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~涙するにもほどがある!36~

 店先に並んだ花もそうだったが、店内に並ぶ花もとても美しく一本一本が生き生きとしていた。見渡す感じ誰もいなかったので、結人が「すみません」と声を掛けると店の奥から頭に巨大な花を咲かせ、そこから緑のツルが絡まり合い身体を形成している花のお化けかと思うような魔族が出てきて少し驚いた。だが、その魔族の次の言葉にもっと驚かされることとなった。その魔族は、歳なのか優しいおばあさんのような声音だった。


「おや、これはこれは()()()。ようこそおいでくださいました。まさか魔王様ご自身とこうしてお話しできる機会がくるなんて、私感激だわ」

「なんで俺が魔王だってわかったの?」


 このローブやファントムマスクに意識阻害などといった特殊な効果はないとのことだったが、表を歩いているときや、屋台で話をしても誰も彼が魔王だとは気が付かなかったのに、目の前の魔族は結人が魔王だと言い切ったのだ。巨大な花を咲かせた魔族は少しおかしそうに笑いながら、優しく教えてくれた。


「ここに並ぶ花たちが口々に魔王陛下が来たと教えてくれたのよ。私は花の声がきこえるの。花たちは人の心や感情を読むことに長けていて、お話し好き。ただその声が聞こえる者は少ないというだけで」


 今の話を聞いて結人にある考えが浮かんだ。花と花が会話をすることが出来るのなら、野生に咲いている草花に話を聞けばリアの居場所もわかるのではないのか!? ダメもとかもしれないが、少しでも可能性があるのなら善は急げだ。


「あのさ、ちょっと一緒に城下の外まで来てほしいんだけど。事情は行きながら話すから」

「あらあら、魔王様にデートに誘われる日が来るだなんて」


 彼女はツルの手を、頬であろう場所に添えて身体をくねくねさせ始めた。いや、ごめん。そんなつもりでは全くございません。






 彼女の名前は、フロースというらしく、開村祝いの黄色い花びらをいくつも広げたベネディクティオの花束をこれでもかというくらい細い蔓の手で起用にやさしく包んでくれた。彼女にも同行してもらって城下外の亜人や獣人達の新しい村にたどり着いた。日はまだ高く、一生懸命に歩いていると少し暑いくらいだ。


 結人が予想した通り、まだ十件ほどしか家がなかったが、どれも城下同様レンガ風な石を積み上げて作られており、なかなかに住み心地がよさそうだった。これからももっと増えていくかもしれないと思うとなんだか心躍るものがある。そんな家の前に助けた亜人や獣人たちが並んで結人達が到着するのを待ってくれていた。その中心にいたエルフの少女が一歩前に進み出て挨拶をする。


「結人魔王陛下、あの日売られていくのをただただ待つことしか出来なかった私たちを助け出していただき、この地に住まわせていただけること、ほんとにありがとうございます。あ、村の皆を紹介しますね! まずは私から。私の名前はラワーレ、見ての通りエルフです。隣にいるのエルフはロザ。私の父なんですよ」


 ロザと紹介された男はまだ二十代くらいなのではないかというような風貌をしていたため、めちゃくちゃ若いお父さんなのかと驚いたが、ラワーレの説明ではロザの年齢は百五十歳程度だそうで、エルフはある一定から見た目の変化が遅くなるということだった。

 

 そうして順番にラワーレは一人ひとり丁寧に紹介していってくれた。左の端にいる子供程度の身長におじさん顔といったドワーフ族のヴラコスや、美しい金の髪を後ろに流し、頭に狐の耳を生やせた狐人族のスズネ、頭からウサギの耳をはやした兎人族のダシュプースとレプレ、大きなネズミが二足歩行をしているネズミ人族のスミントス、硬い鱗におおわれた体に槍を装備したリザードマンという種族のサウラーだ。 


 全員を紹介してくれたラワーレがそこまで言い、少し申し訳なさそうにする。


「紹介は以上です。助け出していただいた時にはあと数名いたのですが、申し訳ありません。意見の食違いから村を建てている最中に、ここを離れて行ってしまいました」


 別にラワーレがそこまで気にする必要はないように思う。そもそも、結人自身彼女たちをここに強制的に押しとどめるつもりなど毛頭なく、行くところがないのならという軽い気持ちでの提案だったがゆえに、思いのほかここに定住してくれる者が多かったことに逆に驚いていた。


 そんな思い付き的意見だったのだが、これは好機なのかもしれない。魔族の土地に多種族である彼らが住まうということは、結人が目指す争いのない世界を創る第一歩となるかもしれない。


「いや、俺も無理に押しとどめようとは思ってないから大丈夫だよ。それと、ここにいる皆も困ったこととかあればできる限りの対処はするから遠慮なく言ってほしい。改めて、これからよろしくね」


 結人が差し出した手をラワーレが握り返し、これからの未来に想いを馳せ握手を交わしたのだった。

~おもちろトーク~

花   「魔王様がきたよ」

花   「魔王様イケメンだよ」

フロース(イケメン!?)


いつもお読みいただきありがとうございます。

今回の物語ではフロースという魔族が登場しましたね! キャラクターは基本、書物や伝承などから引用していることが多いのですが、中にはオリジナルの者もいたりしています。どのキャラクターもそこそこの時間をかけて名前や設定など考えているので、楽しいですが大変です(笑)


車の半年点検があったのですが、ラジエーターが壊れかけで交換になりました(泣)

10年目となると車も年を取ってきますね。頑張ってお金貯めて新しい車買いたいです((+_+))


いつもいいねや評価、ブックマークやご感想などありがとうございます。

執筆していく上での励みとなっており、心強い限りです。また、小説以外での質問なども受け付けておりますので、気軽に感想覧へご記入いただければ、お応えできる範囲でお応えいたします。ツイッターもやっておりますので、お気軽にフォローしていただけると嬉しいです!


今後とも「いせたべ」をよろしくお願いいたします。

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