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~涙するにもほどがある!50~

「研究者たちからすれば、私はものすごく興味をそそられる対象だったのでしょうね。逆に言えば、それだけでしかなかった。私の魔力が増大していく原因を調べるためといい、私の羽を切り落とそうが、魔法を使い精神操作しようがお構いなしの毎日。そして、傷つけられた身体は治癒魔法で元通り。それでも、成果の得られない研究者たちが挙句の果てに手を染めたものは、黒魔術と呼ばれる悪魔儀式でした。自然を愛し、恵みと共に生きる私たちエルフにとって黒魔術は禁忌とされている魔法」


 そこで、ラワーレは一度身震いをし、首を左右に激しく振る。ラワーレのその気持ちは痛いほどよくわかる気がした。さらさらの美しい髪が、首を振ったせいで乱れたのをティスが優しく整えてあげる。


 ラワーレは深呼吸をして続きを話し始めた。


「あれは魔法というより呪いに近い類のもの。あの研究者たちが呼び出した悪魔の手によって確かに私の魔力を抑え込むことには成功した。だけどその悪魔は代償として、私が魔法を使うたびに命をいただくと。エルフの間では、魔力、私たちはマナと呼んでいるものこそが、命の根源であると言われているの。私が魔法を使うたびにそのマナを吸い取られるせいで、はた目には魔力切れに似た症状を起こしているように見える」


 一通り話し終えたラワーレは、再度結人の顔を真剣に見つめる。


「魔王様、この忌々しい呪いを消してほしいとまでは言いません。ですがどうか、魔王様が住まうこの地に汚れたこの身が居座ることをお許しください」

「私からも、お願いいたします」


 ラワーレとロザは深々と頭を下げる。正直こういうのには慣れていないし、自分がそこまで偉いとも思わない。それでも、彼らにとっての救いが自分であるというのならば、手を差し出さずにはいられないと思った。


「二人とも顔を上げてほしい。ラワーレ、素直に話してくれてありがとう。辛い思いをしてきたんだね。俺にとって二人とも大切な仲間だと思ってる。だからここに住みたいと言ってくれることは俺nitottemo

嬉しいことだから。それと、その悪魔に関してこっちでも色々と調べてみるよ。そんな悪魔に頼らなくても、魔力をコントロール出来る方法が何か見つかるかもしれないし」


 その言葉にティスも力強く頷く。


「ここの書庫の量は半端じゃないぞ! それに、リアを助け出すことが出来れば、対抗策もあるかもしれん。彼女は聖女と謳われるほどの最高司祭様だからな」


 幼いころから心優しかったリアは、困っている者がいると放っておけないたちで、実際見知らぬ子供が悪魔に狙われているところを何度か助けているところも見たことがある。悪魔というのは、意図せずどこにでも、誰にでも現れる可能性があり、願いをかなえる代償としてそれに見合わない程の何かを要求してくる厄介な存在だ。


 結人は、リアを助け出すことで全てが丸く収まってくれればいいと願う一方で、そう簡単にはいかないと頭のどこかがそう言っている気がするのを必死に振り払うため、窓の外へと視線を向ける。


 空を真っ赤に染め上げている夕日もかなり山の陰へと隠れて、だんだんと夜の帳が迫りつつあった。ラプソディアはまだ来ていない。リア救出作戦へ協力してもらえる助っ人を呼びに行っているからだ。

早ければ今日中にリアを助け出せるのかと思うと結人は居ても立ってもいられない焦燥感に苛まれる。だが、それはティスとて同じ事であろう。


 時間の進み方というのはいついかなる時も変わらないはずなのに、夕日はまだ辺りの空を紅々と照らして、少しも動いていないような気すらしていた。






 三日後の暗月の日、結人達はだいぶ回復をしてきたラワーレに軽く挨拶をして城入り口にあるホールへと移動してきたところだ。上から吊るされた大きなシャンデリアには煌々とした明かりが灯され、夜ということを忘れるほどに辺りを照らしている。外が暗くなるにつれて、結人もティスもじっとしていられなかったというのが正直なところだ。


 ティスはせわしなくホールを行ったり来たりしている。結人も同じような気持ちだったが、二人そろってホールをうろうろする構図を想像してしまい、心の中で少しだけ笑った。


「ラプソディア殿はまだだろうか。そろそろ戻って来てもいいころだとは思うのだが」

「今はラプソディアを信じて待つしかないよ」 


 そんなやり取りをしていると、ホールの向かい側にある通路からラプソディアが二人の女性を連れて戻ってきた。


「結人様、ティス、お待たせしました。今回の作戦のかなめであるお二方をお連れしました」


 そういうラプソディアの後ろから出てきたのは、美しい金の髪を後ろに流し、頭に狐の耳を生やせた狐人族のスズネだった。彼女もラワーレ達と共に助け出した獣人族の一人だ。

 

 もう一人は見たことのない顔で、華奢(きゃしゃ)な体躯に小学生を連想させるような身長をしているせいで、見た目はまんま子供といった感じだ。ラビアもかなり背が低いが、目の前の少女はそれ以上に低いだろうと思われた。





 

~おもちろトーク~

ラワーレ「結人様、今後とも末永くよろしくお願いします」

結人 「こ、これはご丁寧に(汗)」

ロザ 「ラワーレ挨拶違うんじゃないか?(汗)」


いつもお読みいただきありがとうございます。

体調不良のため、執筆に遅れが出ておりますので、来週投稿できるようできる限り頑張りますので応援よろしくお願いします。


いつもいいねや評価、ブックマークやご感想などありがとうございます。

執筆していく上での励みとなっており、心強い限りです。また、小説以外での質問なども受け付けておりますので、気軽に感想覧へご記入いただければ、お応えできる範囲でお応えいたします。


今後とも「いせたべ」をよろしくお願いいたします。

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