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~涙するにもほどがある!40~

 結人が二体の人形の首を跳ね飛ばし動かなくなったことを確認したティスは、リアを誘拐した張本人であるベリルめがけて一直線に駆け出す。だが、ティス一人でどうにかできる相手ではないはずだ。


結人はとっさにラプソディアに援護に向かうよう指示を出し、自分も駆け出そうとしたところで首のない二体の人形が行く手を阻むかのように再び動き始めたことにぎょっとする。


「まじかよ。というか、首がないまま動かれるとかなりのホラーなんですけど」

 

 さっきまでラプソディアと二人がかりでも五分五分の戦いだったことを考えると、結人一人でどうこうできる相手ではないことは確かだったが、ここは少しでも時間を稼いでベリルにリアの居場所をはかせるしかないだろう。


 目の前の二体の人形は今まさに立ち上がろうとするところであった。だが、これ以上待ってやる義理はない。


先手必勝で攻撃をされる前に倒してしまうに限る。あの盾も剣もかなりの強度を誇っている。だが、頭を斬り飛ばすことが出来たということは、関節を狙えば勝機はあるのかもしれない。

 

 結人は足にオルクスを集中させ、一気に間合いを詰め、敵の剣が一体になっている肩を狙って自身の刀を振り下ろした。ごきゅっっという鈍い音共に確かな手ごたえがあり、人形の腕を斬り飛ばしたのだった。






 結人が人形の首を斬り飛ばしたのを確認してから、ティスはベリルめがけて駆け出していた。これまでリアの手がかりはほぼ皆無だった。ここで奴を逃がすわけにはいかない。その思いがティスの身体を突き動かしていたのかもしれない。


 ちらりと後ろを確認すると、結人の指示でラプソディアがついてきてくれている。これ以上心強いことはない。ティスは、何の迷いもなく気合と共にベリルへとカレンデュラを振り下ろした。


ここまで接近してもベリルはピクリとも動こうとしない。それならそれで構わない。動けなくなったところをラプソディアに能力を使ってもらい、リアの居場所を吐いてもらうだけだ。


 ティスのカレンデュラが今まさにベリルを切り裂こうかという瞬間、何かに受け止められたかのように固定され、ピクリとも動かせなくなった。距離をとろうとしても、剣が、カレンデュラが全く動かないのだ。


 一体何がどうなっている!? 思考が追い付かないが、このまま立ち尽くしているわけにもいかない。剣が固定されているというのなら、剣の柄に体重を乗せて、半ば回転するようにベリルの顔めがけて回し蹴りを放つ。


だがしかし、その回し蹴りは突如前に躍り出たラプソディアの腕に止められ、何か目に見えないものを素手で断ち切るようなしぐさをした後カレンデュラが動くようになる。ラプソディアはそのままティスを抱きかかえるようにいったんその場から距離をとった。


「あれは、少々厄介ですね。ティス殿には見えていないかもしれませんが、幾本もの触手のようなものがやつのローブの下から現れています。しかもかなりの瘴気だ。常人であれば、数分で骨と化すレベルです」


 さっきカレンデュラが動かせなくなったのは、その触手に絡めとられていたからだというのか? しかもラプソディアには見えているようだが、ティスの眼にはそれが映らない。どうすればそんな奴と戦えるのか……。


「ほお、今のに耐えるか。普通の剣ならば、我が瘴気にあてられ溶けていたことだろう。その魔法剣、私のコレクションの一部にしてあげよう」

「何をふざけたことを言っている! それより貴様には、彼女の、リアの居場所を教えてもらうぞ」


 その時、ラプソディアがまたしても手刀で何かを斬る仕草をする。また、助けられた!?


しかし、ティスにはそれを見ることが出来ない。どうしようもない悔しさと苛立ちに追い打ちをかけるかのようにベリルが口を開く。


「その者に守ってもらうしかできない小娘の分際で。わしをどうにかできるわけがなかろう?」


 ティスは悔しさのあまり無意識に唇をかみしめたらしく、口の中に血の味が広がったがそんなことはどうでもよかった。匂いや音、気配など何か少しでも感じることが出来ればと思い直し必死に探ってみるも何一つとしてわからない。


 自分の無力さに下を向きそうになった時、「諦めるのはまだです!」という、ここから離れていったはずのラビアの声が聞こえ、もう一人エルフの少女、ラワーレの美しく透き通った詩が響き渡った。


 その調べを聞いた瞬間から、ティスの中で何かと何かがつながるような不思議な感覚を覚え、その直後、今の今まで見えなかったはずの触手が見えるようになる。これは、エルフが持つ感覚共有という一種の魔法で、自分の五感で感じているものを相手に映すというものだ。


 ティスは一瞬何が起きたのか分からなかったが、ラワーレのおかげだと察して心の中で礼をいい、ラプソディアを今まさに襲おうとしている手を数本一気に薙ぎ払い横に並び立つ。


「迷惑をかけた。私にも手が見えるようになったおかげで戦える」

「それはなにより。ならば、手はティス殿にお任せします。私はその隙に相手に近づき捕縛いたしますので」


 今の会話が聞こえたのかどうかは定かではないが、ベリルから出ている手の数が一気に倍近くにまで膨れ上がる。


「いい気になるなよ。お前らなぞに用はないのだ」

 

~おもちろトーク~

ティス   「いや、役とはいえその手、気持ち悪いね」

ベリル   「わしもそう思うが、仕方なかろう」

ラプソディア「ですが、実際にあれば一気にあれこれできて重宝しそうですね」



いつもお読みいただきありがとうございます。

今回のおもちろトークでは、舞台裏風な和気あいあいとした雰囲気を演出してみました。敵味方問わず、色々なキャラを好きになっていただけると幸いです。


窓を空かして寝ているだけでもかなり寒くなってきましたね。秋と言えば、色々と思い浮かぶかと思うのですが、私は焼き芋が大好きなんです(笑)あの黄色い蜜に包まれほくほくとした優しい味わい……想像しただけでよだれがたれそうになってしまいますね(*´▽`*)


いつもいいねや評価、ブックマークやご感想などありがとうございます。

執筆していく上での励みとなっており、心強い限りです。また、小説以外での質問なども受け付けておりますので、気軽に感想覧へご記入いただければ、お応えできる範囲でお応えいたします。


今後とも「いせたべ」をよろしくお願いいたします。

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