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~涙するにもほどがある!35~

 結人、ラプソディア、ラビアの三人は、そこの屋台でアマダレを絡めた肉の串焼きをそれぞれ一本ずつ買い、食べ歩きをし始めたところだった。何の肉なのかはあえて聞かなかったが、城下へ来たときに漂っていた香ばしい香りの正体はこれで、食べた瞬間に口の中でとろけるような肉の触感と口いっぱいに広がる香ばしく甘辛いたれが絶妙なハーモニーを奏でていてとても美味しく、あっという間に串一本たいらげてしまった。


「今の串焼き、もう一本買っとけばよかったな。というか、串焼き買う段階になって初めて自分がお金を持っていないことに気が付くなんて……」


 そうなのだ。さっきの蜘蛛あめ屋さんでは、蜘蛛あめをただでもらったから気が付かなかったのだが、結人は一銭たりとも持っていなかった。こっち(異世界)にきてからまともに買い物などしたことがなかった為、今まではお金がなくても何とかなっていたのだ。そのため恥ずかしながらさっきの串焼き屋さんではラビアが出してくれたのだった。


 ラプソディアが言うには、基本的に魔族側で流通しているお金も、人族側で流通しているお金も一緒だということだった。最も価値基準はかなり違うようで、こっちで安く手に入るものが、人族の方では倍以上の値段で売られているなんてことはよくあることなのだという。逆もまた然りなのだそうだ。 

 

 ラビアが小さな口で串焼きを頑張って食べているのを見ながら、ラプソディアに質問してみる。


「うーん、やっぱり城の財源ってここに暮らす魔族たちから徴収してる形になるの?」

「さすがは結人様ですね。そのようなことにまで興味をお持ちいただけるとは、魔王様としての責任感が現れている証拠。このラプソディア、心より嬉しく思います」


 そんな大げさなと思わなくもなかったが、どうやら本気で言っているようだったのであえて触れずに回答を待つ。


「結人様のおっしゃいますように、財源の大半は民たちから納められるものになります。今出ている屋台で稼いだ分も何割かは納めるようになっていますよ」


 それを聞かされるとなんだか複雑な気持ちになる。自分は民たちに納めてもらえるだけの仕事をしているのだろうか。万が一にも、今の魔王がろくな働きもせず、毎日怠惰な生活を送っているなどと噂が広まれば厄介ごとを引き起こしかねない。


 結人が悶々と考えていると、串焼きを食べ終わったラビアが少しおかしそうにしている。


「何か楽しいことでもあった?」

「いえ、ただ、結人様がさっきから百面相しているのが面白くてつい笑ってしまいました。ここにいる民たちは皆、私も含めて今の魔王様に期待しているのですよ。なんといっても歴代のなかで唯一人間との和平を目指した魔王リガーレ様のご遺志を受継いだお方なのですから!」


 そう、リガーレの力の結晶を取り込んだ時に約束したのだ。人族も魔族も、多種多様な種族が争いなく笑って暮らせるような、そんな世界。夢物語と笑う人もいるのかもしれないが、結人もリガーレと同様本気でそんな世界を作りたいと望んでいた。


「結人様は、魔王であると同時に人族でもあります。だからこそ、魔族と人族、そのほかのあらゆる種族の架け橋になれるお方だと我々は確信していますよ」


 この世界に来てからというものあまりいいことがなかったが、今、ラプソディアもラビアも結人のことを心から支えてくれているのだと改めて実感する。彼らと出会っていなかったなら、結人は今なお追われ逃げていたことだろう。下手をすると捕まり、死ぬよりもつらいことが待っていたのかもしれない。


 そこまで考えたとき、リアの顔が脳裏をかすめた。彼女は今どこで何をしているのだろうか。ひどいことをされていなければいいのだが、こればかりは何とも言えない。リアと生きて再開するために、何としてでも彼女に関する情報を少しでも集め、早急に助け出したいところだ。


 オピスにはほんとに申し訳ないことをした。リアを救うため、彼女のような犠牲をこれ以上出さないためにも、結人自身もっと強くなる必要がある。そのためには、やはりリガーレの力の結晶を探し出す必要もあるのかもしれない。


 そんなことを考えながら歩いていると、ラビアの明るい声で現実に思考が引き戻された。


「結人様! 村完成のお祝いにお花なんかどうですか? ここのお花はどれもとても美しく、人気の高いお店なんです」

「花か、いいかもね。ラプソディア的には花のお祝いってどう思う?」

「いいのではないでしょうか。この時期ですとベネディクティオという黄色い花がおすすめです。誰かを祝福する時などの贈り物として重宝されていますよ」


 ラビアやラプソディアの意見を素直にきくことにした結人は、色とりどりの花が並ぶ店へと足を向けたのだった。

~おもちろトーク~

結人    「まさかのお金を持っていなかった」

ラビア   「まあまあ、そういうこともありますよ」

ラプソディア(ひとごと!?)


いつもお読みいただきありがとうございます。

村完成とのことでしたが、いったいどのような村なのか気になるところではありますね!

おもちろトークでは、ラビアの天然さがうかがえる会話となっています(笑)。


小説を書く上で、名前を決めるという作業がどうも苦手で、真剣に考えすぎてしまい時間ばかりかかってしまうのが最近の悩みの種です。皆様が名前など決めるとしたら、どのような決め方をなさいますか? 良ければご教授願います。


いつもいいねや評価、ブックマークやご感想などありがとうございます。

執筆していく上での励みとなっており、心強い限りです。また、小説以外での質問なども受け付けておりますので、気軽に感想覧へご記入いただければ、お応えできる範囲でお応えいたします。


今後とも「いせたべ」をよろしくお願いいたします。

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