ハイブリッド幼女、最強説!?
散らばった魔石を拾っていると、リンが話を切り出してきた。
「あの、さっきの話ですけど……。
シズカちゃんのスキル、気になりませんか?」
「たしかに面白いスキルだよな。
音だけじゃなく、認識阻害に似た効果もあるようだし」
トウコが腕を組んで、したり顔でうなずく。
「スナバんとは名コンビっスね!
さすが、幼女とおっさんは鉄板の組み合わせっス!」
おっさんて。
それほど年ではないが、トウコから見ればそうなるか。
俺はトウコに言う。
「シズカちゃんの能力なら、トウコの銃声も消してくれるかもな」
音だけでなく、相手の意識すら沈静化する能力を持っている。
公儀隠密の活動を一般人に見られた時、小さな負担で沈静化できるのだ。
「あたしと幼女も鉄板の組み合わせっスよ!」
「そうだな。
トウコの騒がしい性格もおとなしくなるかもしれん」
トウコがぶんぶんと首を横に振る。
騒がしいヤツ!
「うぇー!?
あたしの長所が死んじゃうっス!」
長所だと思ってるのか……。
まあ、必ずしも短所ではないよな。
リンが頬に手を添えて、言葉を選ぶように続ける。
「効果もそうなんですけど……。
私が気になっているのは、強さなんです」
「強さ?
どういうことだ?」
確かに強力なスキルだが……。
「シズカちゃんは、レベル上げが必要だったんですよね?
それに、自分のダンジョンは取られちゃって、手元にないって言ってました。
それなのにどうして、外でスキルが使えるんですか?」
「む……。
言われてみれば、確かにそうだ」
「うぇ?
何かヘンなんスか?」
シズカちゃんはスナバさんに保護される前は、地獄にいた。
子供をさらい、拷問するような連中に囚われていたのだ。
その環境がダンジョンを生み出す。
そうして、シズカちゃんのダンジョンは奪われた。
つまり、シズカちゃんは自分のダンジョンが手元にないのだ。
いや、そもそも最初の時点でどうしてシズカちゃんは地獄の施設で無事に生き永らえたのか。
スナバさんが発見するまで、能力で隠れていたと聞いた。
つまり、初めから能力を使っている。
レベル上げなどしていないのに、だ。
「シズカちゃんは自分のダンジョンでレベル上げなんてしていない。
それなのに、初めからスキルを使って隠れていた。
【探知】や【追跡】を持つスナバさんだから見つけられたんだよ」
「あー、最初っから強かったってことスか?」
リンがポンと手を合わせ、大きくうなずく。
「そうなの、トウコちゃん!
そうじゃないとスキルが使えるのは変でしょ?
私が気になっていたのはそこなの!」
「でも異能者じゃないんスよねぇ……。
うーん、これは難しいっス!」
「シズカちゃんはダンジョンに入れたし、異能者ではないはずだな」
異能者は、生まれつき特殊な力を持つ人間だ。
ダンジョンシステムとは無関係に力を行使できる。
御庭やキリト、白銀などが異能者だ。
彼らは普通のダンジョンには入れない。
入る以前に、転送門を見ることもできず、触れもしない。
この点について御庭は、波長が合うとか、資格があるか、と説明していたな。
ダンジョンを持つものしか、ダンジョンには入れない。
悪性ダンジョンは現実世界に向けて広がっているので、また別なのだが。
リンが考え込むように言う。
「もしかしたらですが……。
シズカちゃんはダンジョン保持者で、さらに異能者なのかもしれません」
俺は顎をさすり、考える。
「ふーむ。
異能者がダンジョン保持者になる……?
そういう話は聞いたことがないな」
「そう、ですよね……」
リンが肩を落とす。
間違っていると決まったわけじゃない。
これまで聞いたことがなかっただけのこと。
「いや、よく気付いたな、リン!
そういうことも、あり得るかもしれないぞ!」
「そ、そうですよね!」
リンがうれしそうに笑う。
ダンジョンは、この世界に選ばれなかったものがなる傾向にある。
世間との繋がりが薄いとか、この世に絶望したとか、そんな人々だ。
俺やリンやトウコも、おおむね当てはまっている。
誘拐組織が子供を虐待していたのも、これを狙ってのことだろう。
誘拐して孤立させ、虐待して絶望させる。
こうしてダンジョンを呼び込むのだ。
しかし、もともと異能者だった場合はどうなる?
本人すら気づかない、潜在的な異能者だったら?
異能者でありながらダンジョンを持っても、おかしくはない。
トウコがウキウキした表情で言う。
「てことは、ハイブリッド戦士っス!
もしかして、シズカちゃん最強っスか!?」
「かもしれないな。
あとでスナバさんや御庭と話してみよう!」
「はいっ!」
トウコが決意の表情で言う。
「あたしも異能を身につけて、ハイブリッドになるっス!」
「どうやったら異能が身につくんだよ!?」
「そこはほら、いざとなったら覚醒パワーアップっスよ!」
「それこそ、漫画でしか聞いたことのない話だよ!」
さすがに、そんな都合のいい話はないと思うぞ。
さて、そうこう言っている間に二十四階層に到着したぞ!
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