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~涙するにもほどがある!41~

 ベリルから出てきていいる手の数が倍近くになったかと思う間もなく、一斉にティスめがけて放たれる。だが、ティスは迷うことなくカレンデュラで確実に切り裂いていく。「これならば、いける」と確信した矢先、押し寄せてくる内の手の一本が方向を変えた。狙いは明らかにラワーレ達だ。


 だが見えるようになったからと言って、こちらの腕が増えたわけではない。さすがのティスも方角を変えた腕を追いかけている余裕などはなかった。


 だが、ティスの心配は一瞬で杞憂と化した。ラワーレの横に立っていたラビアが、太ももにさしたピックを二刀流に構えて迫りくる手を切り裂いたのだ。


「何があっても、彼女には指一本触れさせません!」


 ラビアは今まで誰も見たことがないようなキリっとした表情で言い放つ。いつもどこか抜けているラビアだが、それでも頼れる仲間だなと実感しつつ、ティスはアイコンタクトで頷き、敵から伸び出ている腕を一本一本確実に切り落としながら、敵との間合いを詰めていったのだった。






 結人は、人形の腕を斬り飛ばしたことでひとつ胸をなでおろした矢先の出来事だった。 突如として二体の人形が燃え上がっり、結人はすかさず距離をとる。見上げなければならない程に炎の勢いは激しさを増していき、だんだんと人のような姿に変わっていく。


 霧が立ち込めていてもその大きさを、存在を把握することは容易で、皆が一斉にそちらに注意を裂かれた。ティスやラプソディアと戦っていたベリルがそれを見て、今までにないくらい狂気な笑い方をし、気持ちの悪い眼を見開いた。


「ふふ、はははは! ついに、ついに、イフリートが目覚めたか! 魂の定着がうまくいった時点でほぼほぼ確信はしていたが、こうしてイフリートを目の当たりにすることが出来るとは! イフリートの術式さえなければ二体の人形など創るのはたやすいこと。それよりも、今はその終焉の業火で全てを飲みこみ、何もかもを消し去ってしまえ! あいつが目覚めたら最後、制御することなど叶わない。わしは退散させてもらうとしよう」


 突如として現れたイフリートと呼ばれた化け物に、皆が意識を持っていかれたのが一つの原因なのは間違いがなかった。突如として、ベリルの背後の空間が歪み、真っ暗な虚無がそこに姿を現す。ラプソディアが急ぎ捕まえようと動いたがすでに遅く、ベリルの身体は混沌たる空間の歪みへと吸い込まれるように消えていき、不敵な笑い声だけを残してその空間は閉じてしまったのだった。


 結人に捕らえるよう指示を受けていたにもかかわらず、今回またしても逃がしてしまったことに苦虫をかみつぶしたような顔を一瞬だけしたラプソディアは、すぐに結人のもとへと移動する。


「結人様、お怪我はありませんか? またしても取り逃がしてしまい申し訳ありません」

「俺は大丈夫だけど、目の前のこいつやばくない? こいつに集まっているオルクス? の量が半端じゃないんだけど」


 イフリートから結人達は十メートル以上離れているというのにすさまじい熱風を感じる。それに今なお膨れ上がるかのように炎を身体にまとわせて、膨大と化していくそれは、すでに三メートル近い巨体となっていた。思わず息をすることさえ忘れるほどの威圧感に、思わず腰が引けそうになる。


「こいつは確かにやばいですね。奴に集まっている力は、オルクスとは似て非なるもののようですが、このクラスとなると私と同じか、それ以上かと」


 結人はラプソディアの横顔をちらりと覗き見て驚いた。いつも通りの整った顔立ちにしれっとした風貌だったが、冷や汗をかいている。その横顔に、今、目の前にいる奴がどれほどのものなのか改めて感じさせられた。


 イフリートを挟むような形で対角にいるティスもその圧倒的な力の前に剣を構えながらも、ただ茫然としているしかなかった。ティスのもとに駆け寄ったラビアとラワーレも驚愕の顔をしている。


 士気はだだ下がりだったが、今ここにいるメンバーでやるしかない。今はまだ動いていないが、動き出したら何もかも燃やし尽くされ、破壊しつくされるだろう。ここには、新しく出来たばかりの獣人たちの家や、城下町だってある。これ以上犠牲は出したくない。ならば、いまここで奴を打ち倒すしかないではないか。


 敵が、ラプソディアと同等か、それ以上の力を持つというのなら今ここで同じだけの力があるのは結人とラプソディアだけということになる。正直コントロールできる範囲で力を引き出すとなったらどの程度まで力を使えるのかはわからない。


 だが、目の前の敵を倒さなければ被害が甚大となるのなら、四の五の言っている場合ではない。結人はラプソディアをしっかりと見据え、覚悟を決めたのだった。

~おもちろトーク~

ラプソディア「あのパペットと切結べるなど、さすが結人様です」

結人    「それを言うなら、ティスもだよね! だいぶ人間離れしてきた感がある」

ティス   「……え!?」



いつもお読みいただきありがとうございます。


今回は、知っている方も多いのではないかと思う、イフリートなる化け物が登場しましたね! 炎の精霊の化身などのイメージも多いかと思う彼ですが、実は悪魔として描かれたのが最初という話です。


私事なのですが、最近寝落ちがひどく(電気をつけたまま寝てる(-_-;))夜中に起きるという悪循環にはまっております。今執筆しているのも実は夜中の十二時を過ぎたころだったり(;´∀`)


いつもいいねや評価、ブックマークやご感想などありがとうございます。

執筆していく上での励みとなっており、心強い限りです。また、小説以外での質問なども受け付けておりますので、気軽に感想覧へご記入いただければ、お応えできる範囲でお応えいたします。


今後とも「いせたべ」をよろしくお願いいたします。

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