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~涙するにもほどがある!37~

 「そうだ、皆の家が出来たお祝いに花を買って来たんだ」


 ラプソディアが結人の隣へ進み出て花を差し出すと、金色の髪をした狐耳のスズネがラワーレの隣で受け取ってくれた。


スズネも顔は人のそれで、かなり美人である。そう考えるとリアやティス、ラプソディアをはじめこの世界には美男美女が多い気がする。


 一通り挨拶をし終えたところで、ちょっとした宴を用意していると言われて結人達も参加する運びとなった。さっき食べた串焼きのせいで、あまりお腹は減っていなかったが、こういうものは参加することに意味があるのだろうと思いなおす。


 ラワーレと肩を並べて歩きながら、出来たばかりの家を眺めてよくできた作りだと感心する。


「それにしても、よく短期間の間にこの数の家を建てることが出来たね」

「これもすべて魔族の方々に手伝うように指示を出してくれた結人魔王陛下のおかげです」

「いや、俺は何もしてないよ。それより、気軽に結人でいいよ」


 結人の後を追う形で歩いていたラプソディアが、今の発言を聞いて間へ割って入ってくる。


「結人様。さすがに呼び捨てというのは他の者に示しがつかなくなるかと」

「まあ、公の場では仕方がないのかもしれないけど、俺的にはラプソディアやラビア、そのほかの皆にも気軽に接してもらえたらって思ってるんだけど」


 実際「様」などとつけられるほど自分が偉いとは思わないし、気軽に接してくれた方が結人自身気を使わなくて済む。それに、今よりももっと皆と仲良くなれる気がするのだ。そんなやり取りを見て隣を歩くエルフのラワーレがいたずらな笑みを浮かべて悪乗りしてくる。


「じゃあ()()、こんな感じで喋ったらいいのかな?」

「おおお、全然いいよ! むしろ気を使わなくていいから全然ウェルカムだし」


 ウェルカムという聞きなれない単語に皆首をかしげていたのだが、この世界に来てから初めて「様」抜きで呼ばれたことに心から喚起していて結人はまるで気が付かない。


冷静なラプソディアが止めに入ろうと口を開いたのだが、その言葉は、ラビアの次の一言でかき消されてしまった。


「結人!……お兄ちゃん。あの、私も、あの、言葉……」


 ラビアは最初勢いよく呼び捨てにしたものの、さすがにまずいと思ったのか小さな声で「お兄ちゃん」とつけてきた。おまけに恥ずかしさで耳まで赤くしている。


「おお、ラビアもナイス! そう呼んでくれて全然いいよ」


 半分振り返りながらラビアに親指をたてて手を突き出すと、ラビアはコクコク頷きながらさらに赤くなってしまった。ラプソディアは悩みの種が増えたと言わんばかりに額に手を添えてため息などついていたので、結人はラプソディアの肩をたたきながら笑って見せた。


「まあ、いいじゃん。とりあえず公じゃない場所では皆好きに喋るってことで。俺もそっちのが嬉しいし。ラプソディアも気軽に呼んでくれていいよ」

 

 ラプソディアは結人の顔をちらりと見てまた一つため息をついてしまった。その時だ。一番後ろを歩いていたフロースが皆に聞こえるように声を上げた。


「先ほどから花たちが……何か来るわ!」


 一瞬の出来事で何のことを言っているのか思考が追い付かなかったが、その直後に結人の上空に突然一つの巨大な目玉が現れる。


しかも、結人と目が合うや否や()()()と笑ったような眼になり、それが脳裏に焼き付いて総毛立ちそうになる。すかさずにラプソディアが結人の前に躍り出ようとしてくれたが、今はラワーレ達がいる。


「ラプソディアは戦えない者達の護衛をお願い。戦えるものは自分の身を最優先に! 戦えない者はラプソディアのそばから離れないで」


 結人が指示を出すのと同時くらいのタイミングで、見通しが悪くなっていることに気が付く。霧!? いや、だが黒い。黒い霧が結人達を取り囲むように急に発生し始めたのだ。やはり敵襲かっ!? 視界がどんどん悪くなっていく中、結人もオルクスを操り真っ黒い刀を具現化させる。


 ラビアが自分の服の裾をたくし上げ、太ももに隠し持っていた先の鋭いピックのようなものを両手に結人の隣に立ち並んだ。


「結人様、気を付けてください! 多分、敵襲です」

「俺もそう思う。この感じどこかで」


 すると、結人達を取り囲むようにあちこちで空間がぐにゃりと歪み、その歪みから鋭い爪に緑の肌をし、頭には赤いサンタ帽のようなものをかぶり、サンタには不釣り合いな斧を手に持った()()()()()()()達が次から次へと一斉に()()()()()()襲い掛かってきた。


 身体にもオルクスを集中させた結人には、そこそこ早いレッドキャップ達の動きがスローモーションのように見えている為、切り捨てることは難しくはない。それに、結人がオルクスを練り上げて具現化させている刀は切れ味がよすぎるためにレッドキャップが持っている斧と一緒に胴体を切断してしまう。


 横でラビアが明らかに結人だけを狙ってくるレッドキャップ達の脳天やらこめかみを細長いピックのような武器で次から次へと貫き倒していた。

 

「こいつら、結人様ばかり狙って! 許さない」

~おもちろトーク~

ラワーレ 「結人」

ラビア 「結人お兄ちゃん」

ラプソディア「ゆうゆう」

結人 「ゆうゆうって(汗)」


いつもお読みいただきありがとうございます。

今回いかがでしたでしょうか? またしても敵襲の予感がしますね。結人達はこのピンチを切り抜けることができるのでしょうか?


最近暗くなるのも早くなり、夜は涼しくなってきましたね! 気がつけば虫の声に囲まれてますし(笑)皆様も体調にお気をつけください。


いつもいいねや評価、ブックマークやご感想などありがとうございます。皆様のおかげで、ブックマーク100件到達しましたo(>∀<*)oありがとうございます!


執筆していく上での励みとなっており、心強い限りです。また、小説以外での質問なども受け付けておりますので、気軽に感想覧へご記入いただければ、お応えできる範囲でお応えいたします。


今後とも「いせたべ」をよろしくお願いいたします。

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