは苦手ですー」
そうだろうな。虫に詳しい虫女子なんてレアだ。
……虫に詳しい男子もアレだけど。
俺はコウモリや蛾を調べたときにクモもちょっと調べたので詳しいんだ。
あとでもっと、クモについて調べておこう。
現実のクモとファンタジーのクモが同じとは限らないけど、ある程度は似ているはずだ。
コウモリだってそうだったしな。
「では、交換できるアイテムはっと!」
モノリスを操作する。
『交換したいアイテムを選択してください』
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アミグモの魔石:1
1:クモの肉、クモの糸
2:クモの粘着粘液、クモの毒腺
1:汎用ポイント1
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「お、引き換え素材はよさそうだぞ!」
「クモの肉かあ……食べたくないですね」
オトナシさんがガッカリしている。
さすがにゲテモノには手を出さないんだな。
俺も無理にクモ肉なんて食いたくない。
ゴブリンもコウモリもイヤだ!
俺のダンジョンのモンスターはゲテモノしかいないのか!?
「いや……食べるなら別のにしようね。汎用ポイントの食料で。さっきの食パンならリュックに残ってるし。ってか、家かオトナシさんのダンジョンで食べるほうがいいかな」
「そうですねー。じゃあ、今日はおウチで食べましょう!」
「そうしよう」
おっと、脱線した。
「魔石は一つしかないから、クモの糸の一択だな! 交換!」
モノリスからクモの糸を取り出す。
束ねられた糸のカタマリだ。べたつきはない。
「あれ? 手にくっつかないんですね」
オトナシさんが手に持ったクモの糸を不思議そうに見ている。
「うん。クモの糸はベタベタしない。あとからベタベタ成分をクモが糸にくっつけてるらしいよ」
「へえー! そうなんですかー!」
クモが塗りつける粘液が粘着性を持っている。
ちなみにクモの巣でべたつくのは横糸だけ。
横糸だけ粘液を塗りつけているんだ。
クモが歩くのは縦糸だから、こっちはべたついていない。
「これは……素材に使えそうだな。糸……ワイヤーに加工すればいろいろとできそうだ」
作りたいものがいろいろと浮かんでくるな。
「なんかゼンジさん、楽しそうですね!」
「武器でも防具でも加工できそうだ。俺の装備にワイヤーは重要なんだ。ほら、このワイヤー帷子は現実の素材で作っているけど、クモの巣を参考に編んで強度を高めているんだけど……」
俺はクラフトした防具やワイヤー分銅について説明する。
ちょっと、マニアックというか細かい話になっちゃうな。
オトナシさんは俺の話をうんうんと楽しげに聞いてくれる。
「ずいぶん工夫しているんですねー!」
「というわけで、このクモの糸は期待の素材なんだ!」
「ゼンジさんは、クモの糸があると嬉しいですか?」
「そりゃ、嬉しいね。トウコの件が片付いたらしばらくクモ狩りしようかな」
「……それなら、今度は私も戦えるように頑張りますね! 素材集めましょう!」
「それは助かる! 火魔法ならクモは相性バッチリだと思う!」
オトナシさんはムシが苦手だ。怖いものやグロいものに耐性がない。
強くなることや戦うことを好むわけでもない。
それなのに、俺を手伝うために奮起してくれている!
ダンジョン攻略という俺の趣味。
俺の生きがい。ライフワークだ。
これを理解してくれる。
こんなに嬉しいことはない!
ちなみにクモはムシではありません。でも益虫扱い。
脚の数とかで分類が分かれているようですね。昆虫の脚は六本。




