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~涙するにもほどがある!57~

 結人とスズネは何事もなく城まで残り三分の一のところまで来ていた。暗闇で視界が悪い中、よくここまで誰に襲われることなく来れたものだと思う。だが、それもここまでだったようだ。


 結人の身体が急に後ろに引き戻される。スズネが襟首をつかみ後ろへ引っ張ってくれたのだ。暗闇の中、空を切り裂き襲い来る水の刃がまさに結人がそこにいた場所めがけ放たれ、かなりの速度で通過していく。


 正直紙一重だった。スズネがいなかったら結人の首が宙を舞っていたことだろう。敵襲だ。だが、どこから放たれたのか皆目わからない。だが、ここで手をこまねいているのは命取りになりかねないのは確かだ。


「スズネ、下に降りよう」


 結人は体勢を立て直し、油断なく構えながらオルクスを練り上げ真っ黒い刀を具現化させる。スズネも辺りを警戒しているようだったが敵がどこから攻撃を仕掛けてきたのか皆目わからないでいるようだ。


 結人の言葉にスズネも頷き即座に屋根の上から表の通りへと飛び降りようと駆け出したところで、再び水の刃が飛来し、結人に襲い来るのも、今度は刀で弾き返すことに成功する。弾いた瞬間に伝わる衝撃やこの何とも言えない感覚に結人は覚えがある気がしたが今はそんなことを考えている余裕はない。


 二人は三階建ての建物から素早く飛び降りる。常人であれば着地した際の衝撃で、骨の一つや二つ折れていたかもしれない。だが、結人は自身の足にオルクスを集中させる。どのくらいのオルクスを流し込めばいいのか分からなかったため、流し込み過ぎたオルクスにより足が黒曜石のように、一瞬だけ足が魔物化する。


 着地した際の衝撃は全くというほど感じなかったのだが、結人の足の周りの地面は陥没し、その衝撃を物語っていた。スズネはさすがと言うべきか、人では到底まねできないような動きで、家の軒などの小さなでっぱりを足場にしながら、身軽に降りてきた。


 ここでボケっと固まっている余裕はないはずだ。確実に水の刃が結人を襲ってきた。ということは、今この瞬間にまた襲われる可能性は十分に考えられる。


 ラプソディア達がいる方角からは、民衆たちの者であろう声や物音が今なお響き渡っている。何時こちらに向かってくるか気がきではない。


 その時、再び水の刃が放たれる。だが、敵がいるとわかっていた以上、結人も不意を突かれることなく具現化させていた刀で冷静にはじき返すことに成功した。水刃は、大通りのさらに先から飛んできた。多分そこにあいつが……。


 結人の中には、ある一人の人物が脳裏に浮かんでいたが、その反面その人物が敵に回ったなどとは信じたくはなかった。とりあえず、このままここにいても埒が明かないと考えた結人は、スズネと共に建物の陰に移動し、たった今思いついた作戦を伝える。


「スズネ、どのくらいのスピードまでならついてこられる?」

「大丈夫。ある程度のスピードまでならついていくことは可能です。これでも狐人族ですから」


 結人はひとつ頷き、今思っていることをスズネに伝える。


「多分だけどあの水の刃、この先にあいつが、黒騎士がいると思う。リアの居場所を教えてくれた彼だが、彼が敵対しているとなると、その情報すら怪しくなってくる。だが、ここに異変が起こっていることは間違いなく、リアがいる可能性もゼロではない」


 スズネは結人の話を真剣そのものといった表情で聞いている。


「リアがいるという可能性がある以上ここまで来たのなら戻るという選択肢は今の所考えていない。今さっき見てきた感じだと表通りに他に敵はいないように見えた。奴と一対一なら攻撃を防ぎつつ駆け抜けることくらいは出来ると思う」


 だが懸念も一つあった。奴が結人を通すまいと本気を出してきたときに、果たして本当に突破することが出来るのかという不安だ。いや、奴相手に突破するという考え自体が間違っているのかもしれない。


 その懸念はスズネも感じたようだった。そこで結人はさらに言葉を続ける。


「スズネの言いたいことは分かる。奴が本気で俺を止めに来たら突破は難しいし、スズネをかばいながらとなると余計に厳しいとおもう。スズネは幻影魔法が得意って言ってたよね?」


 スズネは一つ返事をする。彼女は戦うことはほとんどできないとのことだったが、幻影魔法など補助的な魔法を得意とするようだ。


「スズネは幻影魔法をつかって自身の身体を周りの景色に同化させて一直線に城を目指してほしい。俺はあえて姿をさらして敵の注意を引くから」

「それはあまりに危険すぎるのでは? 結人様も一緒に魔法をかけることは可能ですよ」


 それは結人もわかっていた。だが、黒騎士と戦った結人だからわかる。


「いや、多分、それでもあいつには隠し通せないよ。戦ったからわかる。あいつは強い。視覚だけに頼っていないことがよく伝わってきた。ただ、あいつは敵ではない、そんな気がするんだ」


 結人は最後の一言を言ってから自身でも驚いた。今まさに攻撃をされたばかりだというのに敵ではない気がするなどとまともな頭の持ち主の言うことではない気がしたからだ。だが、スズネは異を唱えることなく結人の言葉を信じて呪文を唱えたのだった。

~おもちろトーク~

結人 「幻影魔法で敵の眼を欺いてくれ」

スズネ「分かりました! じゃあチーク入れますね!」

結人 「え!?」


いつもお読みいただきありがとうございます。

襲い来る水刃を放つ敵は黒騎士なのか!? 無事に突破することが出来るのか!? 今後の展開に期待!(笑) 


いつも、いいねや評価、ブックマークやご感想などありがとうございます。

執筆していく上での励みとなっており、心強い限りです。また、小説以外での質問なども受け付けておりますので、気軽に感想覧へご記入いただければ、お応えできる範囲でお応えいたします。


今後とも「いせたべ」をよろしくお願いいたします。

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