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~涙するにもほどがある!39~

 ベリルは嫌らしい笑みを浮かべたままその場から一歩も動かない。結人やラプソディアの速さについてこられないのか、何かしらの作戦があるのかはわからないが、素人の結人から見ても隙だらけなことに間違いはない。


 結人は相手の右側面から一気に間合いを詰めて刀を振り下ろそうとしたのだが、結人の第六感が働いたのか、それとも本能が危険だと察したのか、うなじのあたりがざわつく嫌な感じがし、今まさに斬る寸前だった刀を引き戻して慌てて横に飛び退った。


 だが結人が飛び退るよりも若干早く、地面に魔法陣が現れそこから長い剣が突き出し結人の腕をかすめ斬り裂く。切り裂かれた部分が焼けるように熱く傷の具合を確認すると、かなりの量の血が流れ出ている。


 魔法陣からは、腕を剣の形に変化させた木で出来た傀儡人形(くぐつにんぎょう)のような姿をした者が姿を現した。顔は丸く削りだしたような木がくっついているだけで、目や鼻といった凹凸はない。正直危なかった。 あと一歩飛び退くのが遅ければ、あの剣が結人の身体を串刺しにしていたことだろう。


 結人は刀を構えなおし、隙が出来ないよう警戒しながらもう片方の手に魔力を集め傷を癒す。その間にラプソディアを確認すると、ラプソディアが突き出した拳は結人と同じくベリルに届く前に足元の魔法陣から出現した巨大な盾を殴ったようだ。現れた姿を見るに、こちらの傀儡人形は腕を盾の形に変形させているようだった。


 間合いをとりつつ、再度勢いよく殴りかかったラプソディアは、盾で弾かれることをうまく利用してアクロバティックに空中を華麗に舞い、傷を治し終わった結人と合流する。


「結人様、お気を付けください。本体は分かりませんが、こいつらの腕となる部分の武具はかなりの硬さがあります。それに動きも早い」


 さすがの敵も作戦を練る時間などは与えてくれない。二体の召喚された傀儡人形はそこそこのスピードで躍りかかってくる。片方が剣で斬りかかり、こちらが反撃をしようものなら盾を持った人形がうまい具合に攻撃を防ぐ。まるで二人で一つと言わんばかりの見事な連携で結人とラプソディアを攻撃してくるのである。


 相手の攻撃を受け流した時に手に衝撃が伝わったことに結人は驚いた。今まで相手にしてきた敵は、結人の刀をもってすれば、なんであろうと容易く切り裂くことが出来たからである。だが、ラプソディアも硬いと言っていたように、こいつらの腕となっている剣や盾は結人の刀を受けきるどころか、逆に押し返しさえしてくる。


 しかし、こちらも攻められてばかりいてはじり貧だ。結人達も相手に負けない連携で、片方が相手の攻撃をはじいては反撃という形をとっている。傀儡人形の向こうでは、リアをさらった張本人であるベリルが楽しそうに傀儡人形の出来を見ているというのにこれでは身動きが取れない。結人かラプソディア、どちらかがかければおそらく勝敗は相手に傾くだろう。それだけの猛攻を浴びている。


「ふぉっ、すばらしい! いままでは魂の定着が上手くいかなかったが、今回、()()()()()()()作り上げたこの試作品はほぼ完成と言ってもいいじゃろ。連携も呼吸をするようにできているようじゃしな。だが、攻撃を防がれているところを見ると、今一つあまいか」


 オルクスを集中させることで感覚が研ぎ澄まされた結人の耳に、ベリルのつぶやきが届く。こいつは今、双子の魂を定着させたと言ったのか? 今まさに攻撃を仕掛けてきている目の前の二体の人形の魂が、もともとは人だったというのか? 生きたまま実験材料にされたのだとしたら、さぞかし怖かっただろう。辛かっただろう。そんな理不尽があっていいはずがない。


 攻撃を受け流しながら結人のなかで黒い感情が渦巻いていた。周囲の見え方すら暗くゆがむような不思議な感覚。結人の身体を取り巻くように、真っ黒なオルクスが漏れ始めていたが、隣で戦うラプソディアは結人の変化に気が付かない。いや、気が付いているのかもしれないが、二体の人形からの攻撃が激しさを増してきており喋っている余裕すらないのかもしれない。


 その時だ。上空から 「結人!」 と叫ぶ声が聞こえ、ティスがノエルに跨りものすごい速さで急降下しながら、地面までまだ五メートルはありそうな高さから飛び降りざまに剣の腕を持つ人形に斬りかかる。


 思わぬ助っ人の登場に意識を一瞬持っていかれ、結人を取り巻いていた黒くゆがんだオルクスが霧散し、なんとか暴走せずにすんだ。

 

 ティスも死角からのかなりの不意打ちだったが、敵もその攻撃を剣ではじき返したのだから驚きである。だが、ティスが後ろから斬りかかってくれたおかげで、結人に対して背中ががら空きだ。その瞬間を逃すまいと結人は刀を身体の左に構えて振り抜こうとするが、盾を持った人形がすかさず間に割って入る。


 結人は舌打ちしたくなる気持ちを抑えつつ、ラプソディアを信じてそのまま間合いを詰める。別に結人が目くばせをしたわけでも、ラプソディアが何か言ったわけでもなかったが、結人の意図をくみ取ったラプソディアが盾を構えたそいつを思い切り殴り飛ばした。


 敵も盾で防ごうとするが、ラプソディアはあえて攻撃を受け流させることで盾の位置を思いっきりずらしてくれた。結人が「ナイス!」と心の中でそう叫びながら振り抜いた刀は、二体の人形の首を見事に跳ね飛ばしたのだった。

~おもちろトーク~

ティス   「結人!」

結人    「そんな高さから飛び降りたら」

ティス   「……」

ラプソディア「どうやら着地の衝撃で足がびりびりしているようですね」



いつもお読みいただきありがとうございます。

やっとリアを連れ去った張本人が現れましたね! 連れ去った張本人ですから、結人達は何としても捕まえたいところですね。リアは今頃どうしているのでしょうか?


自分で言うのもあれなのですが、色々と趣味が多い私。そんななか、さらにタナゴ釣りという地味な趣味が増えそうであります(笑)。この連休中にやってみて、これは地味に楽しいと感じました。皆さまも、機会があればぜひ挑戦してみるのもありかもしれませんよ♪



いつもいいねや評価、ブックマークやご感想などありがとうございます。

執筆していく上での励みとなっており、心強い限りです。また、小説以外での質問なども受け付けておりますので、気軽に感想覧へご記入いただければ、お応えできる範囲でお応えいたします。


今後とも「いせたべ」をよろしくお願いいたします。

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