朝、起きたら、兄ちゃんが冷たくなってた
昔々、現在の鳥取県のある村に、二人きりの兄弟が住んでおりました。
二人はとてもお互いのことを想いあい、助け合っていたのですが、何しろまだ年端もいかない子どもです。
親に捨てられた二人は、力を合わせて生きてはいたのですが、ブラック企業にいいように騙されて、ただ働きのようなことをさせられていました。
ある月の給料日、二人の口座には、お給料が振り込まれませんでした。
兄が親方に詰め寄っても、知らんぷりです。
「訴えるぞ!」と兄が言うと、ようやく社長はにっこり笑い、「うちのモンが間違えて違う銀行に振り込みしよったんや。アハハー!」と、謝る素振りはひとつも見せずに、笑い話として流そうとしました。
無事、給料は二人の懐に入りました。
重労働にはあまりにも見合わない金額でしたが、それでも毎日おからを食べる生活よりはましです。
兄はそのお金でチキン南蛮を買い、弟に与えました。
「兄ちゃん! お肉って、おいしいんだねぇ」
この世の幸せをすべて味わうようにチキン南蛮を食べる弟を見ると、兄は自分も幸せな気持ちになるのでした。
お肉はすべて弟に食べさせ、自分はレタスばかりを食べて、それでも心から満足でした。
本当に久しぶりに、白いお米のごはんにもありつけました。
それまではずっと、押し麦を炊いて、ごはんの代わりに食べていたのです。
もうすぐ十一月がやってきます。
その晩は、まだ十月とは思えないほど、寒い夜でした。
寝る時、おせんべいみたいな布団を二人は一緒に使っていました。
それは〇〇物流という会社のトラックの中からパクってきた、荷物の角あてに使うための毛布でした。
二人の身体を覆うには毛布は少し小さく、兄は弟にほとんどをかけてやり、自分は弟の体温で暖をとりました。
弟が振り向き、言いました。
「兄ちゃん、寒かろ?」
そして自分が独占していた毛布を、兄の身体にかけてきます。
「おまえこそ、寒かろ?」
兄は弟の身体を抱きながら、ついでのように、毛布をかけてやりました。
次の朝、弟が目覚めると、兄は冷たくなっていました。
カノジョができていたのです。
弟は、どれだけ兄弟愛が深いようにみえても、どちらかにオンナができたら終わりだということを知ったのでした。
こいでこっぽし!




