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無敵の人

次の日から母の経済状況の確認が始まった。まずは年金の状況と借金関係の確認を始めました。


姉が言うに母の新しい夫という方は十年ほど前に亡くなったそうで、今は親子二人で生活をしており、母自体も前年までスナック経営をしていたらしいのですが、おそらく暴飲などの不摂生からくるいくつかの持病、遺族年金がもらえる年齢を理由に辞め、夫が残した財産で生活をしていたらしいのですが、姉や親類からの話では最近ではマンションの管理費なども滞納しているそうで、かなり困窮している様子が見て取れました。


こんな状況で現実逃避を繰り返すニートの青年、その人となりを姉と親類に聞いてみたところ、母への暴言や家庭内暴力がひどいこと、そんな彼を心配した親類が職を斡旋しても、優秀な自分が勤める仕事ではないと逆切れをし、自分は優秀なのに世の中が認めてくれないと世を儚んでいるそうで、まるでネットで見る絵に描いたようなモンスターのようでした。


まったくもって話し合いもできなさそうな相手と、これから先の話し合いをする。どう考えても新たな問題の火種にしかならない情報を前に抱えそうになりますが、それでもやらないければ迷惑をこうむるの自分です。


そもそも本当に優秀なのでしたら大学進学で失敗したとしてもリカバリーを考えるはずで、本人が言う通り秀でた能力があるなら大学中退であろうとも入社できる良い企業もあるでしょうし、それこそ自身の才能で自営や起業することだってできるでしょう。


そんな浅学非才な私でも考えつくような事に、本当に優秀な方ならたどり着けないとは思えないし、ましてや本当に優秀なものなら自分が立ち止まっている間に社会は進み、周りの人間は努力や経験を重ねて成長していくことを本能で理解できるでしょうから、ニートなどして立ち止まることの愚かさにすぐに気が付くはずだと思います。


なまじお勉強が出来るからでしょうか、それとも若さからくる勘違いなのでしょうかわかりませんが、こうした万能感を捨てきれなかった子供染みた勘違いというのは、おそらく老人の凝り固まった感性から来る勘違いと同じ位、本人とって強固な現実であると感じます。


実際ネットのオフ会やリアルで知り合った方の親類等、出会ったニートの方々も結構な確率でこのような強固な勘違いを強く信じており、彼らの行動を物理的に支えるものは親の財力、精神面では親の寛容や諦観だったように思えますので、それを支える母という存在が倒れ、彼の万能感を支える砂上の楼閣が崩れた今、彼は最近よく耳にする「無敵の人」の片鱗が見て取れましたので、これから先に彼がどのような行動を取るかは全くの未知数でした。


せめて先手を打つため話の一つでもできればと思い、こちらから連絡を取ってみたのですが、母は私の存在を彼に隠していましたので、彼からすれば母が裏切った形になったのでしょう。母の裏切りの象徴である私を敵視しているらしく、いつ電話をかけても連絡が取れず、無為に一か月程の月日が流れてしまい何も話し合いを持つことが出来ずに母の転院日を迎えてしまい、その無為のツケは最悪の形で私たちに帰ってきました。


この日初めて知ったのですが、母には新しい交際相手が出来ており、その相手とニートの弟が病院で大喧嘩をしたのです。


どうやら新しい交際相手はたびたび暴力をふるっていたニートの彼が信じられず、ニートの方は病床の母を利用して悪だくみを考えているのではないと言いがかりをつけ、互いに譲らない状況で揉め、病院内で取っ組み合いの喧嘩を始めてしまい、その場に居合わせた姉だけでは止めきれず、近所に住んでいる老齢の親類が仲裁に入ってくださり、どうにか転院の手続きを取ってもらえたそうです。


そうした連絡を仕事中に姉から受けた私は、驚き親類に連絡をして謝罪をしますが、二人の行動を見た親類はこれ以上の問題ごとは勘弁してほしいと、絞り出すような声でつぶやいて電話を早々に切られてしまい、私は戸籍上の家族と交際相手が引き起こした問題に情けないやら申し訳なさで一杯になりながら、これから先の事を考え一度新しい交際相手の方とも話せねばならないと思い、病院や親類への謝罪と老人と青年の起こした問題を片付けるべく、沈んだ心をどうにか落ち着かせて行動を始めたのでした。

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