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~涙するにもほどがある!42~

「ラプソディア、俺はもう誰も失いたくない。誰にも死んでほしくなんかない。だけど、今の俺には皆を守り切れるだけの圧倒的な力はない。だから、力を、貸してほしい」

「もちろんです。私は結人魔王陛下の剣であり盾ですから」


 熱で、奴の周りの草が燃え始めている中でも、ラプソディアの紳士的な態度は変わらず、その微笑む姿にどこか安堵することが出来た。ティスたちには非難してもらうしかなさそうだが、相手もそこまで待ってくれはしない。


 三メートルはあろうかという巨体が炎を(まと)い、まるで重力を無視するかのように地面から数十センチのところまでふわりと浮かびあがる。


「え、飛べるの!? ちなみにラプソディア、奴を倒すにはどうすればいいと思う? 剣では……さすがに斬れなさそうだよね」


 奴が封印されていた傀儡人形はすでに燃え尽きたのか、その姿をどこにも確認することが出来ない。炎で出来た身体を攻撃するにはどうすればいいのか、とりあえず思いつくことでいえば火と対を成す水で攻撃することだが、生半可な水では一瞬にして蒸発してしまうことは間違いないだろう。


 ティスは、ラビアやラワーレ達と離れた所へ移動している。何か策でもあるのか、ラワーレが再び詩を詩っているようにも見えるが、ここからでは何をしようとしているのかまでは分からなかった。


 近づくことさえできない程の熱気を纏いながら、イフリートは燃え盛る右腕を軽く薙ぎ払う。するとそれと同時に、結人達がいる足元が真っ赤に染まりあがり、灼熱の業火が地面から噴き出して辺りを火の海にする。


 間一髪、結人とラプソディアは避けることが出来たが、普通の人間であれば間違いなく骨も残さずにあの世行きだろう。


 近づくことさえできないというのに、遠距離攻撃までされるとなったらたまったものではない。結人はダメもとで魔力を操り、オルクスで刀を具現化する要領で水の弓を具現化させた。昔、弓道を習っていたことがあるので弓を射ることには多少なりとも自信がある。


「こんな炎の化身にこれっぽっちの水じゃ効果がないことは分かっているけど、できる限りの魔力をぶつけてどうかってところか……ラプソディア、魔力をいっぱいいっぱいまで練り上げるのにもう少し時間が欲しいから、無理のない範囲で敵を引き付けてくれないか?」


 結人が魔力で弓を具現化させた辺りからラプソディアはすでに動いていたようで、結人のすべてがスローモーションのように見えている眼をもってしてもラプソディアの動きをとらえることが出来ない程の速さで、イフリートを中心に円を描くように走り出し、イフリートの隙をつく形で頭部であろう部分めがけてものすごい速さで殴りにかかる。


そのスピードが尋常ではなかったため、黒い閃光が走ったようにしか見えなかった。イフリートもラプソディアの速さについてはこれないようで、ラプソディアが頭を通過した後に腕を上げる仕草をしていた。


だが、ラプソディアの攻撃も全く効いた様子はない。だが、それで十分だった。結人が練り上げ、放った魔力は、水の矢と化して凄まじい勢いでイフリートへと放たれる。


 普通ならば水が蒸発して終わりなのだろうが、結人の練り上げた魔力の量は膨大で、マグマが水に急冷されてできる岩石のハイアロクラスタイトのように、水がものすごい勢いで蒸発しながらもイフリートの身体を一部岩石へと変えた。


「よしっ‼ 少し予想と違ったけど、これはこれで敵の動きが鈍く……」


 そこまで言った結人だったが、岩石と化した身体の一部が再び炎に飲みこまれて溶かされそうになっているのを見て唖然とする。


「嘘だろ。かなりの魔力を込めて放った一撃を、こんなあっさりともとに戻られたら立つ瀬がないって」


 しかし、ラプソディアは結人が作ったこの一瞬を見逃さない。結人が放った矢で固まった部分を全力の一撃で殴りかかった。ものすごい衝撃波に空気がびりびりと震えて、肌に突き刺さるかのような振動が辺りに広る。


 ふわりと空中に浮いているのだから、そのまま後ろに弾き飛ばされるだけかとも思ったが、あまりの一撃に耐えかねたイフリートはバランスを崩して背中から地面に倒れこんだ。


 だが、イフリートは倒される瞬間に地面を一瞬でマグマと化しダメージを吸収させている。ラプソディアは追撃をしたかった様子だったが、さすがにマグマに飛び込んでいくことはできなかったようだ。


「炎の身体というのは厄介ですね。普通であれば、私のあの一撃で粉砕できていたはずなのですが」


 なかなかに怖いことを言っている気がする。実際に、肌をさすほどの衝撃波が生まれるパンチに耐えうることが出来る者は少ないだろう。


 ちょうどその時、ラワーレが詩い終わり、ティスがカレンデュラを地面に突き立てたのだった。

 

~おもちろトーク~

ティス 「ラワーレ、詩を詩ってくれ」

ラワーレ「ウンバホ、ウンバホ」

結人  「いや、絶対違う」


いつもお読みいただきありがとうございます。

イフリートというエレメンタル系のモンスターというのは、改めて描写などが難しいなと感じました。まだまだ、未熟な私ですが、どうかお付き合いいただければ幸いです(^^♪


この土日は車の買い替えでバタバタしていました(笑)。念願の軽四に変更です( ̄▽ ̄)ニヤリ

速く来るのが待ち遠しいですな~。


いつもいいねや評価、ブックマークやご感想などありがとうございます。

執筆していく上での励みとなっており、心強い限りです。また、小説以外での質問なども受け付けておりますので、気軽に感想覧へご記入いただければ、お応えできる範囲でお応えいたします。


今後とも「いせたべ」をよろしくお願いいたします。

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