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「……あの時ね、私、実はのりちゃんのことつけてたの。あ、でも、たまたま駅で見かけただけで、学校からつけてたわけじゃないよ? でも、本屋に入る姿を見た時、あの雑誌買うのかなって思って」
後をつけて入ってみればはたしてその通りで、ふらふらと店内を歩き回るわたしを、ちゆちゃんは漫画の棚で待ち伏せして、偶然を装って声をかけたらしかった。
「その後喫茶店で、一緒の下着を買いたいっていわれた時、すごく嬉して、一緒の下着をつけて登校してくれた時も、なんか夢みたいで……私もあの日ね、したんだよ」
「したって、その……?」
「うん。のりちゃんと同じこと。気持ち悪い、かな」
「気持ち悪くなんかないよ」
ぎゅうっと抱きしめて、わたしはもう一度同じ言葉を重ねた。わたしの耳もとで、ありがとう、と小さくちゆちゃんはいった。
「のりちゃんが全部話してくれたから、私も全部本当のこというね」
そういってまず最初に話したのは、さっちゃんのことだった。
「私ね、ずっと冴木さんに嫉妬してたの。いつものりちゃんのとなりにいて、楽しそうに話してるし、あの日だって一緒に登校して……冴木さんとは親友なんでしょ?」




