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~涙するにもほどがある!33~

 連れ帰ってきた亜人や獣人達は、全員で十人程度だったはずだ。ということは、多くても家が十件程度の小さな村ということになる。だが、もし今後も奴隷となっている者がいるようなら助け出し、望むようであれば連れてくることも結人は視野に入れている。


「皆が住むところ、無事に出来たんだね! それじゃ着替えてから早速向かうことにしようか。あ、なにかお祝いの品持って行った方がいいのか?」

「うーん、どうなんでしょうね。私たちからすれば、結人様が来てくださっただけでお祝いになりますけど」


 ラビアの発言に、それもそれでどうなのかと思わなくもなかったが、逆に日本で有名人がお祝いに来てくれたら確かに他に何もいらないかなどと考える。それでも気持ちとしてはやはり何か送りたいと思ったりするものである。


「確かにそうかもしれないけど、俺からの気持ちはやっぱり贈りたいから、何がいいかなー? 村に行く前に城下町で色々見てみよう。実は城下町まだ行ったことないんだよね」


 魔王城に来てからというもの、色々なことがありすぎて何かと忙しく、気にはなっていたもののまだ行ったことがなかったのである。


「分かりました。ではお召し物をお持ちしますね」


 そう言ってお皿を手にラビアは出ていった。






 しばらくしてラビアが戻ってきたが、手にはティスが用意してくれたいつもの着慣れたトレンチコート風の服ではなく、赤や青、緑や黄色といった柄が入ったド派手な服と、目の周りに星が描かれた真っ白なお面をもってやってきた。


「ラビア……、一応確認しておくんだけど、それ俺が着るんだよね?」

「はい! 結人様は城下に暮らす魔族にとってあこがれの存在。今はお祭りの最中ということもあって、いつものお姿で城下に降りると大変なことになりますからね」


 渡された着替えを広げてみると、どこからどう見てもピエロが着ている服そのものだった。ラビアが言いたいことは分かったが、さすがにこの格好は悪目立ちしすぎるのではないだろうか。というか結人自身が着たくないというのが本音だ。


「いや、さすがにこの服はないでしょ。逆に目立つと思うし」


 それを聞いたラビアはなぜか得意げに胸を張り、この服の性能についてぺらぺらと喋りだしてしまった。


「大丈夫です! この服、見た目はあれですが、意識阻害の魔法がかけられているんです。敵意があったりすると全然ばれちゃうのが難点なのですが。それにこちらのマスク、装着者にかけられている補助系の魔法の効果を倍にしてくれる特殊なマスクなんです! この二つが揃えば向かうところに敵なしです」


 ラビアは無い胸を一生懸命に張り、どうだ、すごいだろ! とでも言わんばかりに得意げな表情で説明をしてくれたわけだが、正直これを着て外をうろうろとするのは丁重にお断りしたい。


「効果がすごいことは分かったんだけど、その罰ゲーム的な服を着て街中を歩くのはちょっと」

 

 ラビアは少し残念そうにしながら服をもって部屋から出ていく。たぶん代わりの服を取りに行ってくれたと信じたい。ひょっとするとラビアは結人を元気づけようとして、わざとこのような服を持ってきたのだろうか? と思わなくもなかったが、このひと月でラビアのことが少し分かってきた。


 彼女はおっちょこちょいに加え、天然が入っているのだ。ラプソディアがさりげなくフォローしているのを何度か目撃したし、この間などは、服がほつれかけていると呼びかけるとその場で脱ぎ始めようとするものだから慌てて止めたこともあった。そういったことも含めて手に持っている服を見つめて改めてラビアの恐ろしさを感じたのだった。

 

 




 数分後、ラプソディアと共にラビアが戻ってきた。ラビアの手にはいつも結人が着ている服とは違うものが握られている。


「結人様、先ほどはラビアが失礼しました」

「結人様、ごめんなさい」


 ラビアはかなり落ち込んでいる。ラプソディアにかなり怒られたのだろうか? だが、普段の彼ならあまり怒るというようなことはしない気がするのだが。結人は落ち込み気味のラビアの頭を優しく撫でてやる。指に伝わるサラサラな糸よりも細い髪の触感が気持ちいい。


 ラビアは少し元気が出てきたのか、顔を上げ胸に抱えていた服を結人に差し出してくる。それを受け取り、再度どんな服なのか確認するために広げてみた。それは、黒を基調としたローブで、何ともいい肌触りに思わず腰が引ける。それもそのはずで、結人はもともといわいる一般の日本人で、()()()()などの服屋さんで少し高めの服までしか買ったことがなく、これほど滑らかかつ通気性にも優れていそうな服など着たことなど一度もなかったのだ。おまけにとてつもなく軽い。


「これは早速着替えないとな」

「結人様は、現魔王様ですからね。服もそれなりのものを着ていただかないと」

~おもちろトーク~

ラビア「♪~」

ラビア「結人様のお召し物、どれがいいかな?」

ラビア「この服、正能的にいいかも。見た目はあれだけど、結人様なら何を着てもお似合いですよね」



 いつもお読みいただきありがとうございます。

 今回いかがだったでしょうか? もしもお世話をしてくれる人がいて、だけどその人のセンスが壊滅的だったら皆様はどうしますか(笑)? 今回は、そんなラビアの一面が垣間見えたお話となっていました。


 このお盆は皆さまいかがお過ごしでしょうか? 私は体調を崩してあまり動けませんでした。(熱などは出ていません)今年は暑い日が続いておりますので、皆様も体調には十分お気を付けください。


いつもいいねや評価、ブックマークやご感想などありがとうございます。

執筆していく上での励みとなっており、心強い限りです。また、小説以外での質問なども受け付けておりますので、気軽に感想覧へご記入いただければ、お応えできる範囲でお応えいたします。


今後とも「いせたべ」をよろしくお願いいたします。

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