大船に乗ったつもりで!
二十四階層へ到着した。
まず湖前の敵を蹴散らし、安全を確保する。
「よし、敵は倒したな」
「コウモリ撃墜王にお任せっス!」
「見える範囲にゴブリンさんも、火トカゲさんもいませーん」
これで安全に出航できる。
俺は熱水の地底湖に近寄り、船を収納から取り出す。
「これが忍具作成で作った船だ。
テスト航行は済んでいるから、安心して乗ってくれ!」
熱水に浮かぶ小舟を見て、リンがパンと手を合わせる。
「わあーっ!
素敵な船ですね!」
「三人で乗るにはちょっと狭いけどな!」
「じゃあ、大船に乗ったつもりで乗るっス!
とうっ!」
トウコが船に飛び乗り、盛大に水しぶきが上がる。
とうっ、じゃねえ!
「無茶するな!
湯がはねるわ!」
まだ説明の途中だし!
俺はバックパックからライフジャケットとポンチョ取り出し、二人に手渡す。
「これを着て乗り込んでくれ。
スピードを出すと、熱水が降りかかるからな」
トウコがぐらぐらと揺れる船の上で着替えようとする。
ポンチョが頭に引っかかって、前が見えていない。
危なっかしいやつめ……。
「うー、揺れて着替えにくいっス!」
俺は【操水】で揺れを収める。
「まだ乗るのは早いんだよ!
いったん降りろ!」
「でも、もう着替えたっス!」
へへっと笑うトウコに、俺は苦笑を返す。
「いったん降りてくれ。
乗る順版は決まっているからな」
トウコが船から岸に飛ぶ。
「あたし、先頭がいいっス!」
俺はゆっくりと首を横に振る。
「いや、先頭はリンでなきゃダメなんだ。
トウコは真ん中で、俺が最後だ」
「ゼンジさん……。
どうして、その順番なんですか?」
リンが不思議そうな顔で……。
いや……違う。
そこに浮かんでいる表情は、不満か。
トウコが気を利かせたような顔で言う。
「あー。
あたし、一番後ろでもいいっスよ!」
「いや、順番は変えない」
俺は真面目な顔で続ける。
「先に断っておくけど、先頭が一番危険なんだ。
盾を構えて、俺たちを熱湯から守ってくれたら嬉しい」
船に風防をつける余力はなかった。
収納の枠ぎりぎりのサイズだから、余分な機能はつけられない。
船の内側は、座るための横板があるだけ。
極めて簡素な作りだ。
もちろん、シートベルトのような安全器具もない。
リンが表情を和らげ、頼もしく言う。
「そういうことなら、任せてくださいっ!」
「それじゃあ、あたしは真ん中の一番おいしい席っスね!」
トウコがへらへらと笑う。
「おいしいかどうかはさておき、トウコはリンをしっかり支えてくれ。
盾を構えて手が塞がるから、不安定になるはずだ」
トウコがしゅたっと敬礼する。
「りょ!
あたしがリン姉を支えるマストになるっス!」
「よくわからんが、頑張ってくれ。
俺が最後に乗って、水忍法を背後に放つ」
「店長がエンジンっスね!」
「スピードを出すから、舌を噛まないようにな。
敵がいても無視して振り切る。
攻撃はしなくていいぞ!」
波の少ない湖でも、それなりに揺れる。
スピードを出すと、小波でも船が持ち上がって跳ねるほどだ。
銃や魔法の狙いをつけたり、刀を振るのは難しい。
二人が笑って応える。
「はーい!」
「リョーカイっス!」
「では、出航だ!」
俺たちは船に乗り込んだ。
いざ、対岸へ!




