ギリギリセーフでストライク!
リンが草原ダンジョンの転送門から現れた。
「やっとお仕事終わりましたー」
「今日は動画の撮影だっけ?
どうだったんだ?」
モデルとしての動画撮影だと聞いていた。
リンが少し困ったように笑う。
「今日もお着替えの動画でしたー。
ボタンがすごーく多い洋服があって、大変でした!」
「それは……大変そうだな」
ボタンが多いって?
どんな服なんだ?
……あとで動画をチェックしよう。
最近はハルコさんが動画編集や企画を手伝ってくれている。
動画配信者リンネとして、人気上昇中なのだ。
「まだお洋服は手元にあるので、着てきましょうか?」
「いや……うん。
ちょっと見てみたいな」
別に断る理由はなかった。
「では、少し待っててくださいね!」
リンはぱたぱたと走って転送門から部屋へ戻っていった。
しばらくして、着替えたリンが出てきた。
「ど、どうでしょうかー?」
リンがはにかむように笑って、その場でくるりと回る。
「これはまた……ほんとにボタンが多い服だな。
うん……似合ってるよ!」
第一印象はそのまんま。
ボタンだらけのストレッチニットのドレスだ。
体の横側を大量のボタンで留めて、そこがスリットのようになるデザイン。
なかなか攻めたデザインの服だな。
奇抜すぎずおしゃれ感があるのは高級ブランドのセンスか、リンのスタイルのおかげか。
リンが嬉しそうにスカートの裾をつまんで見せる。
「ふふっ。
気に入ってもらえたならよかったです。
これ、買い取っちゃおうかなー」
服を紹介する案件らしい。
衣装はレンタルだが、気に入れば買い取ることもできるとか。
俺はまじまじと服を見る。
「しかし、すごい数のボタンだな。
今回も早着替えの企画か?」
「はい、そうなんです。
ハルコさんがどんどん難しい服を選んでくるので……。
この服は、ちょっと間に合いませんでしたー」
えへへ、と恥ずかしそうに笑うリン。
なにっ!?
服のボタンを留めるのが間に合わなかっただと!?
「……生放送じゃないよな?」
「あっ、もちろん大丈夫ですよ!
間に合わなかったといっても、服はちゃんと着れていましたし!
ハルコさんがうまく編集するって言ってましたし!」
リンネの動画は露骨なエロや露出はなし、という方針だ。
ハルコさん、たまに調子に乗るからな。
よくよくチェックし……。
じゃない!
よーく、言い含めておかないとな!
しかし気になるな。
時間制限のある中で、服を着る企画とは……!
なかなか刺激的じゃあないか!
「間に合わなかったけど、着れたのか。
……どんな感じだったんだ?」
心の声が外に漏れ出ているっ!
隠密失敗だ!
リンが顔を赤くして聞き返してくる。
「ええっと……見たいですか?」
「見たい」
即答した。
断る理由はなかった。
リンがこくりとうなずき、無言でボタンを外していく。
白い指先が、ゆっくりと繊細に動き、ボタンを外す。
ぴったりと閉じられていた服の側面が緩み、肌がのぞく。
草原の柔らかな日差しに、白く美しい肌がちらりと覗く。
ボタンがさらに外れていく。
少したどたどしい指先の動きは、まるで俺を焦らしているかのようだ。
ボタンが一つ外れるたび、生地にかかるテンションが強まる。
ニットの生地が引っ張られ、伸びていく。
ロング丈の足側はすべてのボタンが外れ、すらりと長い脚が覗いている。
俺の視線は魅惑の脚線美に釘付けだ。
リンが上気した恥じらいの表情で言う。
「こ、こんな感じでした。
これならギリギリセーフ、ですよね?」
その上目遣いは反則だぞ、リン君!
胸や腰などの大事な部分はカバーされている。
ここまでの露出度はリンの基準でもセーフらしい。
しかしこれは……ギリギリ。
「セーフと言えばセーフだ。
いや、かなりストライクだな!」
ちょっと、自分で何言っているのかわからんけど!
あと一つ二つ外してもセーフかもしれないな。
ちょっと試してみよう。
自重する理由などない。
なにしろセーフだからな。
安全であり、オッケーってことだ。
俺がリンの服に手をかけようとしたその時――
「ただまーっス!」
トウコが通学カバンを振り回しながら帰ってきた。
「おう、おかえり!」
俺は即座に何事もなかったような顔で振り返り、さりげなくリンを体で隠す。
別に隠すようなやましいことはしていないんだけども!
少し遅れてリンが焦った声で言う。
「と、トウコちゃん!
おかえりなさーい!」
トウコが俺の横を回り込むように、リンをのぞき込む。
「なんかオシャレな服っスね!
これからお出かけでもするんスか?」
「ううん。
今日お仕事で着た服なんだー」
そういうリンのボタンは、しっかりとめられている。
一瞬で何個のボタンを留めたんだ……!?
さすが【モデル】の【早着替え】……!
「へー、そうなんスか。
にしても、リン姉が着るとどんな服でもエロく見えるっスね!」
直球!
「そ、そうかな?
どうでしょう、ゼンジさん?」
いや俺に聞くなよ!?
「よく似合ってるよ!
それはそうと、新しい忍具を作ったんだ。
ちょっと見てくれないか」
俺は露骨に話題を変え、本題に入るのであった。
さあ、カイロと湯沸かし器をお披露目するぞ!




