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~涙するにもほどがある!54~

 ラプソディアをしんがりに、ティスの先導のもと暗くお世辞にも広いとは言えない裏通りを早足で、何とも言えない緊張のもと進んでいく。表通りは所々に魔力石を利用した明かりがともっている為そこまで暗いとは思わないのだが、裏通りになればそういった明かりが一切ない上に、今日は二つの月が重なりあって光が一切届かない暗月の日。そのため周りの景色はぼんやりとしか視認することが出来ない。






 どれくらい進んだだろうか。かなりの距離何事もなく進んでこられた気がするのだが、何かおかしいとずっと感じている。待ち伏せをされ奇襲を受けたにもかかわらず、そこから敵の奇襲など一切ない。


 しかもそれだけではないのだ。勝手な決めつけかもしれないが、こういった裏路地だと、家がなく路上で寝転がっている人や物乞いなどがいるイメージなのだが、ここに来るまでにそういった者がいた形跡はあれど人に一切出くわしていなかった。


 ティスは相変わらず足早に進んでいる。その背中越しに結人は問いかけた。


「ティス、何かおかしくないか? 夜とはいえ、この裏通りはこれほどまで人気が無いものなのか?」

「いや、ここには夜になると家が無いものや荒くれなどが溜まる場所となっていたはずなのだが、これほど静かなこの通りは見たことがない」


 そこでティスがいきなり立ち止まったので、結人はティスの背中に思い切りぶつかりそうになった。後に続くスズネは止まることが出来ず結人にぶつかり小さな悲鳴を上げている始末。ティスはカレンデュラの柄に手をかけ、真剣なまなざしで前方を注視している。


 ティスが立ち止まった理由はすぐに分かった。何の音か最初分からなかったのだが、数メートル先の路地から何やらうめき声のような音とともに、人がぞろぞろと歩き回るような音が聞こえ始めた。それも一人二人の足音ではない。数十人、数百人、下手をするとそれ以上の地面をこするような何とも言えない不気味な音だ。


 姿を現したその者たちは、やはりというべきなのだろうかこの城下町に住まう住人たちなのだろう。その身だしなみは、ぼろぼろの服を着ている者から、少しお高そうな服を着ているものと様々だったが、皆一様に瞳の焦点があっていない。それどころか、口からはよだれをたらし、言葉にならない声を発している。


「裏路地でまだよかった。結人様、この狭い路地ならいくら数でこようと敵の利にはなりません。ですが我々もこの数の中を強行突破するのは不可能です。なので少々失礼を」


 そんなラプソディアの声が聞こえた瞬間、結人の身体がひっくり返るような感覚と共に足が宙に浮く。何が起きたのかと一瞬思ったが、どうやらラプソディアの脇に挟まれるような形で抱き上げられたたしい。


 これまたさっきと同じように、小さな悲鳴を出したスズネもラプソディアの反対の脇に抱えあげられているのを視界にとらえた瞬間、ラプソディアが大きく結人とスズネを空に放り投げた!


「えっ!? まって、聞いてないって!」


 だが時すでに遅し。頬り投げられた結人の身体は宙を舞い、建物の屋根を通り越し、町が一望できる高さにまで放り投げられた。その時、城の窓際に一瞬こちらを見る人影を見たような気がしたが、その人影はすぐに見えなくなってしまう。


 いや、見えなくなったのではない。結人の身体が最高地点に到達し、そこから落下を開始し始めたため見ている余裕が無くなったのだ。


 空中で必死に体制を整えなおし、何とか数階建ての屋根の上へ着地することに成功した。両手をつくような形での少し不格好な着地となったが、怪我などもしていないため良しとするべきであろう。


 一方、同じように放り投げられたスズネは、着物のような服装だというのに、意に介さないといった様子で身軽に身体をひねって華麗に結人と同じ屋根の上に着地した。


 屋根の下ではラプソディアとティスが、様子のおかしい民衆を相手に出来る限り殺さないように注意しながら戦っている姿が目にはいった。


 当初の作戦通りにいけば、ラプソディアとティスが敵を引き付けている間に、結人とスズネが城までたどり着く手はずになっている。だが、ラプソディアとティスが相手にしている民衆の数はとてもではないが二人で押さえきれる量ではない。


 その光景に圧倒されたスズネは口元を抑えている。ただでさえ透き通るような肌がさらに青ざめているようだった。


 結人は助けに戻るべきなのではないかと身体が勝手に動きそうになるのを何とか理性で抑え込む。その時、首に下げているペンダントからラプソディアの声が結人のオルクスへ伝わり脳内に響き渡る。


「結人様、迷っている場合ではございません。作戦通り、リア様の救出へ向かってください。いざとなれば、ティスを抱えてでも空へ離脱しますので」


 その言葉を聞いて決心が固まった結人はスズネの顔をみてひとつ頷き、連なる屋根の上を落ちないよう出来る限り早足で城へと向かったのだった。

 


 


 

~おもちろトーク~

結人 「それにしてもこれだけの人数揃えるの大変だっただろうな」

スズネ「私たちのメイクだけでも相当な時間かかってますからね」

結人 「だよね。それが民衆全員分とか恐ろしいね」


いつもお読みいただきありがとうございます。

短時間で読みやすいところまで読めるように、各話二千文字手小戸で納めさせていただいているわけですが、救出となると少しじれったいですね(笑)リアを早く助け出してあげて! という想いに駆り立てられます。


現在休職中ですが、体調もそこそこには安定してきたので皆様にご報告と、心配していただきありがとうございますとお伝えさせてください♪


いつもいいねや評価、ブックマークやご感想などありがとうございます。

執筆していく上での励みとなっており、心強い限りです。また、小説以外での質問なども受け付けておりますので、気軽に感想覧へご記入いただければ、お応えできる範囲でお応えいたします。


今後とも「いせたべ」をよろしくお願いいたします。

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