燃える行動と、燃えない盾!
リンが驚いた顔で一匹目の火トカゲを指差す。
「あっ!」
「む……!」
瀕死の火トカゲが這うように岩陰へ隠れようとしている。
俺が術を防御に割り振ったため、拘束が緩んだのだ。
リンの手の先で火球が大きくなっていく。
「逃げちゃダメですよー!
ファイアボールッ!」
「フギーッ!」
燃え上がった火トカゲが身もだえする。
耐火性の高い皮を持つとはいえ、既に腹が裂けている。
それに、圧倒的火力の前にはちょっとした耐火性では耐えられない。
しばらくして、火トカゲは塵になって崩れ去った。
「倒しましたー」
「おつかれ、リン!」
トウコが首を左右に向け、岩陰を探る。
「もうトカゲは居ないっスよね!?」
「近くに敵さんはいないみたい――」
リンがそう言いかけたところで、俺たちの頭上で物音が聞こえた。
岩棚の上から届いたのは、おなじみの耳障りな声だ。
俺たちの遥か頭上。
最上段の広い足場から、数匹の赤ゴブリンが姿を現した。
「……上だ!
ゴブリンがいるぞ!」
ゴブリンたちは何かを振りかぶっている。
投げ槍だ!
「アギッ!」
「アギャッ!」
風を切る音。
薄暗い中で投擲物を目で追うのは難しい。
だが、見えなくてもわかる!
「何か投げたぞ!
身を守れ!」
俺は身をかがめ、岩陰に隠れる。
リンは盾を上向きに構えた。
トウコは岩から少し離れた位置にいる。
数本の槍が、放物線を描いて俺たちへと降り注ぐ。
トウコが岩陰に向かって走る。
そのうちの一本が、トウコの頭上へと迫る。
近くに投げ槍が落ちてくる!
「ヤバっ!?」
気づいたトウコが顔を引きつらせ、前方へ身を投げ出す。
槍の直撃は免れた。
だが、まだ熱水晶の爆風範囲にいる!
「トウコちゃん!」
さっと、リンがトウコと槍の間に割り込む。
それと同時に槍が床に突き立った!
爆発!
風が吹き荒れる。
目に熱風が入り、思わず俺は顔を覆う。
風が収まった。
くそ……どうなった!?
涙のにじむ目で、必死に二人の姿を探す。
「トウコ、リン!
無事か!?」
ぼやけた視界の中、リンの声が聞こえる。
「――大丈夫です!
うまくいきました!
今回は燃えないように防げましたっ!」
意識して【防火】を使ったのだろう。
リンの盾が煙をあげている。
だが盾も体も燃え上がってはいない。
うまく防いだのだ。
ついで、元気なトウコの声。
「リン姉、あざっス!
ひやー、危なかったっス!」
かばわれたトウコも無傷!
「見事だ、リン!
無事でよかったな、トウコ!」
リンの成長に感心し、トウコの無事に安堵する。
そうしながら、俺は即座に次の手を打つ。
「――【濃霧】!」
俺たちの周囲に濃い霧を発生させる。
頭上のゴブリンたちの視界を遮り、安全を確保。
さらに、俺たちがいる岩棚から少し離れた、別の突き出た岩の上へ【分身の術】を発動!
ここは上からよく見える、目立つ場所だ。
分身は手を叩き、大きな身振りでゴブリンたちを挑発する。
「ゲヒャッ!」
「アギッ!」
ゴブリンたちは目立つ分身に向けて、次々と投げ槍や手榴弾を投げ始めた。
爆発音が響く。
「今だ、一気に行くぞ!」
「はーい!」
「りょっ!」
敵の攻撃が分身に集中している、そのわずかな隙。
俺たちは霧に紛れながら、ゴブリンたちのいる最上段へと一気に駆け上がる!
「……アギッ!?」
俺たちがすぐそこまで迫っていることに、ゴブリンの一匹がようやく気づく。
だが、もう遅い。
「くらえっ――【水刃】!」
「チャージショット!」
「ファイアラーンス!」
俺の腕から放たれた矢の【水刃】が一体を貫き、トウコの散弾が二体を蜂の巣にし、リンの炎の槍が別のゴブリンを貫いて炎上させる。
ゴブリンたちが反撃に出る前に、さらに刀による追撃を加える。
「……ふぅ。掃討完了だな」
「漁夫は許さないっス!」
あっという間に静寂が戻った岩棚で、俺はリンの肩を叩いた。
「リン、さっきの盾は見事だったぞ。
もう完璧にマスターしたんじゃないか?」
「えへへ……ゼンジさんのおかげです!」
はにかむリンの頭を、俺はポンと軽く叩いて笑顔を返した。




