不気味の谷を越えていこう!?
昨日は二話更新しました!
たまにクロウが敬語になるのは、そのほうが話しやすいから。
敬語で話したほうがしっくりくるけど、なるべく敬語を抜こうとしている段階です。
地の文……クロウの思考で「オトナシさん」が「リン」になったりするのも同様。
混ざってくる感じですね。
読みにくかったらすみません。
地図を確認しながら、未踏破部分を埋めていく。
何度かの戦闘はあったが、苦戦はない。
初手で厄介な敵を魔法で潰し、あとは各個撃破する。
連係も深まってきて、いい感じだ。
目的地は前回苦戦した、宝箱の罠の部屋だ。
十字路のように四つのドアがある部屋だから、調べ甲斐もある。
昨日は引き返したので、先にはまだ行っていない。
六階層の未踏破エリアも減ってきたので、この先に次階層への階段がありそうだ。
「ちょっと止まってください。マキビシがあるので」
「えっ!? ……あっ、ホント! これは、踏んだら痛そうですね!」
前回、逃走時に撒いたマキビシを判断分身に回収させる。
単純な作業なら、自分でやるよりも早いし正確だ。
条件だけ与えておけば頭を使わずスイスイ動く。
「へえ……機械みたいに動くんですねー」
「これは判断分身の術というスキルで、条件通りに動きます。痛みも感じないし、何も考えていません。今はマキビシを拾って袋に入れろ、と命じてあります」
無表情で的確に動く様はロボットのようでもある。
ちょっと不気味だ。
条件その二に笑顔で条件一の作業を続けると命令してみる。
「あ、笑いました! けど、なんだか……」
「笑顔を条件に加えてみたけど……なんか不気味になったなぁ。動かない笑顔コワいわ!」
「笑った顔のまま固まってるからですかね……。なんか……ヘンです!」
表情が笑顔で固定される。それでいて素早く作業している。
呼吸も表情の揺らぎもないので、人間のようでいてそうでない感じが強まる。
不気味の谷ってやつだな。
人に似ているけど人間じゃないと、違和感がスゴイんだ。
うーん。表情を与えるのはやめよう!
一人の時は鼻水の垂れた分身だろうと気にならなかったけど……見た目を気にしないといけない。
次から分身を出すときはマスクを装着したイメージにしよう。
俺もオトナシさんもダンジョン内ではマスクをしない。
本気で隠密したいときや毒や目つぶしを扱うときだけだ。
運動するには息苦しいからね。
アパートの外へ出るときはマスクをする。
パンデミックが収まる様子はないけど、ダンジョンの中は関係ない。
明日はトウコとの約束があるから、マスクして外出しなきゃな……。
「さて、この先は前回ちょっと苦戦した場所なので注意していきます。宝箱はまだ復活していないはずだけど、開けるとまぶしい光と大きな音が鳴ります。周辺のモンスターが集まってくるしかけのようです」
「すごく危なそう……無理しないようにしましょうね!」
「今回はリンが居るから大丈夫。罠ももうないし」
マキビシを集め終わった判断分身は棒立ちに戻る。
集めたマキビシの入った袋を受け取る。
俺は背負っていたリュックサックを判断分身に渡す。
荷物からトンファーを取り出して、判断分身に持たせる。
「よし。判断分身に新しい命令だ。――リンに追従して、リンを守れ!」
判断分身がリンの前に進み出て、トンファーを構える。
命令があいまいでも、イメージを持って命じればある程度は動く。
最初は「近づいてくるモンスターを攻撃」のように具体的に命令していた。
これも【判断分身の術】を使い込んだ練習の成果だ。
そして、リンの発想――認識で強くなる魔法の実例を間近で見た影響だ。
いい影響、刺激を貰っているんだ。
こういう気づきは一人では得にくい。
一人で考え込んだって、こうはいかない。
やっぱ二人プレイは最高だ!
「分身さんが守ってくれるんですね! じゃあ……壁を壊して助けに来てくれた時の顔でお願いします!」
表情のリクエスト!?
助けに来ましたよ。オトナシさん! の顔だろうか……。
そのあとストーカーにボコられるとも知らずに、必死に助けに行ったときの顔……。
黒歴史である。
……笑おうとしてひきつった感じだっけ。
正確にイメージできないし、恥ずかしいし……。
「……いや。思い出せないし、命令は二枠しかないのでムリ! 変顔で固定とか罰ゲームすぎるし!」
「ええっ!? 私はいつでも思い出せますよ! すごく……格好いい!」
オトナシさんが虚空を眺めて目をとろんとさせる。
今思い出してるってこと!?
恥ずかしいからヤメテ!?
でも、いつでも思い出せるっていいなぁ。
俺も脳内録画機能欲しい……。
「さて、気を取り直して……引き締めていこう。この部屋を抜けて、通路を抜けたら宝箱の部屋だ」
「はい!」
俺は通路に入って様子を窺う。
この通路の松明は回収済で、廊下は暗いまま。
松明はまだ復活していない。つまり、宝箱も同じはず。
モンスターの湧き直しもまだかもしれない。
通路は異常なし。敵もいない。
宝箱の部屋の前まで来た。ドアは閉まっている。
オトナシさんと小声で打ち合わせる。
「前回、ここに居た敵は倒したけど、迷宮内のモンスターは固定配置とは限らない。部屋を巡回している場合もあるから、慎重に行こう」
「はい」
そっとドアを開ける。
室内は無人。誰もいない。
宝箱も開いたまま。罠も作動しないはずだ。
「よし、オーケー。部屋に入ろう」
「ドキドキしますね……」
俺もこの部屋にちゃんと入るのは初めてだ。
前回は入ってすぐ宝箱から離れるためにドアの外へ退避したからな。
……それでも罠の閃光と轟音からは逃れられなかったわけだが。
フラッシュバンとスタングレネードみたいな凶悪な罠。
いっそ爆発や弓矢みたいな殺傷罠のほうがやさしいわ。
「よし、異常ナシ。ほかの三つの扉も閉まってるな」
「前回は開いてたんですか?」
「わからない。俺はすぐ視力と聴覚を罠で奪われたから……自律分身は中をのぞいたはずだけど混乱していて覚えていないな」
ゴブリンは律儀にドアを閉めて移動するのか?
そんなことする奴らじゃない。
ダンジョンのドアは自動的に閉まるんだろうか……。
ハイテク……いや、ファンタジーか。
ボス部屋のドアも自動ドア感あるしな。
入ってきたドアのほかに三つのドアがある。
さあ、どれを開けようか。
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