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~涙するにもほどがある!49~

「私たちエルフは、皆さんが言うように生まれつき魔力が強い者が多い種族です。当然、私も生まれた瞬間から人並みの魔力はありました。そうして、魔力を制御できるように、物心つく前から魔力制御の練習を行うのがエルフの里の決まりなんです」


 ラワーレはそこで一度言葉をきり、深く深呼吸をする。身体がまだしんどいのか、もしかするとあまり話したくない内容なのかもしれない。そこで、父のロザが娘のラワーレを気遣い、そっと優しく手を握る。


「ラワーレ、結人さんたちに包み隠さず話しておきたいというお前の気持ちもわかるが、どうしてもしんどいならまた別の日にしても……」

「いいえ、お父様。今だから話しておきたいっていうのもあるし、私なら大丈夫」


 ラワーレは笑顔を作って見せたが、その笑顔はどこかさみし気で儚く、それでいて自身の運命を悟っているといった表情に見えた。


「まず、これを見てください」


 そう言うなり音もなくラワーレの背中辺りから天使を想像させるような羽が姿を現した。隣に膝をつくロザも同じように羽を出現させたが、ロザの羽はエルフをイメージする透明な羽であった。ラワーレのそれは、ロザとは大きく掛け離れた羽だったが、結人は思わず見とれてしまうほど美しいと感じた。ティスも驚きを隠せないでいるようだ。


「見て分かる通り私の羽は、他のエルフとは似ても似つかない羽なんです。その理由が、私の膨大な魔力にあります。私の魔力が強すぎる為なのか、羽がこんなだから魔力が強いのかははっきりしていませんが、物心つく頃には、周りの大人たちと同じくらいの魔力を有していました。研究者の話では、羽と魔力が大きく関わっているみたいなんです。エルフの仲間たちともそれが原因でうまくいかず……」


 過去の記憶がフラッシュバックしたのかもしれない。ラワーレは一瞬だけつらそうな顔を見せ、静かに結人の方を見上げた。ラワーレの瞳からは恐怖の色が伺える。震える小さな唇からそっと息を吐き出し、結人達にどう思われるのか、嫌われはしないだろうかと不安そうな表情で次の言葉を必死に探しているようだった。


 研究者という言葉に結人は少し嫌な感じを覚えつつ、ラワーレの気持ちが痛いほど伝わってきた結人は、一歩歩み寄りラワーレを安心させるために頭に手を乗せラワーレの瞳をそっと覗き込みながら優しく声を掛ける。


「大丈夫。今まで誰に何を言われ、どう思われてきたのかは分からないけれど、ここにいる皆はラワーレを嫌ったり、傷つけるようなことはないよ。俺は、ラワーレのこの羽を見たときに、天使の羽みたいだと思ったし、今見ても真っ白でとても綺麗な羽だと思う。皆それぞれ性格が違うように、それも個性の一つだと思うし、それに、少しくらい見た目が違うからってその人が変わるわけじゃない。あの時だって助けてくれただろ? ラワーレが助けたい、力になりたいって思う優しさが大事なんじゃないかって思う。なんだったら、俺が「悪口は言い合わないようにしましょう令」を出してもいい。仮にも俺、()()らしいから」


 暗いしんみりした雰囲気にしたくなかった結人が、わざとおどけて見せると、袖で涙を拭いこくこくと頷くだけのラワーレだったが、結人のその言葉を聞いて少しおかしそうに笑う。


「本当に、あなたは面白い魔王様ね。いいえ、そんな素晴らしい考えを持つことが出来る素敵な魔王様。本当にありがとう」


 ラワーレは頭に置かれた結人の手をそっと握り、愛おしそうに自分の頬に押し当てる。その行動にどぎまぎしていた結人だったが、ラワーレのありがとうという気持ちが伝わってきて引っ込めかけた手をそのままにした。


 父親であるロザも結人に感謝を述べながら頭を下げてきたので、結人も「いえいえ、とんでもないです」などと、どぎまぎしながら返事をしている。


 こういうところは結人が普通の大学生だったと自分で自覚する部分でもある。魔王や勇者と言われても、根をたどれば結人はこの世界に来る前はただの大学生だったのだ。それがいつの間にやら、勇者だの魔王だなどと言われる存在となってしまった。


 しばらく黙ったままラワーレは結人の手を頬に当てたまま動かなかったが、そうすることで落ち着いたのかまだ目に滲む涙を袖で拭いゆっくりと結人の手を解放してくれた。


「ありがとう、魔王様。続きをお話ししますね。増大する魔力の量に幼い私が対処できるはずもなく、私の魔力が暴走しかけたことがあったんです。その時は、里の長老様たち数人がかりでどうにか抑えることが出来たみたいなのですが、そこから里には置いておけないということで研究所へと連れていかれたのです」



~おもちろトーク~

ラワーレ「結人様もやはり殿方なのですね!」

結人  「えっ!? ……えっっ!?」

ロザ  「あまり結人様を困らせんでくれ」



いつもお読みいただきありがとうございます。

隠されたラワーレの秘密が少し明らかとなりましたね! 今の日本では考えにくいことかもしれませんが、実際に世界の歴史を紐解いていくと、黒魔術や人徳を無視した実験が実際になされていたという事実があるわけですからなかなかに恐ろしいものがありますよね。


私事ですが、先週会社で色々と嫌なことがあり、体調崩して昼で帰ったのですが、体調があまり良くなりません(´;ω;`)精神的なものというのは分かっているので、明日どうにか会社に行けるといいのですが……。仕事を変えたいと思う今日この頃です(笑)



いつもいいねや評価、ブックマークやご感想などありがとうございます。

執筆していく上での励みとなっており、心強い限りです。また、小説以外での質問なども受け付けておりますので、気軽に感想覧へご記入いただければ、お応えできる範囲でお応えいたします。


今後とも「いせたべ」をよろしくお願いいたします。

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