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~涙するにもほどがある!53~

 魔法陣に足を入れた途端、体全体を何かに引っ張られるような感覚に襲われ、ぐにゃりと自身の中の何かがゆがむような居心地の悪さに思わず眼を固く閉じる。しかし、その感覚も一瞬で、すぐに足が硬い床を踏む感覚が伝わってきて結人はゆっくりと瞼を開けた。


 外に月が出ていないせいもあって、最初店内は何も見えないのではないかと思うほどに真っ暗で静寂に包まれていたが、眼が暗闇に慣れてくるとそこには、テーブルの上にさかさまに乗せられた椅子などがいくつも置いてあり、いま結人がいる横にはバーカウンターのようなものがあることが見て取れる。今現在結人がいる場所は、ラプソディアが言っていてように今は使われていない喫茶の中の少し奥まった一角なのだということが理解できた。


 ラプソディア以外のメンバーは目の前の机の陰に隠れているようだ。ラプソディアはこの店の出入口だろうと思われる扉の横で壁に背中を着けるようにし、扉を少しだけ開けて外の様子を伺っているようだ。


 結人の姿に気が付いたティスが、自身が隠れている机のそばまで隠れてくるようにと小声で言っているのが結人の耳に届いたので出来る限りしゃがんでティスたちがいる机の陰に身を潜める。皆隠れているのには何か理由があるのだろう。


 結人は出来る限り小声になるように心掛けながらティスに今の状況を聞くことにした。


「何かあった?」

「ああ。ラプソディア殿がこちらに出た瞬間に何者かに待ち伏せされていたようだ。だが、人ではなかったらしい。見たこともない化け物二体が襲ってきて叶わないとみるやそこの窓を割って逃げ出したそうだ」


 ティスが説明しながら指示してくれた窓を見ると、確かにガラスが砕け散っていて足元に散乱していて大変危険な状態だ。


 ラプソディアはそっと扉を開け、警戒しながら安全を確かめる為外に出ていった。ティスが素早くラプソディアが背を着けていた壁まで走り寄りそっと扉から外の様子を伺う。結人、スズネも身を低くして扉に近い机の陰へ移動し近くの窓から外の様子を伺うことにした。


 そこは城下町の裏路地でスラム街といった雰囲気で、月のない真っ暗な闇の中でもその不気味さが伝わってくるようだった。


 外に出て警戒しているラプソディアと眼があったタイミングで外に来て大丈夫だと合図をくれたので、スズネ、ティスと共に外へと飛び出す。


「ラプソディア、いったい何があった?」

「何者かに待ち構えられていました。私がこちらへ来た瞬間を狙って攻撃してきたので逆に一発叩き込んだのですが、実体がないのか攻撃が当たった感触はなく、急襲が失敗したとみるや窓ガラスから逃げていきました」


 そこにいる誰もが動揺を隠せないでいるのが伝わってくる。今の話から察するに、ここの場所が割れていただけではなく、結人達が今日この場所に来ることもばれていたことになる。そうなると、魔王城にいた時点で情報が漏洩していた?


 ラプソディアは、例のペンダントを使ってシエルに現状を伝えていて、シエルの驚いたような声が結人のペンダントからも聞こえてくる。


 ペンダントから漏れ聞こえるこの声はほかの者には聞こえていないのだろうか? 聞こえているとしたら、潜入の邪魔になること間違いない。


 不安が顔に出ていたのか、結人の顔を見て察したラプソディアが丁寧に教えてくれた。


「大丈夫ですよ。このペンダントは持っている者のオルクスを通して本人に直接語りかけるものです。ですので所持している人にしかその声は聞こえませんのでご安心を」


 こういう時なぜいつもわかるのだろう? と不思議に思うが、今の作戦中には関係のないことだ。結人は、自分の顔に出やすいだけだと思いこむことにし、ラプソディアが教えてくれたことに頷いて答えるだけにとどめた。


「皆さん、今の所作戦の変更はありませんが、注意を怠らないよう慎重に進んでいきましょう。敵に我々の存在が気づかれている可能性が高い。ティス、ここから案内をお願いします」

「わかった。といっても、こちらの貧民街を行くとしたら道は目の前にあるこの狭い通路を行くことになるが」


 ティスが指示した方角を見ると、少しくねりながらも細い裏路地に緩い上り坂が続いている。城下町から城を見る機会がなかったが、暗闇の中、崖の上に建てられた城は城下を見下ろすかのように聳え立ち(そびえ)、その存在感は見た者を圧巻するほどに立派だった。


「あと、途中途中に分岐点があり、たいていは行きどまりかこの道へと戻ってこれるだろうが、ものすごく分かりづらい構造になっている為皆注意してくれ」


 今の言葉に皆無言で頷き、ティスは踵を返し城へと続くスラム街を少し駆け足で進んでいく。そのあとを追うように結人、スズネ、ラプソディアが出来る限り物音を立てないように後へ続いたのだった。

 

~おもちろトーク~

結人    「シエルはいい子で待っているかな~?」

ラプソディア「多分大丈夫でしょう……多分」

シエル   「……つまらーん!!!」


いつもお読みいただきありがとうございます。

今回のお話いかがだったでしょうか? 月のない闇に包まれた中での強襲というような緊迫感を描写するというのはなかなか難しいものだなと感じました(笑)。



私事になるのですが、体調を崩しているというお話はさせていただいたかと思うのですが、転職もいいところがあればしたいんですよね~。ただ、そこがホワイトかどうか、人間関係がどうなのかなんて入ってみないとわからないというのが正直辛い(´;ω;`)くまったくまった(笑)



いつもいいねや評価、ブックマークやご感想などありがとうございます。

執筆していく上での励みとなっており、心強い限りです。また、小説以外での質問なども受け付けておりますので、気軽に感想覧へご記入いただければ、お応えできる範囲でお応えいたします。


今後とも「いせたべ」をよろしくお願いいたします。

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